早春のヤゴ調査


自然学校のフィールド「さとばる」には池や田んぼ、小川といった様々な水辺環境があります。

そのため、幼虫が水中で暮らすトンボ類が数多く生息しています。

そんな早春のさとばるで、トンボの幼虫である「ヤゴ」の調査をしました。

捕まえたヤゴたち

調査の結果、小川、田んぼ、みいれが池にて4種類のヤゴを発見しました!

小川で捕まったひと際大きなヤゴ。
正体はオニヤンマです。
角ばった頭部が見分けるポイントです。
田んぼにいたシオカラトンボのヤゴ。
全身に短い毛を持っています。早いもので4月~5月には羽化し、草原などを飛んでいます。
小川で捕まえた比較的脚の長いヤゴ。
特徴からして、エゾトンボの仲間です。
周辺にはエゾトンボ科のタカネトンボが生息しているので、可能性が高そうです。 
みいれが池で見つけた平べったいヤゴ。
へら状の触角を持つこのヤゴはサナエトンボの仲間。春の園内でよく出会うダビドサナエではないかとにらんでいます。

一見似たような姿のヤゴたちですが、よく観察すると少しずつ違いが見られます。

体の形、大きさ、足の長さ、触角、トゲトゲの有無などなど。

とはいえ、種の同定となるとなかなか難しいものです…。(宮本)

野焼き進行中


「春は黒」と表現される九重。
冬枯れの景色から衣替えを行う、野焼きのシーズンを迎えました。
野焼きは枯野に火を入れる行事です。野焼きによって森林への環境変化が止まり、草原の環境を維持できます。
草資源の活用や草原をすみかとする生物や景観を守り、また地下水の涵養、害虫の駆除など、草原がもたらす恵みは様々あります。

先日、自然学校をはじめとする飯田高原内の3か所、そして日本百名山・九重山をおりなす名峰に囲まれた坊ガツル湿原で野焼きが行われました。

伝統的な火入れは「火をつける」のではなく、火種となる草の束を使い「火を引く」手法で行われてきました。今ではこのような風景もあまり見られなくなっています

どちらも開催日前に小雪に見舞われましたが、当日はパチパチと乾いた音を奏でながら、時折、ゴォーーーーー!っと勢いよく燃え上がりました。
焼け終えた黒い大地から立ち上る香りは、すこ~し甘いようで香ばしく、個人的には気持ちがいい匂いです。

防火帯へ延焼する火やくすぶった火は、はたき棒や水で鎮火
野焼き後の坊ガツル湿原。奥にそびえるのは、雪を冠した大船山

毎年、すべての野焼きが終わると、無事に終了したことへの安堵と、新しい季節のスイッチが入る感じがして胸が躍ります。
地域の皆さんといつもと変わらない春を迎えるのが楽しみであり、いつまでもそうであって欲しいと願っています。(指原)

やちぼうず


漢字で書くと「谷内坊主」。人の頭のような姿から坊主と名がつきました。
釧路湿原など寒い地域の湿地でちょっと有名な存在です。

野焼きに向けて、短くヘアーカットした姿

飯田高原では背の高いヨシなどに隠れて目立ちませんが、
冬から初夏までの間、その姿を見ることが出来ます。
一見、切株のようにも見えますが、
スゲ(草本)の株が年数を重ねて盛り上がったもので、
50㎝の高さになるには数十年かかるとか。

ハンノキの林に彼らはいます

不思議な存在感は、悠久の時を超えてきたからこそかもしれません。
大切にしたいと思います。(川野)

旅支度


ここ数日、事務所前のみいれが池にコガモが飛来しています。
時折写真左のように水中に顔を突っ込んで
逆立ちしている様子が見られますが、
これはエサを探している動作です。
冬鳥である彼らは北国に帰り始めるころ合い。
長旅に備えて体力をつけているのでしょうか?(阿部)

みいれが池のコガモ

天蚕


先日、事務所の前にあるコナラの木で黄色いまゆを発見しました。

コナラの枝にぶら下がるまゆ

このまゆを作った昆虫は「ヤママユ」という大型のガです。

ヤママユは春に卵から孵化し、幼虫はクリやコナラなどの葉を食べ成長、大きく育った幼虫は初夏の頃まゆを作り、8~9月頃に羽化します。

時期になると灯りに飛んできた立派な成虫を見かけます。

体色には黄色、黄褐色、赤褐色など変異がある。
写真は黄色味の強い個体。

そんなヤママユには「天蚕(てんさん)」という別名があります。

ヤママユが作る糸は「天蚕糸」と呼ばれ、カイコが作る絹よりも柔らかく、しなやかで高級品とされています。

長野県安曇野市では、伝統工芸として天蚕の飼育、繰糸、機織りの技術が受け継がれているそうです。

 

ヤママユは平地から山地に生息しています。

皆さんも木々が葉を落とした雑木林や公園で、天蚕が作った鮮やかなまゆを探してみてはいかがでしょうか。(宮本)