暗黙と静寂の中、五感で感じる生命の営み〜ナイトソロ 特定非営利活動法人富士山クラブは、全国の学校や企業、自治体等を対象に、樹海の自然そしてその自然と非常に深い係りがある地元の生活、文化、歴史等々を語り、また考えるエコツアーを企画、開催しています。そのエコツアーの一つに、「ナイトソロ」と呼ばれるものがあります。ナイトソロとは、その言葉のとおり「暗闇にたった一人でいること」です。きっと長い人生の中で暗闇の森の中たった一人でいることなど経験したことのある人の方が少ないことでしょう。
まず、インタープリターを先頭に縦に一列に並び、前の人の肩に手をのせ、人間のつながりを頼りに前に進みます。暗闇を感じるため余分な明かりをつけることは決してしません。そして、2〜3メートル間隔で列の後方から1人ずつその場所に留まるのです。暗闇に1人でいるのは、たった数十分という時間ですが、体験する人によって時間を感じる速度は様々なようです。時には、暗闇が怖くて泣き出してしまう子どももいます。
このエコツアーのルールはただ一つ、人と話をしてはいけないということです。視覚と言葉を封じられた私たちは、次第に五感を研ぎ澄ますようになります。そしてそこには騒音に囲まれた日常では決して出会うことのない時間が待っているのです。しだいに月明かりに照らされた暗闇に目が慣れ、風の音が聞こえ、夜行性動物の気配を感じ、土の匂いが自然に体の中にすっと入ってきます。自然が繰り出す様々な息吹〜まさに生命の営みです。
このように、「一度入ったら出てこられない」と恐れられていた青木ヶ原樹海が、現在は子どもたちの自然体験学習のフィールドとして利用されるようになったのです。樹海をゆっくりと歩きながら感じる“生活のリズム”、いままで見たこともないような動植物への出会いに対する“感動や好奇心”、そして樹海を歩くという未体験を通して体感する“人生のドラマ”…。樹海は、本当にいろいろなことを私達に問いかけ、また教えてくれます。
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