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美しい自然の象徴“国立公園” 日本の場合、全体的な自然風景の中から特に優れたものを、美しい自然の象徴として国立公園に選出しています。また、珍しい自然現象や、自然と調和した景観なども対象となります。日本にある国立公園は、全部で28ヶ所。環境庁が国有地・私有地を問わずその区域を国立公園と指定し、保護や利用の計画をたてて管理しています。その面積は約205万ヘクタールで、国土の5.42%を占めています。日本には、その他にも国定公園と都道府県立自然公園があり、こちらは都道府県が管理しています。
自然が悲鳴をあげている!
こんなにも美しい自然を後世へと引き継ぐために、私たちは現状を知る必要があります。そこで日本の国立公園が抱えるいくつかの問題について考えてみましょう。
日光国立公園の尾瀬は、2千メートル級の山々に囲まれた山岳地域です。日本を代表する美しい景観をもつこの地域でも、過剰利用(オーバーユース)という大きな問題を抱えています。
ここ数年、休日の利用者が全利用者の5割を占めているため、ミズバショウやニッコウキスゲ、紅葉時期の道路渋滞や、駐車場・木道・トイレが大混雑してしまいます。自然環境へ与える影響を考えると、休日から平日利用への分散化が必要となるでしょう。 また、尾瀬保護財団では、自然へのマナーとして入山にあたり徒歩の利用にふさわしい靴、服装、装備での入山を呼びかけています。自然により近づくためには、最低限心得ておく必要がありますね。
「ふじは日本一の山〜♪」と思わず誰もが口ずさむこの歌。富士山は、日本が世界に誇る美しい山です。しかし、夏の約2ヶ月間に約30万もの人々が集中して登山に訪れるため、ゴミ処理やトイレのし尿処理が深刻な問題となっています。非営利活動法人富士山クラブでは、市民・行政・企業とパートナーシップを組み、し尿問題の解決策の一つとして、自然の素材である杉チップを利用してし尿を分解する「バイオトイレ」を設置しました。遠くから眺める富士山は、私たちに無言の語りかけをしながら何事もないかのように、今日も誇り高くそびえています。
まるで竜宮城を思わせる景色。西表国立公園の約72%を占める海域には、色彩鮮やかなサンゴ礁が広がっています。この素晴らしいサンゴ礁も昭和50年代には、サンゴを食い散らかすオニヒトデの原因不明の大発生により、壊滅的な被害を受けました。近年、ボランティア等のサンゴ礁を守る活動により、ようやく回復しつつあります。しかし新たに発生した、山岳地域の開発が原因の赤土流入などによる水質や底質環境の悪化、地球温暖化による水温上昇など多くの問題が、美しいサンゴ群集が隣合せでいることに間違いありません。
美しい姿の数だけ、その影はさらに多くの問題を含んでいます。私たちは、影になっている重要な部分を決して見過ごすことは出来ません。そのために、自然と対等に接する方法を、私たちが学ぶ必要があるのではないのでしょうか。
私たちが今出来ること
8世紀の中国の詩人、杜甫の『春望』に「国敗れて山河あり、城春にして草木深し」という一文があります。これは、“国が戦さで滅びても山や川は昔のままであり、時が経てば草や木が深々と生い茂る”という自然の生命力を描き出しています。私たちはより快適な暮らし求め、20世紀を生きてきました。しかしそれは、経済的な豊かさが最優先であり、人間的豊かさが優先の社会ではなかったでしょうか。
自然の力は、私たちが思うより、壮大で強靭です。私たちは、より多くの自然に支えられて生きているのであって、地球に生きる生命体は、決して人間だけではありません。
ここでお伝え出来る美しさは、本来の自然の姿の一割にも満たないことでしょう。自然とふれあいに、さぁ出掛けませんか。しっかりと相手の事を見つめ、気付くことが出来たならば、自然と人間の共生の世界へあなた自身が、一歩近づくことが出来るはずです。
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財団法人国立公園協会
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財団法人尾瀬保護財団
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特定非営利活動法人富士山クラブ
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箱根を守る会
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