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BUND NRW事務局長ヤンゼン氏 (写真提供:佐藤さん)
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ドイツの法律には、「開発を行なう際はBUNDやNABUにひとこと聞け」といった一文がある。これによってドイツの環境団体が持つ社会的影響や権力が伺える。なぜここまで環境団体が力を持つことができているのか…今回はBUNDの概要とあわせてこんなお話。
研修3日目、私たちは、前日のNABUに引き続き、ドイツ最大の環境保護団体であるBUNDのノルトライン・ヴェストファーレン州(NRW州)支部を訪れた。BUNDの組織体制はNABUと同じく「連邦‐州‐地域」の3層構造で、連邦事務局はベルリンに置かれている。財政規模もNABU同様約30億円で、会員数は約40万人、そのうち99.5%がボランティアである。逆に言うと約2000人有給職員がいるということである。活動の歴史は、NABUが100年以上前に野鳥保護の活動に始まり、自然保護活動を主体に発展してきたのに対し、BUNDは30年ほど前に原子力発電に反対する運動から始まったこともあり、政治性の強い団体である。そのため、連邦組織が取り組むテーマは、自然保護、貿易、エネルギー、交通、農業等というようにNABUとよく似ているが、地域組織に関しては、NABUの多くが自然保護団体であるのに対し、BUNDは、エネルギー・交通・都市計画・農業・自然保護等様々である。
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様々なBUNDの活動バンフレット (写真提供:佐藤さん)
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開発が進む衝撃的な石炭採掘場所 〔BUND活動場所の1つ〕 (写真提供:佐藤さん)
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活動内容についてもう少し詳しく述べると、BUNDでは常にその時々にあった旬のテーマを2、3個持っている。例えば最近であれば、「気候温暖化」や「遺伝子組み換え作物」などがある。また、NABUなど他の団体とともに、水や大気に関する「枠組み指令」について、具体的な取り組み方の議論を行なっている。その他の活動としては、歴史あるりんごの種を守る、ナチスの軍の貯蔵庫をこうもりがすむビオトープにする、住宅地が拡大する中で農地を守る、などが行なわれている。
これらの活動にかかる費用は、多くが会費と寄付によってまかなわれ、連邦に入ってきたお金の30%が州事務局に、さらにその30%が地域の活動に充てられる。ここで、NABUは法人格をとっているが、BUNDはとっていないため経済的に苦しいそうだ。しかし、州レベルで意思決定ができるというメリットもある。 さらに、寄付に特長があり、活動内容に反する企業からの寄付は受け取らない。例えば、交通の活動をしている一方で、環境負荷の一端を担っている車会社から寄付をもらうのは矛盾していると考えている。さらに、各プロジェクトに対する寄付も受け付けており、寄付をする人の思いが尊重されている。このように、BUNDが自立性を保っている組織であることが伺い知れた。
次に、私が最も印象に残ったことをご紹介する。実はこのことが、ドイツが環境先進国、と言われる理由かも知れない。
ドイツの自然保護法において、民間の企業が大規模な開発を行なう際、BUNDやNABUを含む有力なNPOは計画段階から意見を述べる権利が認められている。さらに、意見を聞き入れられなかった場合、開発計画を差し止めるための訴訟を起こすことが認められている。
「日本ではありえない」
私は、環境に関するロビー活動や環境裁判についてあまりよく知らない。しかし、国をあげてBUNDなどの環境団体に絶対的な信頼を置き、団体の権力を重んじている法律であると感じた。
環境負荷を与える企業を公式な場に引きずり出して審判することができる。法律で文書化されていることでどれほど環境団体が動きやすいことか、また、企業にとって環境団体がどれほど大きな、邪魔な存在か(笑)。
もちろん、これまでの団体の環境活動が評価されていること、また、根気よくロビー活動を続けた結果、獲得した権利である。2000年からこれまでにこの訴訟権を行使したのは15、16件ということで、この法律によって守られたドイツの環境も多いのではないだろうか。
私は、始めて聞いた時「日本ではありえない」と思ったが、日本にも全国ネットの大きな組織として活動している団体やロビー活動によって法律を改正している団体もある。一方で、地域の活動団体は個々に散在している。やはり3層構造は強いのか。 訴訟権を夢見るのではなく、これほど社会に対して大きく影響を与える仕組みが他の方法で出来ないかな…。やっぱり環境と政治は大きくつながっているのか…。と考えさせられた一日だった。 |