「見せ方」と言うと、多くの人がチラシやHPのデザインなどの広報を想像するのではないだろうか。もちろん、ドイツにおいてもそれら広報手段の王道であることは間違いないのだが、少し変わった方法を見せてもらった。その名は「ボツシャフトラー(情報発信者)」。
研修6日目のこの日はいつもより少し早い8時にホテルを出発した。出発時間はホテルから研修場所の距離によって多少異なる。移動のバスの中では決してボーッと寝ているわけではない。その日の研修内容についてコーディネーターのヨシから知恵を借りて、それぞれのメンバーがどういう視点で講義に臨むのか、また、その時点での疑問点などを確認し合う。実はこの時間がとても大切で、それぞれの知識や経験を総動員して万全の体制で講義に向かうことができる。ちなみに研修10日間のうち前半は、メンバーのこれまでの活動や思いを共有した。そのおかげで後半は、「あっ、あの人きっとこんな質問をするだろうな」などと分かり合えていたように思う。
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アイフェル国立公園 近くの朝の風景 (写真提供:佐藤さん)
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話は戻って、「ボツシャフトラー(情報発信者)」。訪問先はドイツの国定公園の中でも最も新しいアイフェル国立公園で、ここには230種類の絶滅危惧種があり、また、昔ナチスの人材育成が行なわれていた「フォーゲルザング」があるなど歴史的にも特色ある国立公園だった。 ここでは18名の「ボツシャフトラー(情報発信者)」が活動している。説明を聞く前は、公園内の案内や自然保護をするレンジャーのような仕事かと思っていたが違った。正しくは、所定の研修を受けて質の高い知識を持ち、公園のことを講演会や展示会を積極的に開催して、地域の人に知ってもらう役割を担う人たち。この取り組みは始まったばかりで、まだ評価の方法などは決まっていないそうだ。
これを聞いた時に「やっぱりドイツってすごい。新しい広報手段や」と思った。
でも、よく考えたら日本でも同じ様な活動はされている。例えば、モモ(桃井さん)のお仕事で、私も関わっている温暖化防止活動推進センターの推進員、がそれに当たる。推進員は各都道府県知事から委嘱され、主な業務は地球温暖化防止に関する「啓発・広報活動」「活動支援」などである。まさに温暖化防止のための「ボツシャフトラー」。 すっかり「環境先進国ドイツ」というブランドに惑わされるところだった。しかしながら、 ◆地域の人が地域の人に説明する。 ◆地域の活動が地域の人に理解されやすい(NABUの地域事務局、FUgEより)。 これらは、身近な人からの情報や身近に感じることができる活動は地元の理解が得られやすいということを元に実施している。
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フォーゲルザングを案内して くれたシューマッハ氏 (写真提供:佐藤さん) |
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やはり時代は「口コミ」が有力か。草の根レベルで広めることが結局は近道なのかもしれない。
帰りのバスの中ではもちろん反省や感想を言い合う。ホテルに着くと息つく暇もなく、事務局を交えた反省会をして夕食。夕食後は基本的に自由時間だが、私たちは寝る間も惜しいとばかりにビールを片手に語り合う。落ちこぼれヒラヤマは、毎日出される課題のレポートもせずにコテンと寝てしまい、次の日の朝にバタバタと仕上げ、朝食前に提出。また研修の朝を迎える。そんなことを繰り返し、合宿のようにハードな充実した10日間だった。
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