|
|
|
マインツ市内のNABUの事務所にて。 講師は、州支部代表のジークフリート・シューホ氏 (写真提供:小野さん) |
|
環境問題に取り組む市民の活動を紹介する上で、欠かすことのできない団体がいくつかあります。その一つが、NABU(ドイツ自然保護連盟:Naturschutzbund Deutschland e. V.)という名前の団体です。
今回は、このNABUの概要についてご紹介しようと思います。
NABUには、2007年現在でなんと約42万人あまりの市民が会員として参加しているのだそうです。ドイツの人口が約8,200万人(2004年統計資料より)ですから、全人口の約0.5%が会員だといえます。日本でいうと、約64万人もの市民が入会している団体ということになります。日本最大規模の自然保護団体である(財)日本野鳥の会さんの会員数が2004年現在で約4.8万人(全人口の約0.04%、(財)日本野鳥の会さんホームページより)であることを考えると、驚異的な数字であることを実感させられます。
|
|
NABUのロゴマーク:最初の取り組みが野鳥保護だったことから空を飛ぶコウノトリがあしらわれている (NABUの資料より) |
|
|
さて、このNABUは、1899年に野鳥保護を主な目的として設立されたドイツ野鳥保護連盟を前身としています。これは、野鳥の母とも呼ばれるリナ・ヘレン夫人が興した団体で、設立当初は約3,500人の会員だったそうです。その後、急速に会員数を増やし、1939年には既に53,000人を数え、同年ラインラント・ファルツ州支部ができています。そして、1990年には団体名が現在のNABU(ドイツ自然保護連盟)へと改称されています。なお、2005年には会員数が40万人に達し、ドイツ全体で約5,000ヵ所の保護地域を管理し、100ヵ所の自然保護センターを運営するまでになったそうです。また、約1,500の地域グループが、「NABUの使命」を心に持ち、地域に根ざした活動を続けているそうです。
|
〜・〜・〜 NABUの使命 〜・〜・〜
|
1.
|
一人ひとりが自然に対して何かをするのではなく、みんなで手を携えて活動すること。そして、一人ではできなくても、みんなが手をとりあうことで可能になることを示すこと。
|
2.
|
次の世代に対して、生きていて良かったなと思える自然を残していくこと。地球上の多種多様な生態系、おいしい空気や水、健康な土地などを残し次世代(=NABUのターゲット)に渡すこと。
|
|
|
それにしても、市民団体の概念を覆すようなこの大規模な組織は、一体全体どのように会員同士の合意が図られ、運営されているのでしょうか。また、具体的なプロジェクトや資金の獲得方法はどうなっているのでしょうか。知れば知るほど疑問が深まるとは、正にこういうことを指すのでしょうね。 全体の組織構成と会員についてもう少し紹介しようと思います。
NABUの組織は、地域グループ、州支部そして連邦本部と3段階制を取っており、民主的に選ばれた会員が、地域グループ代表、州代表となり、連邦本部の会合に参加し、事業計画の立案などを行なっています。下部組織ほど地域に根ざした活動が主となり、上部になるほど全国規模の企画や政府へのロビー活動(自然や環境問題に関する政策に対して意見を述べること)に比重がかかっているそうです。また、地域グループの活動はボランティア主体で行われ、州支部、連邦本部そして自然保護センターの運営には専従職員があたるそうです。ちなみに、私たちが訪れたラインラント・ファルツ州支部では、代表を含む5人が有給職員、2人がパート職員でした。彼等の給料は、会費や公的支援、寄付金などで支えられていました。
一方、NABUの会員は、活動的な会員とそれ以外の会員で構成されており、活動的な会員は全体の5%しかいないとのことでした。残りの95%は、会費を納めることにより活動に協力する、日本でいう賛助会員のような会員でした。こうした会員は、自然保護に関心があり会の趣旨に賛同するが、時間的、物理的に活動にあまり参加できないため、代わりに資金を提供しているようです。
|
〜・〜・〜 NABUの主な活動項目 〜・〜・〜
|
1.
|
すべての動植物の多様性の保全と、生息環境の保護活動。
|
2.
|
各地域の開発や田畑や森林の開発に対して意見を述べ、保護活動を実施する。
(※年間700〜1,000件の開発プロジェクトに関連)
|
3.
|
政治家とコンタクトして、ロビー活動を行う。
|
4.
|
環境教育。一般市民への情報提供や、実際のフィールドワークを行なう。
|
|
|
|
|
|
左:州支部の活動を紹介する講師のカーステン・ゲース氏(写真提供:山本)/右:真剣剣にメモをとる研修生 (写真提供:小野さん) |
|
|
ざっと概要を紹介しただけでも、このボリューム。その活動の厚さに頭が下がる思いです。具体的なプロジェクトや資金の獲得については、今後の項目別に紹介していきます。
|