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市民とエネルギーの関わりをみますと、日本では風力発電や太陽光発電などが馴染み深い存在となっておりますが、環境先進国と称されるドイツでも関連する政策や具体的事業が進められていました。
ここで「再生可能エネルギー」という語句について、少し整理しておこうと思います。経済産業省の定義によりますと、「再生可能エネルギー」の中には、水力発電、地熱発電、波力発電、そして「新エネルギー」という項目があります。このうち「新エネルギー」という言葉の中に、風力発電や太陽光発電が位置付けられています。しかし、ドイツでは再生可能エネルギーという言葉が一般的に使われていました。
次に、ドイツのエネルギー政策についてですが、重要な法律の一つとして、2000年4月に制定(2004年7月に改定)された、再生可能エネルギー法(EEG:Gesetz zur Neuregelung des Rechts der Erneuerbaren Energien im Strombereich)が挙げられます。注目すべきいくつかのポイントについて、ご紹介しておきます。
- <第1条の概要>
- 総発電量に占める再生可能エネルギーの割合の目標値が示されている。2010年には12.5%、2020年には20%とすることが明記されている。
- <第3条の概要>
- 再生可能エネルギーの定義について整理されている。この法律でいう再生可能エネルギーとは、風力発電、太陽光発電、水力発電、バイオマスエネルギー、およびメタンガス等である。
- <第4条の概要>
- 電力会社やエネルギー関連企業の再生可能エネルギーの引き取り義務について記されている。
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風力発電 :8.7セント/キロワット/時
水力発電 :9.7セント/キロワット/時
バイオマス:11.5セント/キロワット/時
太陽光発電:54セント/キロワット/時
では、こうした政策の中で、市民はどのような活動を行なっているのでしょうか。今回私たちが訪問させて頂いた、ナッケンハイム村の取り組みについてみてみましょう。
ナッケンハイム村は、マインツ市から列車で15分ほど南へ移動したところにある小さな農村です。このナッケンハイム村では、数年前に公民館の新築事業が計画されました。その際、屋根に太陽光発電を設置する計画も立てられたのですが、行政の資金不足によってあえなく中止となったそうです。しかし、これを残念に思った市民が、お金を出し合うことで太陽光発電を設置するという計画を村長に申し入れ、その計画が認められた結果、太陽光発電の設置が市民の手で進められたそうです。
まず、市民会社法という法律に基づいた個人連名の会社が、市民の出資によって作られました。そして、市民の出資金をもとに、新築された村の公民館の屋根上に太陽光発電が設置されたそうです。その後、この市民会社では、発電した電力を売ることで収益を得て、公民館に対する屋根の使用料の支払いと、出資者への配当金の支払いを行ないつつ、年間の売電量のうち5%ほどを利益として積み立てているとのことでした。
出 力 |
45.9 KWH (三洋電機製、225枚のソーラーパネルから成る) |
年間発電量 |
1,175KWH (925KWHの発電量があれば採算がとれる) |
投資額 |
23万Euro (約3,700万円、80.2万円/KW) |
売電料 |
50セント/KW/H (約80円/KW/H) |
出資者への配当金 |
一人一人に出資額の5%を保障 |
二酸化炭素削減量 |
37トン/年 |
公民館の屋根の使用料 |
売電料金の2% |
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また、1KWあたり50セントで買い取ってくれるという、固定価格での買い取り制度も太陽光発電の導入の後押しをしているようでした。一般の電気料金は、1KWあたり20セントですので、買い取り価格との差額分1KWあたり30セントが収益となるとのことでした。また、固定価格の買い取り制度は設置後20年間継続されるため、初期の投資額23万Euroの回収後(10年後を予定)は、売電料金が全て利益となる計算となっていました。
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では、こうした法制度の確率や技術革新だけが、本当に大切なことなのでしょうか。もちろん、どれも大切なことでしょう。しかし、私は、最も大切なことが、ラインラント・ファルツ州の建物に掲げられた言葉に集約されていたような気がしてなりません。(ドイツ環境見聞録第4回参照)。
「省エネこそ最良のエネルギー(訳:仲津さん)」この一言に尽きると思いませんか?!