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ドイツ研修奮闘記 連載-第8回- ちょっとブレイク〜消費者がつくる住みよい社会〜

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 今回は休憩をかねて、消費者(=市民)の立場から、少しばかり街で見かける商品についてご紹介しようと思います。

 まずは、街中のお店でよくみかける「Bio」というマークについてお話しましょう。
 これは、身体や健康、そして自然に優しい、いわゆるオーガニック製品(*有機食品や自然食品と訳される場合もある)に付けられているマークです。

 実際、街中で「Bio」マークの製品を探してみると、野菜類、果物類、卵、コーヒー、ワイン、チーズやヨーグルト、お菓子、冷凍食品などの加工食品から、日本食である味噌や醤油に至るまで、様々なものがありました。また、洗剤や化粧品、衣類のコーナーでも、この「Bio」マークの製品をみつけることができました。価格については、「Bio」マークが付いていない製品と比べて少し割高のような印象を受けました。しかし、今回お世話になった通訳の方に伺ったところ、「Bio」マークの製品は決して市民から遠い存在の高級品や嗜好品ではなく、広く市民に受け入れられているとのことでした。ドイツにおける全世帯の約90%がBio製品を購入しているという調査結果もあるそうです。通訳の方からは、「ドイツの消費者は、自ら考え、選択している。」と教えて頂きました。

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「Bio」の認定を受けた卵
(写真提供:小野さん)

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「Bio」の認定を受けたハム
(写真提供:山本)

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「Bio」の認定を受けた醤油
(写真提供:山本)

 この「Bio」マークの誕生は、2001年9月に遡ります。ドイツには、以前からAGÖL(オーガニック生産者協会)に属する団体や、Bioland、Demeterなど数々のオーガニック製品を認定するマークがあったそうですが、「Bio」マークの誕生によって、これらが統一されたのです。「Bio」マークは、正式には「Bio-Siegel(ビオ・ジーゲル)」と呼ばれるもので、連邦消費者保護・食糧・農業省大臣によって導入された、連邦政府が認定するオーガニック認証の統一規格となっています。

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「Bio」の認定を受けた野菜類と、様々なオーガニック製品を認定するマークの説明が書かれたプラカード
(写真提供:三枝さん)

 「Bio」マークの製品として認定されるには、連邦政府が定めた安全基準を満たさないといけません。この安全基準は非常に厳しいものらしいのですが、消費者もそのことを知っているからこそ、「Bio」マークの製品を選んでいるのでしょうね。安全、安心の食について、日本でも大きく報じられておりますが、ドイツでも消費者が求めているものは同じという印象を強く感じました。

 さて、ドイツでは、安全、安心というキーワードに加えて、「環境への配慮」という視点も盛り込まれているものがありました。NABUのラインラント・ファルツ州本部が行なっているリンゴジュースの生産プロジェクトを例に、その内容をご説明します。

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左:NABUによって守られているリンゴの古木(写真提供:山本) 右:野原に残された小さなリンゴ(写真提供:三枝さん)

 NABUでは、州内の野原に生えている大きな古いリンゴの木を守るための活動に取り組んでいました。なぜ大きな古いリンゴの木を守るかといいますと、古いリンゴの木には沢山の昆虫が集まり、その洞には地域固有種の小さなフクロウが生息しているからとのことでした。つまり、大きな古いリンゴの木を保護することで、ひいては地域の生態系の保全へつなげることができるのだそうです。
 ただ、古くなったリンゴの木は生産性が落ちるため、農家の方々は木を切ろうとします。これを防ぐため、NABUが主体となって有限会社を作り、大きな古いリンゴの木でできたリンゴを通常の市場価格の3倍で買い取り、農家が木を切らないようにしているのです。そして、そのリンゴでジュースを作り販売することで、利益を得ると同時に生態系保護の重要性を訴えていました。

 安全、安心に、環境への配慮が添えられたリンゴジュースを私たちも頂きましたが、甘酸っぱい味の中に、自然環境への思いを感じることができました。もちろん、リンゴジュースが入っていた容器は、何度も使われたリユースの瓶。この辺りの気配りにも、さすがだなと感じさせられました。

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NABUの事務所でご馳走
になったリンゴジュース
(写真提供:山本)

 ところが、一見素晴らしくみえるドイツの消費者ですが、実は問題を抱えている面もあるようです。今回の研修でお世話になった、ラインランド・ファルツ州「州環境情報センター(LZU)」ローランド=ホーン氏のお話から、その一端を垣間見ることができました。

お話:『ここにあるのは、自然に生えている小さなリンゴからできた100%天然のジュースである。もちろん、自然のものなので、スーパーマーケットでは毎年、同じ量、質(味)を保証することができない。しかし、自然の条件では毎年同じ味になることはありえないのに、去年と同じ味のジュースを探す人がいる。つまり、そうした人たちは自然の味を忘れてしまっていると言える。自然の味を忘れてしまうこと、これが今この地域の問題だと私は感じている。』

 いかがですか。私たち日本人にも当てはまる内容ではないでしょうか。
 日本では、地産地消という言葉が一般的になると同時に、「旬」の大切さが見直されておりますが、環境先進国ドイツでも同じような問題を抱えており、現在その解決に取り組んでいるのだと感じました。
 また、ドイツの「Bio」マークやリンゴジュースの取り組みなど、素晴らしいものですが、日本にも沢山の素晴らしいものがあるのではないでしょうか。私たち消費者が、そうした素晴らしいものを「素晴らしい」と感じ、それを選択できるかどうか。消費者という立場に立った時、ドイツと日本の差(違い?)は、この一歩にあると思いました。


(追記)
今回は詳しくご紹介できませんでしたが、ドイツには「test」という電化製品を比較検証する雑誌がありました。これは、各製品の環境への配慮や影響を徹底的に調べてやろうという雑誌です。もちろん、作成者は市民団体。いやはや、恐れ入りました。

市民団体による
比較検証雑誌『test』
(写真提供:草野さん)
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