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ドイツ研修奮闘記 連載-第9回- 市民力の育み方1〜人材育成制度とは〜

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ラインラント・ファルツ州の事務所にて
(写真提供:小野さん)


 これまで、NABUやBUNDといった力強い市民団体の概要とその具体的な取り組みについてご紹介してきました。ここからは、私たちを驚かせてくれたドイツの力強い市民や組織の謎にせまってみたいと思います。何故このような市民力が生まれてくるのかについて、考察するためのヒントとなれば幸いです。

 さて、強い組織になるために必要なもの、ポイントは色々とありそうですが、少なくとも優秀で活動的な「人」と豊富な「資金」を欠かすことはできないでしょう。市民活動に関わらず、何らかの組織に属したことがある方ならば、この二点が大きなポイントとなることを実感して頂けると思います。ドイツの市民活動においても、この二点を非常に意識している印象を受けました。そこで、先ずは、大切な「人」を育てる制度である『環境ボランティア研修制度(FÖJ:Freiwilliges Öekologisches Jahr)』についてご紹介しましょう。

 もともとドイツには、1950年に連邦法によって定められた「自由意志社会研修推進法」という、社会福祉に関するボランティア活動のための制度がありました。これは、若者個人の意思によって、厚生施設や福祉施設で1年間研修を受けることができるというものです(一部短縮&延長可)。若者が社会福祉に貢献する精神を会得することを目的に設立されたそうですが、設立当初は女性の応募が圧倒的に多かったようです。その後、兵役義務のある青年男子(現在18歳以上で9ヶ月間)が良心的に兵役を忌避する際、代替責務として、社会福祉ボランテイア研修制度に参画することが義務付けられ、男子の割合も増加したそうです。

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環境ボランテイア研修制度の設立経緯
(資料作成:山本)


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ラインラント・ファルツ州の事務所にて
(写真提供:小野さん)


 社会福祉に加えて、環境問題に対する意識が高まった結果、1993年に、連邦政府によって1996年までに『環境ボランティア研修制度』の確立を目指すよう各州に対し指針が出されました。そして、1996年に『環境ボランティア研修制度』が成立したのです。この制度は、16歳から26歳までの若者を対象としており、1年間、環境ボランティア活動に関する実践研修を行なうことを定めています。また、参加者には研修費(生活費、交通費等)が支給されることも定められています。
 ただ、「社会福祉ボランテイア研修制度」と同じく、設立当初は研修生の90%が女性だったようです。しかし、2001年に連邦法の改正が行われ、青年男子の兵役を忌避する際の代替責務として、『環境ボランティア研修制度』がその対象に加えられました。今では、男女ほぼ同数の1,800人が環境ボランティア研修に参加しているそうです。

 今回の研修で、私たちは、ラインラント・ファルツ州環境ボランテイア研修制度事務所(FÖJ)を訪ねました。そこで教えて頂いたラインラント・ファルツ州の制度を例に、具体的に『環境ボランティア研修制度』の中身について整理してみようと思います。先ず、『環境ボランティア研修制度』の目的は次の通りとなっていました。

< ラインラント・ファルツ州 環境ボランティア研修制度の目的 >
自然環境の中での学習と実践
 
環境に関する基礎知識の獲得
環境に関する知識の向上
専門外のセミナーへの参加し、知識と経験の獲得
自己分析、人間形成(*何をして良いか分らない若者に対する社会人となるための教育)
職業訓練、技能習得、社会教育(団体行動の訓練)

 上記の目的を達成するため、ラインラント・ファルツ州の制度には、いくつかの特徴がみられました。

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環境ボランテイア研修制度の組織の概要
(資料作成:山本)

 組織の概要図を見て下さい。一見、何が特徴的なのか良く分からないかもしれません。しかし、ここには、他の州にはないラインラント・ファルツ州独自の運営方法が隠されていました。それは、『環境ボランティア研修制度』の運営事務局が州の組織から完全に独立しているということです。つまり、州政府の外郭団体に事務局を任せるのではなく、NABUやBUNDといった市民団体の協力を得ながら、市民の手によって事務局が運営されているのです。この方法によって、研修制度の自由度と独立性が高められているとのことでした。実際、ラインラント・ファルツ州の事務所はBUNDと同じ建物内にありました。
(※私たちが訪れた事務所のほか、州の組織に属するFÖJ-RINGというグループもあるようです。)

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休憩時間にいただいた
プレッツェル

(写真提供:山本)

 また、『環境ボランティア研修制度』の1年間の研修期間中、研修生は個々に受け入れ先で活動に取り組むのですが、そうした受け入れ先での研修に加えて、ラインラント・ファルツ州では、事務局が企画・運営する年5回のセミナーに参加しなければならないという規定が設けられていました。このセミナーもラインラント・ファルツ州独自のもので、ワークショップ形式で行われるセミナーによって、研修生は共に学び合い、集団の中で自らの役割を見つけ、他人への貢献を実感できるような内容となっていました。その教育的効果は非常に大きいそうですが、州政府に依存していない事務局が企画・運営しているからこそ、毎年素晴らしいプログラムが実践できているようでした。

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真剣に講義のメモをとる研修生
(写真提供:小野さん)

 なお、ラインラント・ファルツ州の『環境ボランティア研修制度』の研修場所は、州内ファルツ郡など3地域のほか、フランス、ベルギーなどの海外もあるそうですが、2007年度は約80名の研修生が、それぞれ受け入れ先で活動を行なっているとのことでした。その活動内容の内訳は、農家、園芸家、養蜂家、ワイン農家、森林管理所、自然センター、博物館、森の幼稚園(幼児を森で預かる幼稚園)、自然環境保護団体事務所、自然保護官公庁、環境技術組織(省エネ・省資源住宅団体、省エネ技術団体等、再生可能エネルギー団体等)、動物園、環境研究機関…などなど、数え出すとキリがありません。そこで、最後に『環境ボランティア研修制度』の使命をご紹介して、研修内容などの実態については、次回お届けしようと思います。
< 「環境ボランティア研修制度(FÖJ)」の使命 >
若者の環境意識を育てること、そして、一生、その意識を持ち続けてもらうこと
※FÖJでの経験が、仕事につながる人もいる
※FÖJでは、全ての研修生に対し、研修後のフォローも行なっている




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