セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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ドイツ研修奮闘記 連載-第12回- 結びにかえて

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海外研修
ライン川を背に
(写真提供:小野さん)

 「ドイツ環境見聞録」と題し、環境ボランティアリーダー海外研修にて学んできたことを報告してきましたが、今回のコラムもちましていよいよ最終回となりました。
 これまで、11回の連載を通じて、NABUやBUNDといった市民団体や、各市民団体の具体的な取り組みなどを紹介してきました。最後にドイツにて私が感じたことをまとめておこうと思います。少々主観的な意見かもしれませんが、ドイツにおける市民活動とは、社会的な「土壌」の存在に加えて、「量」、「質」、「政治」、「人」、「資金」という言葉に集約できるのではないかと私は考えております。


(1)社会的な「土壌」の存在

海外研修
毎晩研修後に行われた意見交換会
(写真提供:小野さん)

 先ず、NABUやBUNDといった大きな市民団体が成立できる背景には、ドイツ社会に若者を受入れる土壌があると感じました。例えば、青年男子が兵役を拒否した場合の代替措置として設けられているボランティア活動、日本の中学生〜大学生にあたる若者に対して、教育プログラムの一環として組み込まれているボランティア活動などが挙げられます。このように若者が社会と関われる仕組みがあるからこそ、社会そのものにボランティアを受入れる土壌ができてくるのだと感じました。
 そして、大人になるにつれNABUやBUNDといった具体的な組織への参加、あるいは失業者に対するキャリアアップ制度としてのボランティア活動の利用など、ドイツでは、日常生活の中に様々な形でボランティアの存在がありました。また、ドイツでいうボランティアとは、有償か無償か、会員か非会員かという立場は関係なく、自分の意志で行動している人を指しており、「自由意志の下で働く人」がボイランティアとして社会に受入れられていました。

(2)市民団体の「量」、「質」と、「政治」の関係

日本において、市民団体が政治家に直接働きかけるロビー活動は、まだまだ一般的なことではないでしょう。しかし、ドイツでは、連邦レベルの活動を行なっているグループはもちろんのこと、州レベル、地域レベルで活動を行なっているグループでも「政治」をとても重視しており、「政治」に積極的にアプローチをしていました。この「政治」へのアプローチについては、戦略をもって行われていました。NABUやBUNDを紹介した際、「質」と「量」を兼ね備えていると表現しましたが、「量」を意識した会員獲得、プロジェクトを実行するための技術の習得、そして技術を向上させる努力がなされていました。すなわち、理念を訴えることも大切ですが、理念を実行できる技術や、行政や企業を納得させることのできる技術を持つことも重要だと考えているようでした。
海外研修
部屋に戻っても話しが
尽きることはありません
(写真提供:山本)

 また、「政治」へのアプローチを行なうことで、自分たちの提案を具体化し、プロジェクトを実行し、自分たちの目指す社会を実現するという目的を達成しようとしていました。例えば、第6回目のコラムで紹介した「連邦の自然保護法で保証されている環境政策への市民参加の機会」に、みられるように、自分達にとって必要な制度を作り上げることも、「政治」へのアプローチによってなし得ていました。
 そして、会員一人一人が、所属団体の目的、目標、ミッションを語れることが団体の説得力(強さ)につながっているようでした。つまり、ドイツの市民団体の持つ強さは、数に加えて、自分たちの目的、目標、ミッションを皆が理解した上で取り組んでいることにあり、その結果、小さな団体も、大きな団体も、社会的なビジョン(使命)を持った活動が行われていると感じました。

(3)「人」と「資金」を生み出すために

  第9〜11回のコラムでは、優秀で活動的な「人」と豊富な「資金」の重要性について指摘すると同時に、ドイツにおける具体的な取り組みについてご紹介しました。たしかに、いくら社会にボランティアを受入れる土壌があったとしても、実際に活動する「人」と「資金」がなくては、どんな団体も持続的に前進することはできないでしょう。研修にて学んだ事柄についてはこれまでご紹介した通りですが、もう少し補足させてもらうなら、次のようなポイントも研修の中で挙げられておりました。
【人材育成】
日々の活動の中で、リーダーの姿を「見せる」という行動を意識的に行なうこと
人と人との関係を重視しておくこと
人が育ち続ける(学び続ける)ことの出来る環境を用意すること
仕事などで)一度離れたスタッフが戻ってくることのできる組織内の環境づくりが、組織の継続には必要であること
スタッフ自身のメンテナンスにも気を配ること
スタッフ内での合意形成を行なうための(事業以外での)時間を意識的に用意すること

【資金獲得】
全体のごく一部でも確実に組織の運営基盤となる資金源を持つこと
お金ではなく、提供してもらった「時間(労働)」も大切な寄付とみる視点を持つこと
漠然としたテーマでなく、具体的な効果を求めている人に対し具体的なアプローチを行うと同時に、常に情報をキャッチすること
透明性を確保しなければ、信頼されないし寄付も頂けないので、「ガラス張りの部屋の中」にいることを意識すること
寄付活動も、最終的には人と人のつながりによって成り立っていることを忘れないこと

海外研修
充実した研修後のリーダーたち
(写真提供:小野さん)

 
 さて、今回を含めて全12回の連載となりました「ドイツ環境見聞録」はいかがでしたでしょうか。少しでも、皆様の刺激となり、学習の一端を担うことができれば幸いです。

  起承転結という言葉にありますように、最終回のタイトルは「結びにかえて」ではなく、「おわりに」や「結論」とした方が良かったのかもしれません。しかし、海外研修に参加しそれを報告するだけが、今回私たちが参加した目的ではありません。やはり、学んできたことをいかにしてそれぞれの地域で活かすのか、ここが最も重要なポイントだと考えています。また、私たちがドイツで学んできたことが全てではなく、ドイツでは環境への取り組みがまだまだ沢山行われていますし、課題が残されている部分もあることでしょう。これらのことを考えると、連載終了が「おわり」ではなく「新たなはじまり」だという気持ちがしてなりません。そうした意味合いから、あえて「結びにかえて」というタイトルを付けさせてもらいました。
 「ドイツ環境見聞録」を読んで下さった皆様には、ここから新たな一歩が始まることを心から願っております。

 最後になりましたが、第10回環境ボランティアリーダー海外研修生「team Prima」を代表して、今回の研修を企画して下さった、セブン-イレブンみどりの基金、基金にご協力下さいました全国の皆様、そして、全国で活動されているボランティアの皆様に感謝を述べさせて頂きまして、「ドイツ環境見聞録」を閉じようと思います。本当にありがとうございました。




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