セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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「ドイツ環境なるほど紀行」 連載-第3回- 地域の環境活動<2> 〜ボランティアによる運営〜

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6つの中で一番初めに
できた「緑の教室」
(写真提供:宇都さん)

午後になって、6つある中で一番初めにできた緑の教室も見せていただいた。私たちが講義を受けていると、近隣の学校のエコロジークラブの子ども達がやってきて、一気ににぎやかになった。緑の教室と学校はどのように協力しているのか、現地に来られていた校長先生にお話を伺う。
これまでドイツの学校は半日制だったが、全日制へと移行期間中にあるそうだ。一学年の4クラス中、2クラスは半日で終わり、もう2クラスは午後の授業としてスポーツ、音楽、緑の教室などを行っている。どちらのクラスに入るかは、親の判断で決まる。
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青空の下、講義を受ける
(写真提供:小野さん)

全日制に対する親御さんの反応を聞くと、「なかなか好評」とのこと。共働きの両親が増えている現状もあり、また子どもが半日で帰ってきてテレビゲームばかりしているよりはいいという。・・・どこかで聞いたような話だ。
では子ども達の反応は?というと、それは遊んでいる子どもの顔を見ているとよくわかる。バッタを採取して図鑑で調べている女の子や、枯れ草を集めたり、友達同士でふざけあったり、みんな楽しそうだ。私たちも一緒になって、枯れ草集めに参加させてもらった。

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子ども達がつくった看板
(写真提供:小野さん)

バッタを捕獲!
(写真提供:小野さん)

女の子が大切そう
に持っていた標本
(写真提供:小野さん)

子ども達と枯れ草集め
(写真提供:小野さん)

行政・市民・NGO・学校が連携するモデルプロジェクトともいえる「緑の教室」だが、現在に至るまでどのように進めて来られたのだろうか。
緑の教室のアイデアは1998年に生まれたという。集約的ブドウ栽培で土地が弱り、環境が破壊されている現状から、生物の多様性・在来種の独自性・景観の美しさを人間によって維持し、作り上げていこうと考えたそうだ。だが問題はやはりお金。概算するとプロジェクト実施に25000ユーロ(約350万円)かかるとわかり、はじめは不可能に思えた。しかし行政からも「やってみては」と支援され、州の環境省やアジェンダの地域予算など、資金面でのサポートも得ることもできたそうだ。
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アジェンダ・BUNDの看板。6つの緑の教室が載っている
(写真提供:小野さん)


緑の教室は市民、行政、子どもからとても良い反応があり、最終的に6箇所にまで増えている。現在、2つの学校から学校外教育機関として認定され、1つの幼稚園とも協定を結んでいるそうだ。行政や学校の正式なパートナーとして、市民団体が地域づくりの大きな柱を担っているのだ。
研修終了後、おいしいワインとプリッツェルパンをいただきながら、1日の研修を通して感じたこと、更に聞きたかったことなど、アジェンダ・BUNDのみなさんとさまざまな話をすることができた。

全員がボランティアとのことだが、どのくらいの頻度で活動しているのかというのは、気になるところだ。聞いてみたところ、「人と自然」グループで集まるのは月に1度だという。あとは必要に応じて集まり、メールや電話で連絡を取り合っている。メンバーの中でも中心的に関わる人(すでに退職されている方など)と、時々参加する人など、さまざまだそうだ。市民活動はさまざまな人が関わるからこそおもしろいのだが、同時に難しさもある。メンバー間で意見が割れたり、なにか問題が起きた場合にどのように対処しているのかも、ぜひ聞いてみたい。

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ズルツハイム区の行政を代表して来てくださったディックさんからもご挨拶
(写真提供:小野さん)

おいしいワインとプリッツェルパンをいただきながら懇談
(写真提供:小野さん)

「人と自然」グループ共同代表のマルクスさんと子ども達
(写真提供:宇都さん)

私の疑問に「人と自然」グループ共同代表のゼッツエファンドさんが丁寧に答えてくれた。「もちろん7〜8人集まって議論すると、異なるアイデアがたくさんでてきます。そんな時はアイデアを提示して、みんなでメリットとデメリットを考え、話し合います。例えば木を植える際は、特定の種を植えるのか、生物学的に適切かなど、専門家にも相談します。また問題に対しては、小グループを作って問題解決案を全体に提案し、それが全体で受け入れられるかどうかも話し合います。ですが一番大切なのは、到達したい目的が共有されているということです。どんな地域にしていきたいのか、ビジョンを共有することです。方法論は50くらいでてくるものです。私たちはたくさんの口論を通じてベストな選択をしてきたと確信しています。」本当にそうだ。
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「地域の自然保護は世界平和につながっている」と話すフォルカさん
(写真提供:小野さん)

一番大切なのは、ビジョンなのだ。日々の活動や目の前の問題でついつい忘れがちになってしまうことだが、活動に関わっている全員が明確なビジョンを共有することが、何より大切なのだとマルクスさんの言葉に改めて実感した。
最後に、同じく共同代表のフォルカさんが話してくれた自分たちの活動に対する想いを、ぜひ紹介したい。
「これからの世代にむけて、多様で独自の地域の動植物を守っていくことは大切です。アジェンダ・BUNDの活動は法律の面でも根拠があり、すすめる義務があるプロジェクトなのです。法律で書かれていることを世話していくのが、地域の人間の役割です。しかし多くの市民は政治が地域のために何かいいことをしてくれるらしい、待っていよう、という人が多い。それではいけない。市民が積極的になることが大切なのです。
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エコロジークラブの子ども達と一緒に
(写真提供:小野さん)

そして市民がアクティブになったら、行政がそれを支援することが約束されているのです。政治は市民が望んで、初めて動くものなのですから。」「もし地域の自然保護を解決できないなら、世界的な問題も解決できません。地域の自然保護は世界平和につながっているのです。」フォルカさんの言葉は、ローカルアジェンダという機会を生かし、地域と市民のニーズをくみながら活動を行ってきた人としての、大きな説得力があった。
市民が行政にただサービスを求めるのではなく、市民がこういった社会をつくっていきたいという熱意を行政が支援していく。日本でもドイツでも、同じような想いで活動している人がたくさんいることに勇気をもらった。そして自分たちの活動がいかに地球全体につながっているかという、グローバルな視野を持ちつづけることが、活動を継続するエネルギーになる。私もいつまでもその視野を忘れずに活動していきたい、と強く思った。




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