セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

※こちらはアーカイブ記事です。

 ホームへ戻る

 

文字サイズ
活動のご紹介

環境ボランティアリーダー海外研修

2005年(平成17年)第8回環境ボランティアリーダー海外研修レポート

海外研修レポート 感想 特定非営利活動法人 国際自然大学校
宇都 由起さん

今回の実質8日間の研修、それはハードだが実に充実した中身の濃い研修だった。それは、研修内容はもちろんのこと、リーダーとしての自覚を持ち行動することを常に考えさせられたからだ。事前からの課題設定、ドイツ語での自己紹介や毎日のレポート、ディスカッション、それに加えて日替わりのリーダー制などもあり、普段の自分より「一歩前へ」踏み出る良い機会となった。6人のメンバーは、年齢、活動内容や組織の立場、興味関心はもちろん様々で、毎日毎日、知りたいこと吸収したいことが山のように自分のまわりに立ちはだかっている状況だったことを心から嬉しく思う。

さて、研修ではいくつかの環境NPO団体を訪れたわけだが、特に、地域BUNDによる「緑の教室」、「環境ボランティア研修制度」の一部であるセミナー、実際に子ども達が通っている「森の幼稚園」など、実際の現場の様子を見学させてもらい、参加者やその保護者等から直接話しを聞けたということは特に貴重な体験だった。
研修全体を通して、私が実感した主なことは次の3つだ。(1)ドイツでは市民の環境意識が高く色々な取り組みがなされていると言われているが、市民の意識レベルは、人によって大きな差があり、一般的には日本の状況とあまり変わらないということ、(2)連邦制の特徴であるかもしれないが、制度(システム)や法律が日本より格段に整っているということと、その制度を整えてきたのは市民活動の成果だということ、(3)NPOの運営という点では、ドイツの場合も完璧に出来上がったものとは言えず日本のNPOを似たような課題を抱えているところも多いが、とにかくメンバー間でビジョンを明確にし、それに向かってひたすら議論しながら進もうという意欲があるという印象だった。

ところで、今回の私自身の学ぶべき課題は大きくわけて、1)ドイツの環境教育事情について知り、日本と比較して盗めるところは盗むということ、2)NPO組織の運営(特に、資金調達の具体的方法、社会的認知度を上げる工夫、ボランティアをどう継続的にコーディネートしていくか)という2つだった。そこで、それぞれについてわかったことと、日本で自分自身がリーダーとしてすぐに生かせることを述べたい。
まず、ドイツでは全ての子どもに質の高い環境教育がなされているのではないかと考えていたが、何か特別なことをしているという印象はないし、子どもへの自然体験教育がとにかく大事だという考え方も日本と変わらないとわかった。ただ、日本ではどうしても“環境教育プログラム”を行うことが環境教育と考えられがちだが、ドイツではプログラム重視ではなく、自然の中で遊べる場や環境意識の高い大人が身近にある状況を作ることに重点があるように感じた。日本の子ども達にとっても、学校や家庭だけといった閉鎖的な空間だけではなく、環境に対する取り組みを実践している大人との触れ合いや、普段とは違う場所で遊ぶ機会など、様々な現場に身をおく時間を増やすことが大切だと感じた。そのことが、いずれ環境を初めとした様々な社会的な問題に対して自分は何をどうすべきかということを考える姿勢につながるのではないかと思うからだ。また、環境教育からESDへの転換ということを、地域レベルのボランティア達が理解して推進していこうとしていることに驚いた。「ESDのための10年」が始まったが、まだまだ日本では浸透していない。今回は、いくつかの団体における環境教育の事例や考え方を聞いたりディスカッションする中で、本当に子どものためになり、将来的に持続可能な社会の実現へつながる環境教育とは何かということについて、改めて真剣に考えることが出来たし、このことは私だけでなく仲間も巻き込んで、ずっと考え続けなければならないことだと感じている。
また、「セミナーハウス ヨナタン」は、いわゆる貸館とプログラム提供の両方を行うという面で、私の行っている地方型の自然学校のやり方にかなり類似した施設だった。そこでは単なる貸館業と割り切るのではなく、利用者が様々なことを“感じる”ことができるために、心のコミュニケーションができる場を(空間)作っておくことが大事だということに感銘を受けた。そこで、まずは、なんらかの形で資金を調達し、自然学校の施設をアレンジするプロジェクトを立ち上げようと思う。心のコミュニケーションができる空間づくりというコンセプトで内装を変え、同時に、セミナーハウスのようにソーラーパネル等の導入など環境負荷の低い施設作りに取り組む。(ほとんどのエネルギーを自給することは、すぐには難しいと思うが)その際は、多くのボランティアを巻き込み、参加型ワークショップのような形が良いかと考えている。
その他、水棲昆虫の観察のための「教材セット(箱)」や、たとえば食の安全性などをキャッチーなやり方で人に伝える「テーマ別BOX」など、すぐにでも日本で使えるアイデアをいくつも得ることができた。そのような教材や掲示物などについては、ボランティアに自発的にテーマを決めてもらい、何か後に残るものを少しずつ作ってもらうような仕組みを作ることがポイントだと思うし、まずは自分の団体でやってみようと思う。

そして最終日に訪れた「森の幼稚園」は、私の団体がやりたいと思っていることの一つの理想形であった。特に面白かったのは、子どもが遊び場を決める際の「投票」のやり方だが、今回知ることができたことは、実際に日本で「森の幼稚園」を作ろうと取り組んでいる人にうまく伝えることが私の義務だと思う。

次に、NPOの組織運営についてだが、全体を通して感じたのは、とにかくアイデアがあっても「お金がない」とひるんでしまうのではなく、実行に移す価値があれば、資金を調達してくれば良いというとても単純なことを実感した。私自身にとっての資金調達は、とにかくまだ何も知らない状況だということを痛感した。まずは、思い込みを捨てて現実を見、寄付をする可能性がある人がどのような思いで寄付をしたいと思うのかをまず分析した上で、寄付をしたいと思うストーリーと、仕組み(身近な場所で寄付ができる)を作りたい。具体的な手法(募り方のHOW TO)については、あまり聞けなかったが、要は、ポイントをおさえた上で、しっかり社会と相手と自分の組織を見ることで、おのずとやり方は見えてくるように思う。ここについては、とにかく調べてやってみるところから始まる・・と思っている。
それから、現在のNPOの弱点でもある「広報」について。子どもプログラムの参加者募集(宣伝)という意味の広報活動だけではなく、プログラム自体が子どもを通して親にメッセージを伝える広報活動になっている、という捉え方にとても共感した。自分はそのイベント(プログラム)を実施するノウハウを持つ団体に所属しているわけだが、今まではプログラムの目的(ねらい)とは、参加者に対するものだけだったように思う。実は、そのプログラムを通じて、親や社会にメッセージを伝えるという広い目的もあるということに気づいたことは大きい。そこで、私達が提供するプログラムやイベントを、もう一度広報の視点から再度評価していこうと思う。
そして、今後は、イベントやキャンペーンを通しての広報活動に力を入れていこうと思う。その際には、環境への強いメッセージや環境に関する専門知識を持つ他団体と協力するのが良いと思っている。具体的には、1)プレス関係や何らかの発言力がある人などを招待するキャンペーンの実施。2)自分達でやった成果を見せて、もう一度するのにこれだけのお金が必要だということをしっかり見せる形で、募金を集める。3)活動紹介イベントや親のための自然体験会の実施などだ。もちろん今までも行ってきたことだが、今回得た視点をもとに、もっと力を入れていこうと思う。
その他、自分の組織ですぐに取り入れたいと思うことは、「プロジェクトマネージメント」の中からも見つけることができた。それはプロジェクトを終われば、がんばった人の名前がのるような仕組みが必要だということや、情報共有の重要性(イントラネットの整備必要)、地域レベルでも活動が広がるようにするために何が必要か(何がないから活動が広がらないのか)を考えることが大事だと再認識した。

ところで、今回の研修を通して、自分の掲げた目標とは別に一つの大きなチャンスを得ることができた。それは「環境ボランティア研修制度(FOJ)」とパートナーシップを結び、日独の交換留学を実現させることである。
FOJは、団体独自ではなくネットワーク全体でボランティアリーダーを本気で育てようとしている姿勢や、セミナーとOJTからなる研修である点など、私の所属団体が行う指導者養成事業と共通の目的・手法が見受けられた。そして、海外の団体が受け入れ先となる国際交流の方針があるというのは、私の団体の目指していたものと同じものだった。そこで、自分の団体でドイツの青年を受け入れ、同時に日本の青年をドイツで研修させるという交換留学のようなものをぜひ実現させたいと思っている。資金面の問題をいくつかクリアしなければならないが、帰国後すぐに具体的に話を進めていきたいと思う。そして、その交換留学制度は、単に私の団体でドイツの青年を受け入れるということだけでなく、少なくとも、日本の自然学校関係全体のネットワークに働きかけたいという思いがある。そして将来的には地域の支援をいただいて、マインツ市との交流事業にまで発展することができればと思う。

最後に、日本国内のリーダー支援のために考えられる仕組みについて述べたい。それは、今回訪れたファンドレイジングアカデミーのように、自分の団体でプロジェクトを進めながら通う、断続的な集中合宿を中心とする専門の養成機関というものだ。まだまだ日本の環境リーダーは、数の面でも不足しているし、それぞれ熱意や専門分野に関する知識などは充分にあっても、組織として運営し、組織と社会とを結びつける人材がいないように思う。そしてそれは、“環境NPO”というくくりではなく、“持続可能な社会を目指し、社会を変えていこう”とするNPO(環境の他にも、国際、教育、災害、人件、開発教育、経済など様々なものが考えられる)全体を対象としたものが良い。もちろん、国内にも様々な研修やセミナー等が開催されているが、この養成機関の内容としては、組織運営やプロデュースを学ぶコースと、一般的なNPOマネジメントにかかわる広報、資金調達、会計など個別部門を学ぶコースがあるだろう。どちらも、NPOという枠にこだわらず、企業のノウハウをふんだんに入れられるよう専門家を講師として向かえ、自分の組織の課題解決に向けて、実践的に解決する時間を作る。様々な分野のNPOでは、もちろん考え方やビジョンは異なると思うが、マネジメントについて言えば、はお互いの課題を相互に援助することが可能だろう。そして、そこでできたネットワークにより、みながメリットを受けられ、かつ社会に対してインパクトのあるキャンペーンを打つことができればよいと思う。
同時に、上記で述べた交換留学制度についても、国内のリーダーの意欲を高める機会となることを望む。

とにかく、今回の研修で学んだこと、気づいたことを日本のリーダーに広めていかなくてはいけない。もちろん、まずは自分の中でもう一度咀嚼し、単なる情報提供ではなく、自分の確固とした意見として提示していこうと思う。私は帰国後、まずは団体内スタッフと今回の研修で私が得たことを共有し、上記で述べたプロジェクトに巻き込んでいきたい。もちろん、報告レポートを機関誌に載せることとと、自然体験教育分野の仲間になんらかの形(ネットワークミーティングの際にプレゼンまたは報告書)で伝えることを行いたいと思っている。
これからが本当のスタートなのだから。



このページの先頭へ
ご利用にあたってプライバシーポリシー
Copyright(C) 2000-2019 Seven-Eleven Foundation All Rights Reserved.