セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

※こちらはアーカイブ記事です。

 ホームへ戻る

 

文字サイズ
活動のご紹介

環境ボランティアリーダー海外研修

2005年(平成17年)第8回環境ボランティアリーダー海外研修レポート

海外研修レポート 感想 東京大学環境三四郎
濱口 真衣 さん
『環境ボランティアリーダー海外研修を終えて 』

・〔はじめに〕
「セブンイレブンみどりの基金ドイツ研修」において私の印象に最も残っているのは、様々な人々との出会いである。研修先で温かく迎え入れてくれた方々、特に同世代の「仲間たち」と巡り会えたことは、私にとって大きな財産となった。サンドラ、クラウディア、ヨハネス、ミリアム、マックス・・・彼らは皆、社会に対して問題意識を抱き、自分がそれを変えていかなければいけないという使命感に燃えていた。そんなモチベーションの高いユーゲントたちに私はたくさんの刺激と励ましを受け、私もがんばらなきゃ!と気持ちを新たした。 

・〔三つの課題〕
私は主に3つの大きなテーマを持って本研修に望んだ。一つ目がドイツ人の環境意識の原点とはなにか、二つ目が制度的な仕組みについて、そして三つ目が環境教育、特に教室の中で行われる教育についてである。以下、これらの課題を念頭に置きながらドイツで見聞き、学び、感じたことを徒然なるままにまとめる。

・〔ドイツ人の環境意識〕
ドイツ人の環境に対する意識はとても高いと聞く。それはなぜか。そのような意識はどこから生まれてくるのか。それらの疑問を解くヒントを得るために、私は研修先でお会いした方々に直接質問をぶつけた。
まず、どの様なきっかけで環境問題に興味を持ち、活動を始めたのだろうか。ウォールシュタットBUNDのLOCALAGENDAで活動するハネさんは遺伝子組み換え作物(GMO)が問題として注目された1996年に反GMOのデモに参加したことがきっかけで活動を始めたという。また緑の学校を案内してくださったフォルカーさんも同様に、GMOが引き起こす企業独占への懸念から反対運動に参加し、それが縁でLOCALAGENDAの活動を始めたという。他にも、遺伝子組み換えの問題を挙げた方が複数いらっしゃった。遺伝子組み換え作物の問題は、私の予想以上にドイツ社会に深く根ざしていることを知った。
また他の理由としては、チェルノビルの事故やライン河の汚染が挙がった。環境情報センターのホーンさんは1992年ライン河で魚が大量死した事件に衝撃を受けてこの仕事に就いたそうだ。彼が言った「やはり人は実際に被害を受けなければ動かない」という言葉に、ドイツ人の環境意識は決して自然発生的なものではなく、具体的被害を受けたからこそ高まったものであることを強く認識した。やはり理由があってこその環境保護なのである。今まで「環境といったらよくわからないけどとにかくドイツ」という固定観念に支配されていた私にとってその原点に触れることができたことは、幽霊に足が生えたような安心感を得るに至った。
確かに環境保護団体の方々の意識は高かった(当然ながら!?)。たが、果たしてドイツ人一般レベルでも同様の意識の高さがみられるのであろうか。私が受けた印象から言うと答えはNOである。一般市民の意識レベルでみればドイツも日本も大差がないように思える。また団体において実際に活動をしている人の数も比率も、決して高いとはいえない。BUNDで環境教育を担当するザビネさんも「今のドイツ社会の一番の関心事は経済と雇用の問題。環境に対する感心はとても低い。」という。

・〔なぜ環境先進国か?〕
では、環境先進国ドイツと呼ばれる所以は何か。私はその手がかりを環境保護団体の影響力と、それを支える制度に見た気がする。

・〔BUNDの社会的・政治的影響力〕
まず環境保護団体について述べる。BUNDを訪問してまず驚いたのは、団体が常に社会的、政治的影響力を視野に活動していることだ。BUNDの仕組み自体、政府レベルと並行した連邦—州—地域の三層構造をとっており、どのレベルにおいても政党や政治家を通して政治的影響力を行使する。またその一方で一般市民への訴えかけも忘れず、マスメディアという手段を多いに活用する。私はこのマスメディア活用術を直接経験する機会に恵まれた。なんと、私たちが訪問したウォールシュタットBUND緑の学級にも、また州BUNDにも新聞が取材に来ていたのである。写真と軽いインタビューに答える簡単なものであったが、実際に新聞記事として載ったものをみたときは大きな感動を覚えた。
なぜマスコミを呼ぶのか。私ははじめ、我々の思い出作りの為にわざわざ呼んで下さったものかと思っていた。それにしてもそんな話題を取り上げてくれるなんてドイツの新聞はよっぽどネタがないのかな、と勝手ながら心配になったりもした。しかしBUNDのシュタウダーさんの答えは予想をはるかに超えたものであった。「ドイツの我が団体に、日本からわざわざ視察にきてくれた。そのことは我々にとってとても名誉なことだから、多くの人に伝えたい。」つまり「日本から研修生がきた!」という話はドイツ社会で話題性を持つ。それがメディアでニュースになることで団体の価値、また地名度の向上につながるというのだ。さすが!である。
まとめると、ドイツの環境保護団体の影響力の背景には、政治への働きかけとマスメディアを通じた市民からの動きという、上下の双方的なアプローチがある。そしてそのツールである政党や政治家、マスメディアとのつながりを大切にすることが成功の理由なのである。

・〔プロが多いドイツの団体〕
やはり団体を形成しているのは人であり、人の想いである。BUNDを訪問して驚いたのは、団体には専門分野を窮めたプロフェッショナルが多くいることであった。ドイツでは博士号や専門のトレーニングを受けた人が市民団体を「自分が活躍できる場」として選ぶ。対する日本はどうであろうか。日本のNPOには「プロ」と呼べる人材が圧倒的に少ない。また、大学卒業後NPOに就職する、という選択肢は社会的に受け入れられていないのも事実である。私はドイツと日本の差は、NPOが社会に及ぼす影響力の違いにあると考える。NPOに優秀な人材を集め、プロを育てるためにはその人たちの「遣り甲斐」を創出する必要がある。そしてその遣り甲斐こそが政治的・社会的な影響力なのであろう。いかにこの「遣り甲斐」をつくるか、が今後の日本のNPOの課題となる。

・〔市民活動を支える制度〕
次に、環境保護団体を支える制度的な仕組みについて述べる。本テーマは私の二つ目の課題でもある。BUNDのシュタウダーさんの「ドイツでは環境保護の制度がしっかりとしている」という発言どおり、制度面の充実ぶりには驚いた。例を挙げると、一部の市民活動団体には、法律によって行政からの資金援助が約束されており、それにより安定した活動費の確保が可能となっているそうだ。また、一部の市民団体は議会での発言権や提案する権利なども認められている。訪問したウェルシュタットBUND LOCAL AGENDAチームもまた、行政から活動費を貰って活動しているという。同団体の事務局が市役所の一角にあることからも、団体と行政の深いつながりを見て取ることができる。
しかしその様な仕組みが作られたのも、市民活動の長い歴史の賜物であろう。今後、学術書などでドイツの環境法や制度について調べ、その背景にある歴史を読み解きたいと思う。

・〔ドイツの環境教育〕
本研修での私の三つ目のテーマは、環境教育、特に教室の中での環境教育についてたくさんのヒントをもらいたい、というものであった。その背景には、学生のうちに小・中学校の総合学習の時間に環境教育を行うNPOを立ち上げたいという想いがあった。ただ今回の研修を受けて、自然教育を含めたより広い視野で環境教育を扱う必要があることを学んだ。
ドイツでは子どもたちに自然体験をさせることを目的に、緑の学級や森の幼稚園などの取り組みが行われている。なぜ自然体験が重要なのか。その問いに対し、地域の森のエクスカーションを行っているシュタウダーさんも、BUND環境教育担当のザビネさんも、そして森の幼稚園の先生も「自然に出て、自分で感じることが何よりも大切。自然体験することで自然への愛情が生まれ、環境問題へ興味を持つ。」と言う。私が「教室での環境教育はどうなっているのか。」と聞いても、皆「自然に触れることのほうが教室で学ぶことよりも何十倍も大切だ」と答えにならない答えが返ってくる。
しかし、実際の現場を見るとその理由が納得できる気がした。緑の学級でも森の幼稚園でも子どもたちはとても楽しそうに自然の中で遊んでいた。森の幼稚園の先生によると「子供たちは自然のなかで、自分たちで独自のゲームをつくり遊ぶ。そして自然と森を大切にする気持ちがはぐくまれている」という。またドイツの自然教育で驚いたのは何もプログラムを用意しないということであった。緑の学級も森の幼稚園も「場」があるだけ。あとは子どもの自主性に任せて自由に遊ばせる。緑の学級では、ある子はルーペで今週観察をし、ある子は近くに生っているワインブドウを食べ、またある子は草花を本で調べていた。自然教育とは自主性そして個性を育てる教育であることを知った。
確かに自然体験は重要であり、それがなくては語れない。ただ同時に教室の中で理論を学ぶことでより理解が深まるのもまた事実であろう。そのバランスをどうとるか。今後の課題として考えていきたい。

・〔民主主義と社会参加の関係〕
本研修において改めて認識したことは、民主主義と市民参加の深いつながりであった。そしてその最たる例が森の幼稚園の教育手法にあった。民主主義の教育が徹底している。子どもたちは、その日どこにいくのかを自分たちで決める。その方法とはまず、一日のリーダーを決め、そのリーダーがその日行きたい場所を5ヶ所選ぶ。そして全員にビー玉が渡され、一人づつ小屋の裏に設置された5つの投票箱の中で自分が一番行きたいところにビー玉を入れる、というものある。私はドイツ社会の原点を見たような気がした。小さい頃から身近なところに政治があり、また民主主義の原理がある。だからこそ社会に対して責任を持つという気持ちが生まれ、それが市民参加という形で表れているのであろう。
またドイツの徴兵制も民主主義の重要な教育装置であると私は思う。そして徴兵の代替手段として設けられている社会貢献研修制度も同様である。本制度は、主に高校卒業後の一年間、環境や福祉の分野の市民団体や行政機関で研修生として社会経験を積むというものである。実社会に触れた上で将来の進路を決定できるこの制度は、ドイツの若者にとって大きな意義を持つという。この話を聞きふとわが国の現状を思った。日本では小・中・高・大学・就職と休む間もなくストレートに進む。若者には将来をじっくりと見極めるための時間も、また重要な判断材料となる社会経験の機会も与えられていない。現代に目標を見失ったフリーターやニートが急増している背景には、そのような社会の歪があるのではないか。今後は若者が気軽に社会貢献に参加し、社会について学ぶ機会を増やす必要がある。その上で将来を決定することの出来る仕組み作りが重要となるであろう。

・〔おわりに〕
ドイツで過ごした10日間に、私はたくさんの夢をもらった。この環境の分野で私は何をすべきなのか、何ができるのかを考えるヒントをいっぱい発掘できた。
最後になるが、団長、事務局、コーディネーター、そして参加者の方々受けた影響は語ることのできないほど大きなものであった。実社会で活躍されている先輩方と同じ立場で学ばせていただけたことはとても勉強になった。その反面、正直に言うと初めてのことだらけでプレッシャーを感じることもたたあった。温かく支えてくださったこと、とっても感謝しています。
そして、常に忘れてはいけないのは、本研修を支えてくださったたくさんのたくさんの方々。本当にありがとうございました。一人一人の想いに応えられるよう、今後も「情熱とロマン」を持って挑戦し続けたいと思います。☆Mai Dire Mai☆(NEVER SAY NEVER)



このページの先頭へ
ご利用にあたってプライバシーポリシー
Copyright(C) 2000-2019 Seven-Eleven Foundation All Rights Reserved.