研修を通して、自分が運営している団体の方向性が間違っていないこと実感した9日間となった。その理由として団体の規模(BUNDやNABUは会員数約40万人、環境NGO ezorockは約200人)と大きく異なってはいるが、団体運営の方法や今後の組織形態のイメージに似ていた点にある。これから形にしようとしていた成功例を実際に見ることができたことは非常に勇気づけられた。
特に生かしていく点として、以下のものが考えられる
【地域の問題解決にむけてを地域の若者が動くための組織を作り上げる】
環境NGO ezorock (以下ezorock)は、札幌を中心に北海道の青年層を切り口に活動を展開している。しかし、活動の大きな課題として、北海道を対象にしているにも関わらず、札幌圏に活動が集中しているという問題がある。
そのため、次のステップアップとしては、道北、道東、道南、そして道央の4地域に支部を作ることで、「地域で抱える環境ちいき問題は、地域の若者が解決に動く」という組織形態をイメージしている。さらに、支部も1つの組織として独立し、資金の確保や意思決定を自ら行なうことで、地域の課題にあった活動を展開していくことが可能となると考えている。
この組織形態は、今回の研修で学んだBUNTやNABUの組織形態(連邦−州−地域グループ)の関係非常に近い内容であった。BUNTやNABUにおいては、意思決定は、一番大きな組織である連邦がトップダウンで行なうのではなく、担当している州や地域グループ組織が自ら意思決定を行なっている。例えば、連邦が一枚のポスターを作製したとしても、州の活動内容とそぐわなければ、利用する必要はない。それは、地域グループでも同様に扱われている。このように、それぞれが独立して、意思決定を行なうことで、スピーディな対応と、地域の課題にあった活動が行うことが可能となるのが大きなメリットである。また、地域の課題にあった活動を展開することで、活動支援者に対して成果が見えやすい。
【事業で成果を出しながら人を育てる】
人材育成と聞くと、研修会やセミナーを受講するというイメージでいたが、ドイツの人材育成は仕事や日常の実践活動を通して学ぶ仕組みが随所に見られた。イメージとしては、日本のOJTに近い。今回研修で行った自然体験センターや環境団体の事務局には必ずといっていいほど、学生の姿が見られ日常業務の一部を担っていた。たとえば、外部に提出する資料の作成も、事務局スタッフだけで行なうのではなく、学生やボランティアスタッフと一緒に作ることで、自然と人材育成につながることが出来る。日本のように「人を育てたいが時間がない」という特別なものではなく、事業に参加し成果を出すことで、人も同時に成長していくことになる。効率的で無駄のない人材育成方法である。
ezorockでも、日常的な活動に積極的にボランティアスタッフを巻き込むことで人材育成と活動が同時に行なうことが可能と考えられる。
【事業や活動を通して、ネットワークを広げる】
日本のネットワークというと、お互いがつながっている状態をイメージするが、大切なのは、「どうしてつながっているのか」という目的が共有できているかという点である。つまり、事業や活動など、お互いの目指すものが一緒であれば、積極的に連携することで、ネットワークは意味が出てくる。ドイツの環境団体は、プロジェクトなどで、お互いの目的が同じであれば、ネットワークをつくり、大きな成果を生み出している。
日本のネットワークには、何が目的で集まってきているのかが明確化されていないために、
機能が停滞しているケースが見られる。目的のないネットワークは、ネットワークを作る意味がないとということを知ることが大切である。
そのためには、まずezorockという団体の強いと欠点を明確化しておくことで、お互いの足りない部分を補うための連携が可能と考えられる。積極的に活動を通して連携を広めていきたい。
【関係者との顔の見える関係づくる】
ファンドレイジング、ボランティアコーディネート、ロビー活動などそれぞれの担当者が話していた共通の言葉に「直接あって話す」というキーワードがあった。とても単純なキーワードではあるが、ドイツの環境活動の様々な成果が出ている理由の大きなポイントと感じた。顔の見える関係を日常から大切にすることで、その結果として、ボランティアや活動資金、政治へのアプローチなどすべてにつながってくるのである。時間がないという理由で、様々な人と直接話す機会を減らすことは、寄付やボランティアとして協力してくれる人を失うことにつながっている。
また、事務所など活動の拠点となる場所に、会員などが足を運んでもらうための仕組みも重要なポイントである。事務所が開いている時間の広報や、来客のときの対応など、日常のなかで自然と実践することは可能であり、これが顔の見える関係を作りあげる原点と考えられる。
【きめ細かい情報の発信・公開を行なう】
寄付を集めるのも、他団体と一緒に活動を展開するのも、ボランティアとして参加してもらうのも、重要なポイントは、「この団体は信頼できるのか」という点である。全く信頼関係のなければ、団体への協力は難しい。しかし、団体の持っている情報(活動内容から会員数、会計報告など)をきめ細く公開することで、信頼は増してくる。
また、イベント等にも積極的に参加し活動の広報を行なうことも重要なポイントだと感じた。一般を対象に活動をPRできることの効果は大きく、団体の名前を認知度を上げるだけではなく、市民に対して取り組みを普及することも問題解決につながるため、成果につながると考えられる。
このように、積極的に団体の情報を公開していくことで、認知度が高くなることで、信頼が増し、寄付や会員を獲得しやすくなる。地道な活動ではあるが、継続して行なうことが重要である。
日本の環境ボランティアリーダーを支援するために効果的なことは、大きな成功事例を作り上げることと考えている。そのためには、自然があり、190万人の都市を抱えている北海道という島を、世界で最も環境のことを配慮した島として成果を生み出すことで、日本中の環境への取り組みをスピードアップすることが可能と考えられる。それを実現するためには以下の仕組みを作り上げていく。
【北海道の2050年ビジョンを作り上げる】
北海道内の環境団体の活動は、それぞれが重要な役目を担っているが連帯感に欠けている。その理由として考えられることは、北海道全体の長期的なビジョンが明確化されていない点が考えられる。行政が作成した長期計画はあるが、その計画のどこに問題点があるのかと、比較になるものが存在していない。
そのため、北海道の環境団体を中心に、北海道の理想的なあり方をまとめたビジョンを作ることで、環境団体の連帯感を強めることが可能となる。また、行政が作成した長期計画と比較検討することで、問題点のある部分を行政に対して政策提言していくことが可能となる。
【「日本に寄付文化がない」ではなく「大きなチャンス」へと変えていく】
ドイツの現状は、経済の悪化と共に寄付金が減ってきている傾向にある。ドイツにおける寄付を市場として考えると、長い歴史の中で成熟した市場と考えられる。
一方、日本において「寄付」はまだまだ一般的なことではなく、特別なことと考えられている。このことから日本流に寄付金を集める仕組みを作り上げることができれば、活動資金難に悩む市民団体にとって大きなチャンスを生み出すことが可能である。
この寄付を集めていくためには、まず環境団体が、1)信頼の置ける団体になること2)成果や必要な資源をわかりやすく伝えること 3)顔の見える関係を築くことが重要である。
信頼の置ける団体になること」とは、認知度をあげるためにメディアを上手く活用する、積極的な広報を展開する、決算などの活動報告をしっかり見える形にするなど地道な部分をじっくり続けていくことで、生まれてくるものと考えられる。
成果や必要な資源をわかりやすく伝えることとは、いつ、どこで、だれが、なんのために、どのように使いたいのかといった情報を的確に支援者に伝えていくことである。
顔の見える関係を築くとは、突然寄付者が現れてくるのではなく、関係者との日々の細かい対応の結果として、寄付金が集まってくる。
寄付は、後ろめたい行為ではなく、寄付した人も納得して寄付行為を行なうのであれば、win-winの関係を築くことになる。長期的な取り組みにはなるが、チャレンジし続けることが重要である。
【市民団体が力をつけて政治と対等な関係になる。】
今回のドイツ研修で日本と大きくことなった点は、ドイツは環境に関する制度がととのっているという点である。これは、日本の市民団体が苦手とするところであるが、これからの環境問題に対応していくには、政治との関係は切っても切れない関係になる。政治と対等になるには、やはり市民団体がもっと力をつけていかなければならない。例えば、会員数でもNABUやBUNDの40万人の発言力と、日本の市民団体の発言力では大きな差がある。政策提言にしても、大きな影響力を生み出すにはまず、市民団体が日本の社会にとって今以上に大きな存在になる必要がある。
全体を通しての感想
参加当初、私は「資金調達の具体的な手法を団体に生かす」ことが大きなテーマであったため、マーケティングの手法などが必要であった。しかし、研修に参加しているうちに、日本の社会に大きな変化を生み出すためには、細かい手法が必要なのではなく、もっと大きな視点で、自分の運営する団体をみる必要があることに気がついた。つまり、すべての環境団体が大きな役割を担っており、それぞれが連携することで環境問題は解決に向かうというあたりまえの事実である。この発見は私にとって非常に大きな意味がある。また、率直に「自信が持てた」というのも正直な感想である。北海道で今後作り上げて生きたいというイメージとドイツの現状には、重なる部分が多く、共感できる点も多かった。
今回の研修は、すばらしい仲間と共に、刺激的な毎日を過ごすことができた。おそらく今回の研修で学んだことのいくつかは、日本にいても同じ情報を手に入れることが可能だと思う。しかし、空気やドイツの雰囲気、実際に活動している人の熱意などは、日本では、絶対に知ることができないとつくづく実感し、日本もまだまだ負けていられないと強く感じた。
今回の研修は、多くの方からの寄付によって支えられている。私にできることは、北海道内で学んできたことを、どれだけ活かしていくかにつきる。「北海道を世界でも環境先進の島にする」という私個人のミッションを達成するために、今後も活動を続けていきます。
9日間ともにできた全国から集まった研修生のみなさん、セブンイレブンの事務局の関係者のみなさん、寄付をしてくれたみなさん、「行ってこい」と背中を押してくれたみなさん、そして、私の家族に大きな感謝です。ありがとうございました。
Prima!