(1)訪問団体の活動やマネージメントなど、どの部分を日本のボランティアリーダーとして生かせるか。
「新たに知ったこと」「課題の解決策」という2点の視点から以下の項目でまとめる新たに知った、学びたい、学ぶべき姿勢・活動:
活動を始めたきっかけにも、ドイツと日本の間には違いがあると感じる。どちらも意識の違いがあって始めるのだが、
ドイツの意識・・・環境を未来の世代のためにという長期的視野
日本の意識・・・自分たちがなんとかしなければならない
ただし、この長期的な視野に基づく意識はドイツ国民全員が思っていることなのか 一部の先進的な人たちが立ち上がっただけなのかはリサーチできていない。この研修で明確になった国民性に基づくスタイル(アプローチ)の違いは、
もし違い・不満・疑問があったら → 明確にする(主張する) → 周りに影響
明確にしたとき、この意見(多様性)を受け入れる精神(国民性)がドイツにあるが、日本にはない、少ない(「和を持って尊しとなす」という言葉に見受けられる、皆に共通のひとつのモノを作り、それに皆が同意形成する という国民性)
BUNDというドイツで一番大きな環境保護団体では、会費を集めているが、会員サービスはなんですか?という問いに「自然保護のために活動している」これが会員へのサービスだ、と言い切る姿勢、これも非常にシンプルで素晴らしいと感じた。会員サービスと言う概念がないのかもしれないが、会費や寄付に関しては、報告や感謝の意は示すが、過剰なフィードバックは一切ない。それをするより環境保護に使うのが支払った人への一番のサービスである、というのはもっともな考えであり原点ともいえる考え方である。
また、会員の募集は積極的にはしない、というのもうなずけた。興味を持ってくれた人にだけ説明する。環境の団体への会員募集は、無理にお願いするものではなく、押し付けになってはいけない、という考えはこれまたシンプルで素晴らしい。
マインツ市のCO2削減目標は5年で10%削減という高い数値目標設定。マインツ市のごみ焼却炉は再生可能なエネルギーをとることが目的でありごみ削減が目的ではない(分別を始めた後に建設した焼却炉なのでごみの量はあまり削減していない) マインツ市内だけで総合7万MW(メガワット)のソーラーシステムが存在していることも驚きである。
ごみ袋の配布場所を少なくして売ることによって市の環境情報センターに来る人の数を上げ、また情報を常時更新することにより頼りにされていく。活発さを感じる。本当にわからないことはホットラインで常に解決する姿勢を見せている。素晴らしい行政のあり方である。
自然を保護してそこにすむ生物も保護する、という考え方。在来種の保護は外来種がはびこっているものに対しての危惧もある。
環境に対しての最終的な目的は日本と同じであり、問題も同じである。ただしドイツは目標や効果をずっと先(未来の世代)に持ってきている点が根本的に違う。ドイツに追いつかないと、と思っていることそのものが結果を求める日本人的な考えであり、効果をすぐに求める日本人の良くも悪くもある考え方かもしれない。ドイツは、アプローチが「やってみて、失敗したら変えていく」というスタイル。「失敗してもそれが当たり前」という皮膚感覚が国民全体に存在しているような気がする。たくさんの訪問先を見て、感じたことは、すべてちょっと時間軸でドイツが日本より先に行っているだけではないだろうか。ドイツ人は環境問題に対して先進国であるという感覚はあまり持っていないのには非常に驚いた。
NGO・NPOのアプローチの違いが国民性に起因していると思われる点
・日本人 | ワンマンなのが多い(ネットワークや組織で協力して動くことが少ない) |
・ドイツ | 地域やネットワーク、組織で協力していく(日本は見習うべき)。 問題点に気がつくのが早い(国民性、国の立地、大陸の特徴) 組織のトップの意見(議員、国)を制度化(法律)するのがうまい、早い 国→地方行政→国民 トップダウンにあまり不満がなく当たり前と感じている 行為←→予算 この2つがリンクしている NGOに対して寄付が多くなっていく、ということはそのNGOに対する信頼が増えているという考え方 |
・・・背景には、民主主義が国民に浸透していることがあげられる。選挙の高い投票率、自分たちが国を変えられると確信している点、宗教がベースの感覚、寄付することが皮膚感覚で浸透している点があげられる。「無料のものには価値がない」と思われるので有料化するという考え方は感銘を受けた。
・企業→ | 自然を壊す存在 | 利益を生む 多い |
↓(利益の一部) | ||
・NPO→ | 自然を保護 | 利益が少ない |
この2点が同じ敷地内に存在している場所がある(ドイツのGKRWという採石場を営む企業) 行政が集まって出資した企業であり、その存在そのものが日本では珍しい。
企業→環境と経済のバランスを感じる(経済というものには、国策のように変えられないものがある)が、企業側からの視点とNPO側からの視点のバランスが重要である。
人材育成についての質問を考えていたときに新しい発見があった。BUNDというドイツ最大の環境保護団体にとって「理想のBUND職員像」みたいなものはあるのだろうかと考えていたのだが、話を聞くにつれ、日本とドイツの組織形態や規模の大きさの違いが明確になった。日本のNGO・NPOは少人数の組織が多いので事業や総務、広報など組織全般のことについて一通りまんべんなく知っておく必要があるため、すべての分野に横断的な理解力を求められる=理想的な組織のメンバー という構図がある。しかしBUNDやNABUのような組織は、まず組織が大きいという点と、「スペシャリストの集団」と捉えられるような組織形態になっている。つまり、業務ごとに必要なレベルの職員を募集していくので組織内の自分の担当以外について知る必要もないし、知る努力もしていない、という点が大きく違う。これは組織が大きくないとできないことでもあるため、一概に日本にあてはめられないのが残念だが非常に参考になる。
ネットワーク:
まず、連携(ネットワーク)という言葉の根源的なとらえ方の違いが日本とドイツにあった。
・日本 | 「和を持って尊しとなす」という言葉に見受けられる、皆に共通のひとつのモノを作り、それに皆が同意形成する というスタイル |
・ドイツ | 「多様性を認め合う」バラバラな考え方を持った人たちが、互いに尊敬し認め合うというスタイル |
ネットワークをするメリットについて、ドイツでは必ず「政治家への働きかけができる」と「情報交換によるアイデアの共有」の2点があげられた。これは、政治的に中立な団体がネットワーク化して大きくなることによって法律改正に至る政策提言を政府にできるというメリットがひとつ。そして、ボトムアップによる下から吸い上げた意見を上層部で意見共有し議論でき、そしてトップダウンで良いものを伝えるメリットがふたつめにあげられる。このふたつめのトップダウンで上層部から伝えられるもの、というのは目的や理念が中心で手法に関しては大まかであり、実際の活動はすべて各自の団体に委ねられているのがドイツの特徴であるといえる。日本の場合、似てはいるが根本的に違う「下位の団体の創造的な活動を制限してしまいがちな、手法の部分まで細かく規定・制限されているようなトップダウン」は見受けられる。
この「政治家への働きかけができる」と「情報交換によるアイデアの共有」の2点について言える一番大事なことは、「民主的」な選挙制度と体系作りができている(浸透している)という前提条件があって始めて機能する、ということである。
資金面:
ドイツのファンドレージングアカデミー訪問から学んだもので、日本でも可能性の高いものは、遺産相続のファンドレージング。身寄りのない個人の遺産を生きている間に団体と信頼関係を築くことで、弁護士を通して正式に亡くなった後の遺産寄付をお願いする。収入の大きさ、成長の大きさともに一番大きい。企業献金(スポンサリング)も同じカテゴリーに入っており、両社ともに信頼する団体にしか寄付はしない、という基本的な考え方を遵守しなければ成り立たない。そのためにはイベントや事業の報告を怠らない点と、感謝の意を言葉で伝えることが重要になってくる。「寄付は、心が動かなければ頭は動かない」という言葉が心に響いた。
また、今回は聞くことが出来なかったのだがデータベース・ファンドレージングという考え方があり、例えば寄付に対する感謝の言葉を、印刷しただけの文章を発送をしたときと、手書きの文章を発送したときでは受け取り方が違ってくる上に、次回にも寄付をしてくれるかどうかまで違いがでる。これを調査したり、市場調査をしたりしてよりよい方法をデータベース化していく手法である。この考え方はより発展的な段階にある考え方であり、十分日本でも生かせるものである。
基本に戻ってファンドレージングをするにあたり、アプローチをシステム的にきちんと論理展開しなければならないということ。PDCAの流れ、そのフィードバックを次に生かしていく、というかなり論理的思考でアプローチを組み立てるのが重要になってくる。
また、全く逆転の発想だが、マインツ市のローカルアジェンダ21というワーキング・グループから学べたものは「会費無しのワーキンググループ」という形式。資金の面を解決しよう、と考えるとどうしてもどこからお金を持ってこよう、作り出そうと考えるのだが、これはその全く逆。会費は、労働力で提供してもらう、という姿勢。これは、目的があって活動があるという原点に振り返ると、うなずける考え方である。
資金調達の参考例(日本で生かせるなら)
・ | 木のオーナー制度(自然公園の中に木を植え、それのオーナーになってもらうことで資金調達する)→海亀の産卵場所のオーナー制度(里親制度) |
・ | マッチング ギフト 資金調達は身近なところから。例えば、誕生日にプレゼントをしたつもりでその分のお金をいろいろな人から集めたとすると、その集まった金額と同額の金額を、プレゼントをもらう本人にも出してもらい倍にしてそれを寄付する。これは、銀行などが対象でも考えられる。寄付を呼びかける立場ではなく、寄付を出す側の視点になってみるために、早速立ち上げたばかりの小さな団体でやってみようかと思った。 |
人材育成:
ドイツは環境教育のプログラムを受けた後に地域で展開できる(BUNDの事例)。環境教育の研修を受けた一般の人が地域の学校に行って環境教育をする仕組みがある。アプローチは研修をコーディネートした側であるBUNDと受け入れ機関の学校の両方からあって、BUNDから学校へと、学校からBUNDへの両方通行。また行政もその地域住民が学校で行う環境教育を良いものであると認め推奨している。ここでのポイントは、BUNDから学校へアプローチがある、という点。またBUNDの知名度も重要な点であり、これが行政へのアピールになっている。自分の団体に置き換えると秋田県地球温暖化防止活動推進センター(ACCCA)から地域の学校へのアプローチすることの重要性と、ACCCA自体の知名度を上げる努力も必要になってくるということである。
環境に若い人が興味を持ってもらうことが、長いスパンで見ると人材育成になっているという点がドイツでは浸透してた。PCM(プロジェクト・サイクル・マネージメント)の手法で説明する。 PDM(プロジェクト・デザイン・マトリックス)のプロジェクト目標にあたる部分が「環境保護の人材が育成される」であると今までは考えていた。つまり、人材育成が進まないことが中心問題だと思っていたので、人材を育成するためのプログラムを展開していた。しかしそうではなく、プロジェクト目標は「若者に環境に興味を持ってもらう」であり、その上位にあたる上位目標の部分が「人材育成」になる。つまり中心問題が「若者が環境に興味を持たない」と考え、「若者に環境に興味を持ってもらう」プロジェクト目標を立て、興味を持ってもらうためのプログラムを展開すると、外部条件を満たして「人材育成」という上位目標に到達する。これは目からうろこであり、この研修で気がつけた喜びは非常に大きい。
PDM(プロジェクト・デザイン・マトリックス またはログ・フレームとも言う)
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縦の論理(縦のロジック)
(2)研修を通して、日本の環境ボランティアリーダーを支援するために、どのような仕組みが考えられるか
ドイツでは、NABUやBUNDのようなネットワークのしっかりした会員数の大きな団体が、しっかりしたロビー活動を行っているからなのか、政治家がフランクで団体に気軽なアプローチがあるのかは不明だが、政治家とのつながり(企業・政治家には常に中立の立場である)がしっかりしている。そのため、小さな団体が、NABUやBUNDのようなネットワークのしっかりした会員数の大きな団体と手を組むことへのメリットが出てくる。それは、小さなことでも良い活動であればボトムアップされ上層部を通して、それが政治家まで伝わり、そして国の法律を変えることがあるかもしれないからだ。(民主的な制度整備が確立化され、かつ小さな頃から民主的に物事を解決する習慣がある国民で、大きなネットワーク組織でもトップダウンとボトムアップがかみ合っていて、会員数の大きな団体と組むことが団体同士の縄張り争いにはならないおおらかで民主的な国民性がある、という前提条件があるが)
つまり、ロビー活動(特定の政治家とだけつながっていない)をしていて、かつ民主的な仕組みを持つ、会員数の大きな環境保護ネットワーク団体を存在させることが考えられる。会員数は増えれば増えるほど、よりよい。なぜなら、特定の政治家とつながっていない、常に中立であることが環境保護団体の存在意義であり、人数(会員)が増えれば増えるほど政治家がその存在を無視できなくなる。つまりその会員数の大きな環境保護ネットワーク団体の発言力が法律を変える力を持つかもしれないのである。
しかしその環境保護ネットワーク団体のトップに来る求心力のある首長の資質や存在感が重要になってくる。
(3)全体を通しての感想
全体的に非常によいプログラムであると感じる。ただ、人は大量の情報を詰め込まれるとその量が多ければ多いほど、それを整理する時間が必要になってくる。整理する時間を与えない場合の報告や感想は、業務報告的なものになりがちである。(ワークショップ・ファシリテーターとしての視点から申し上げる) 今回は「リーダー」の研修であるため、報告書や感想の部分は、単なる報告ではなく、より自分の足元と照らし合わせたもので、かつ日本の思いとドイツの思いを両方取り入れた総合的なものでなくてならない(それを読む人たちに影響を与えなければならないという思いも含め)。後述にもあるが、そのためには、最低3日から1週間の研修生の間でチェックしまとめる期間が必要だと感じる。またタイトなスケジュールの中で、相手の組織概要を聞いた上で、それぞれの人が聞きたいことを通訳を通して質問するので、質問の基本項目を10個に分けたのでそれを以下にきす。(次回からの研修に役に立つ情報かもしれないので)
- 質問の基本10
- あなたの所属とポジションは?広報、事業運営、経理、は誰がやっていますか?
- 有給職員とボランティアの数(できれば給料形態と金額も)
- 行政と組むとき、企業と組むときの両者のメリットは?
- 地域の活動の内容は、地域の代表者が決めるのか?
(ボトムアップ(下からの意見の吸い上げ)はどのようになっているのか?)- 予算の構成(人件費、事業費、建物の管理運営の配分は?パーセンテージで)
- 収入の内訳(寄付や会費以外は何ですか?)
- 若い人材はFOJ以外ではいないのか?
(正職員で、FOJ・兵役免除以外の若い人材の確保の仕方)- 課題は?
- ロビー活動をしているのか?
YES→それによって実現したことは何か
NO→ダンケシェーン♪
- 有給職員とボランティアの数(できれば給料形態と金額も)
最後に
セブン-イレブンみどりの基金へ募金してくださった皆様へ心からお礼申し上げます。皆様の温かい気持ちを一滴残さずこぼさないよう、誠心誠意研修を受けさせていただきました。研修中は常に皆様への感謝を忘れずに、行動し、出された食事も心をこめてすべて食させていただきました。本当にありがとうございました。