セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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活動のご紹介

環境ボランティアリーダー海外研修

2009年(平成21年)第12回環境ボランティアリーダー海外研修レポート

海外研修レポート 感想 NPO法人 樹木・環境ネットワーク協会
石井 玲子 さん

1.訪問団体のどの部分を日本のボランティアリーダーとしていかせるか

 今回の研修を通じドイツの各種活動団体を訪問し、今後の活動にリーダーとして活かすべく学びえた点について以下に示す。
 ① 専門的知識に裏づけされた活動内容や計画や実効性を常に意識する
 ② 活動を普及するための広報を戦略的に行う視点を持つ
 ③ 顔の見える関係をつくり信頼関係を育む
 ④ 想像力を駆使した協働の提案
 ⑤ 市民が束になれば大きな影響力を持つことを意識する

 これらの視点をもちながら、リーダーとは活動への強い志と熱意をもち、戦略的なマネージメントを行っていくことが必要だと感じた。全体を総括的に監修し、適切な人物にそれぞれの役割を託し、それについて情報発信を行っていくために、特に今回の活動から得たことを以下に詳しく述べる。

① 専門的知識に裏づけされた活動内容・計画性や実効性を常に意識する
 NABUやBUNDでは、活動の専門性を得るため、「会員の中に専門家を積極的に招き入れる」「会員入会の際などに、会員の情報を把握し、それらをデータ化しておく」「環境局等の行政サイドでの専門性のある人に協力をしてもらう働きかけを行う」「スタッフの専門性を補完するかたちで、理事や顧問、会員に環境活動にかかる各種専門分野のメンバーを投入する」などといった具体的対応を図り、会員や各プロジェクトにかかる有識者との連携を実現するために積極的に動いていた。地域のボランティア活動の質を保ち活動の成果を出すことも重要であるとともに、多くの有識者を抱え、一緒に活動を行うということは社会的な信頼を獲得することにつながることを常に意識知ることが重要だ。
 活動を総括的に推進する立場のなかで活動内容を検討するときも、多岐にわたる自然環境活動のなかから多くの人々に参画いただくためにも、活動自体が魅力的で、関わってよかったと思ってもらえなければ人も集まらない。先駆性や他地域に波及が可能か、そしてどこに社会的意義があり、新たな人材を巻き込むだけの啓発性があるか等といった視点で常に自分たちの活動を客観的に分析整理し、見直しや調整を図る意識を忘れてはならない。特に、長期スパンで行われる自然環境保護を行う場合、はじめから自然環境に興味がある層以外に、一般市民の参加や普及を促すという視点を持って活動内容について掘り下げる必要がある。ヘッセン州の自然保護センターのように、芸術や音楽のイベントを催す場として市民に開放したり、子供のお誕生日会や、休暇中(ドイツは長期休暇が日本より多くある)の子供を預かるシステムの導入、NABU自然保護センターで実施されるinfocafeなどのような自然の素材を活かした(例えばきのこの季節だったらカフェ+キノコ関連の料理やイベントを催しながら、活動の普及の機会をつくる)など、日常生活を営む空間のひとつとしてどうやったら利用が図れるかという柔軟な視点で、活動内容を見極める目線も必要である。
 また、活動計画についてはどの団体も概ね1年前から準備をはじめ、少なくとも年度が始まる3〜4ヶ月前には活動内容だけではなくイベント時の場所や開催日時、なかには講師まで決めているものも少なくない。このように前もって活動計画が立てられるということは、参画を仰ぐのに早い段階で情報を提供できることにとどまらず、事前に綿密な計画が立てることができるという組織の社会からの信頼を裏付けすることができるため、PRの材料に使ったり、普段から円滑な活動スケジュールが組めるようなスケジュール管理の重要性を他のメンバーにも働きかけ常に共有する。

② 活動を普及するための広報を戦略的に行う視点を持つ
 広報でPRすべきものは、イベントの日時、概要ではない。実際の日々の活動事例を介して、組織の理念やそれに基づく活動の目的や概要を一般市民に発信し、ひとりでの多くの方に活動を理解し、賛同いただくことが主たる目的である。それが、会員入会や寄付をはじめとしたいろいろな参画につながっていくという、とてもシンプルでとても大切なことに、改めて気がつかされた。
 情報発信も、掲載されるのを待っているのではなく、活動をはじめる、あるいは実施後の新聞へのニュースリリースを毎回必ず行うなど、こちら側からの積極的な働きかけを常に心がけて推進する必要がある。
 これらはNABUやBUNDには専任の広報担当者が担っている。ラインランド・ファルツ州自然環境財団では、その部分の専門家が確保できない場合は、環境省から広報の専門家を派遣してくれるシステムさえあると聞き、驚いた。日本で行政にその部分についてあまり期待できない。といって、あきらめるのではなく、例えば、広告代理店やPR会社より専門家の協力を仰ぐためにこちら側から積極的に企業に働きかけ会員になっていただき、人材の派遣や技術を提供いただくというような柔軟な視点をもちその体制を確立するための努力を行えばよい。このように、クリアできないと思われることも、知恵をひねり行動することで補完できる技能であるということを、周囲に伝えてあきらめるに手法を考えていく忍耐力もリーダーに必要な要素だと思う。
 また、各種活動団体や市民からの信頼を得るためには、特にプロジェクトについてはその成果を数値化、可視化することも大切であり、その表現方法も他の類似した活動団体と同じ形にならないようなレイアウトやデザイン、表現方法の工夫をすることも重要だ。会員に対してということで考えると、具体的には会報誌や定例総会の資料など、実践する各種活動の概要や成果を明示できる貴重かつ唯一のチャンスであるのに、実務にかまけて丁寧な対応が取れていなかったことをここにきて自覚している。こうした点を再認識し、活動普及のための意識をスタッフと共有する働きかけをする。

③ 顔の見える関係をつくり信頼関係を育む
 寄付文化の発達しているドイツでは、ドイツ市民の40-50%が常に何らかの形で寄付をしている。日本ではまだ普及が浅いが、ファンドレイジングアカデミーにおいて学んだような遺産寄付や誕生日、結婚式などの寄付などへの働きかけのひとつとして、企業の設立○年記念日をチェックし、そこに向けてこちらから働きかけるという工夫も必要だということを学んだ。
 業務が積もる中、どうしても多くの会員に情報を発信するとき、効率性を優先した結果手を抜きがちで、同じような文言の案内を毎回送ってしまったりしてしまいがちだが、敢えてここには時間と労力をかけ、単なる活動資源を得るための会費獲得ではなく、「あなたにしかこれはできないことだから、協力してもらいたい」「あなたの協力に団体として心から感謝している」という気持ちを持ち、対応する環境づくりを行う必要がある。すべてに手書きを添える、名前を個別で書く、誕生日の際に一言添えて個別の会員の特典をつくる等、時間的、人数的制約があるなかで、そうした一つ一つのきめ細やかな配慮を活動の随所に取り入れているかどうかを把握しながら業務を遂行するとともに、常に自身で実践し続けてそれを見せることにスタッフ自身もそういう動きができるような組織の雰囲気や意識付けを図ることは地味ながらとても重要なことだと感じている。
 また、プロジェクトにスポンサーとして協力いただいた団体であるということを、さまざまなシーンで発信する働きかけには細心の注意を払うことも忘れてはならない。

④ 想像力を駆使した活動
 一緒に活動をする相手の気持ちに立って、相手が最も心地よく活動に参画してもらう環境を構築したり、活動に参加いただいたことへの成果や感謝をわかりやすいかたちで提示し、参画したことをその人自身誇りに思ってもらえるアプローチを常に意識し、活動を誘導することもリーダーとしての重要な要素である。
 どの環境NGOでも当然のこととして話していたが、例えば企業との協働を図る場合は、各プロジェクトの性質や分野、内容を踏まえて、適当と思われるマッチング可能な企業をNGO側で検討し企画書を書き、営業に行き積極的に提案していくということを行っている。やみくもな営業は労量にもなるし、費用対効果も低い。カエルの保護だったらカエルのロゴの企業に企画書を持っていくなど、柔軟な発想をもつことを常に心がける必要がある。また、企業の本業に活かしたかたちでの柔軟な提案を常に意識して行っていくことも重要である。また、協働についても人材の派遣や協賛、寄付や情報発信なのか、それぞれの企業側の目線に立って柔軟な参画が可能であるということを提示し、参画者を増やしていく工夫も積極的に図らねばならない。
 また、ドイツは前述したように長期休暇があり、BUNDではそのなかで若い層が参画しやすいようなイベントや活動を長期夏休みに開催する活動の工夫も行っている。このように相手の立場に立ったときにどうしたら参加しやすいか、わかりやすいか、うれしいか、そうした客観的な視点で活動を定期的に俯瞰して見直す、全く活動を知らない一般市民に意見をきくといったことも有効である。
 NABUの自然保護センターでは、施設のひとつであるエコハウスをつくる際に、エコロジーな建物にしてほしいということを、地域の大学に協力を仰ぎ、得意分野を活かしてかたちにした。また、屋外の教材は活動に関わるボランティアメンバーが提案し、皆で話し合い採用されたらすぐに皆で創意工夫を図って創り上げるなど、地域の市民が、それぞれの得意分野を補完しあいながら、皆で参画し、作り上げていく仕組みを導入している。自分の意見が採用されることは本人にとってはとても嬉しいことだし、ここでの活動のように比較的短いスパンで成果が目に見えると、達成感や満足感、責任感をも促し、さらなる活動への愛着を促すことができるため、そうした意識付けを常に図っていくことも大切である。

⑤ 市民が束になれば大きな影響力を持つことを意識する
 活動主体が発展段階で規模が小さいときは、各活動主体の得意分野を活かしたかたちでコラボレーションを図り、お互いの専門性を活かした質の高い活動ができるということを知った。小さな集団では、発信も小さく、質も限られた活動になりがちだが、コラボレーションを図ることで大きな影響力を生み、社会へ大きな影響を与えることができるという意識をもち、活動のあり方を常に意識する必要がある。
 そうした意味で会員数が増えると、それだけ活動に多くの人が参画しているということになるため組織そのものの信頼性や影響力も増す。これについては運営資源をどこで捻出するかの戦略次第なのですべての団体には当てはまらないかもしれないが、私たちの組織では会員獲得には特に注力したいと思う。


2.日本の環境ボランティアリーダーを支援する仕組みが考えられるか

 日本の環境ボランティアリーダーに限らず、どの組織でも運営していくためのマネージメント力と、活動資源の調達は、戦略的な広報などは重要な課題である。
 そこで、ドイツのボランティア研修制度(FÖJ)のような青年の受け入れ制度を、OBを含めたリーダーに働きかけて、地域の環境系、教育系の大学とNPOとが協働開発を行い、各地域で成功事例をつくり、実績をつくってから社会的影響を与えられるような基盤を作り、国や行政へと働きかけて長期的視野でこの制度への行政が関わらざるを得ない状況をつくりあげていってはどうか。
 また、現在NPO等で働いている環境ボランティアリーダー・メンバーの研修制度を立ち上げることを提案する。そこではもっとも不得意といわれているマネージメント、マーケティング、資金調達といった命題に対して、既に企業等でそうした研修を実施している有識者とこのセブンイレブンみどりの基金のOBリーダーなど成功経験のある方に講師として協力いただき、このメンバーはこの研修制度の立ち上げに基づき委員会メンバーとして、研修制度の内容や運営体制について検討する。活動資源は企業の社会貢献として既に助成金制度を実施しているセブンイレブンみどりの基金等の諸団体に呼びかけるとともに、エコポイントなど環境系の寄付を行っているところに働きかける。なお、OBが所属するNPO団体に一定期間インターンとして研修することも義務付け、成功事例のあるNPOが実際にどのような運営を行っているかを肌で感じ、実体験を通して技術を習得し、考え方のヒントを得ることも考えられる。この研修制度の修了生は認定づけ、講師やNPO運営のアドバイザーとして環境NPOのコンサルティングを担うことで、新たなNPOの底上げも図ることができる。


3.感想

 環境ボランティアメンバーの活動への熱い思いや愛情はその活動の主たる原動力であり、実際に各地域でのボランティア活動の礎であることは、ドイツも日本も共通である。
 しかしながら、ドイツでは連邦や州などの行政やBUNDなどの環境NGOをはじめした環境活動団体間ならびに、ひとつの環境活動団体内でも、活動にかかるそれぞれの役割が明確かつ分担されており、互いが補完しあいながら国策としての自然環境を守るという活動を戦略的に行っている。その点は、日本とドイツの環境活動の大きな相違であった。
 日本とドイツの歴史、文化的背景は異なるため、同じ手法を日本に導入することは難しいが、ドイツでの活動の好例をコンテンツとして、我々の活動に沿ったかたちに変換し、今後は活動団体の規模や活動の優先順位をにらみながら、今必要な人材とその役割について、俯瞰的にそして明確に見極め、それぞれが担う役割を明確化し遂行する基盤の整備を図っていけば、日本の環境NPOも力をつけていくと思う。
 でもだからといって環境国ドイツが100%すばらしい!という思いだけが残る10日間だったわけではなく、訪問先の方々の話からも、若い世代で自然環境に全く興味関心がないためその意識啓発に注力しているという話を聞いたり、連泊した付近のマインツ駅ではそこいら中がゴミだらけだったり、歩いていて普通に吸っていたタバコを路上に火がついたまま投げ捨てる姿を何回か見たからだ。
 今回この会を通じて出会った人たちすべてに通じるように、ドイツの環境活動に関わる人に勝るも劣らず強い強い信念とやりぬこうという意識をもつ仲間が連結したら、既に自然とともに生きるということをDNAとして持っている我々日本だって、十分に環境国として新たに名乗りを上げるだけのポテンシャルを持っているのではないかと思う。
 さいごに、今回お世話になったすべての人に感謝しています。何か形にしていこうと思う。
 一緒にがんばろう!!どうもありがとうございました。




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