1.訪問団体の活動やマネジメントなど、
どの部分を日本のボランテイアリーダーとして生かせるか。
私が今回の研修の中で、学びたいと思ったことは大きく2つであった。
①日本における持続可能な社会作りをしていくために行うべきアプローチや連携の仕方
社会作り・制度作りへとつなげるために団体としてどういう組織運営・資金調達・
人材育成・広報が必要であるか。
他の団体や行政との連携のありかた
②日本全体の市民の意識をあげるための環境教育の在り方
向かうべき方向性や教育システム、教育プログラムの在り方
運営するスタッフやボランテイアの育成
この研修を通して、上記の自身の課題とともにボランティアリーダーとして歩むべき方向性が見えてきた。
①アプローチや連携の仕方
(1)基本的姿勢
ドイツでは人間の苦い経験を生かして、環境保護の制度や活動の仕組みができている。日本においてもたくさんのNPOや市民団体が長年活動しているが、環境問題の現状を考えるとき、もっと団体が力をつけ、社会から信頼・発言権を得て、将来に向けて自然と人間が共生できる社会作りを進めなければならないと痛感している。そのためには各団体が長期的ビジョンを持ち、戦略的に活動することが必要である。専門的な知識やスタッフの養成も急務である。NABU・BUNDともにドイツでは会員数約46.7万人の会員がおり、政治的にも大きな影響力を持って活動している。このほかにも多くの市民が地域で自分たちの問題を解決する団体が数多くあり、制度的にも保護されている。行政任せにするのではなく何よりも「問題は自分たちで解決する」という基本的姿勢が全訪問先で感じられた。生き生きと自分のの足で行動している姿を見て、自分たちの生活に責任を持つ姿勢は日本にも求められるところである。
(2)組織運営
NABUやBUNDは、それぞれ自然環境保護と環境保護という点で活動内容、方向性が違っている。
NABUは自然を保護し、人間が共生していくための運動をしている。そのため多くの団体・企業・行政と連携を深めながら、プロジェクトを実行している。地域の声を拾い上げ、活動を援助する仕組みが作られ、地域・州・連邦それぞれも役目を持ちながら活動している。BUNDは経済発展の中で起きてきたエネルギー問題、原子力問題、遺伝子組み換え問題などさまざまな問題を解決するため、その問題に応じてさまざまな団体と協力しながら行動を起こしている。政策提言・抗議行動・訴訟など政治を変えるための活動を行うため政治的には中立である。小さな活動で社会は変えられないことを経験の中で学び、地域・州・連邦と組織を広げ、それぞれ、身近な活動から政府との折衝など目的に応じて活動をしている。
政権交代のたびに政策が変わることが多いドイツでは、大きな視点を持った団体が必要であり、NABUやBUNDはそれぞれ役割を持っていることが分かった。ただどちらにも共通して中期・長期のビジョンを持ちながら、戦略的に組織運営がおこなわれている。年間計画が前年度には出来上がり、告知されていることは団体の信頼性にもつながる。地域の小さな団体でも同じであった。このことは意識ややり方を変えることですぐ実行できることである。ぜひ日本でも意識して計画を立てたい。
地域・州・連邦と会員の声を吸い上げる仕組みつくりができていることは活動の原点である。さらに地域の一人ひとりが身近な問題から自発的に行動でき、協力・支援ができる仕組みは必要である。全団体で重要な位置を占めているのが広報であった。常に活動がどういう目的で行われているか運営スタッフで共有し、そのための広報をきちんとやること。広報は多くの人に知らせ、活動に参加してもらうために重要であると認識することーこのことが会員を増やす重要なチャンスである。そのために広報担当の専門スタッフを置いている。活動の中に常に広報—どう知らせていくか考えていくこと。メディアとのコンタクトを常に持ち、情報提供していくこと。これも意識すればできることである。できれば広報の専門性を持ったスタッフを持ちたい。
資金調達は日本の団体でも大きな悩みである。ドイツでは制度上団体を援助・支援する仕組みできており、公的な機関・行政からの資金援助が日本に比べると大きい。宝くじの益金や罰金から環境団体の活動支援に使われたり、遺産相続・香典返しといったものから環境団体への寄付が行われている。ドイツでは日常の中で市民の40〜50%が何らかの形で寄付を行っているそうである。これを計画的に環境活動に回してもらうために、多くの団体が専門のスタッフをおき、寄付を計画的にしてもらうための戦略を立てている。企業や個人、イベントなどあらゆる機会に寄付の場を考えていることに驚いた。中には誕生日のプレゼントの代わりに寄付をいう例もあり、今後日本でもいろいろな機会に応じて考えられるのではないだろうか。寄付に関しては「地域のことは地域で還元されることが効果がある」「あたらしい寄付の仕組みが必要」「根気強く説得していく・忍耐力」「マーケティング」という言葉が心に残った。
寄付については日本ではまだ一般には定着していないが、災害・スポーツ(熊本では熊本城本丸御殿築城のための一口城主—寄付の例がある)など、切り口を変えればいろいろ提案できるように思う。税制上有利になるような仕組みつくりも寄付を促す切り口である。ただ「一番大事なのは、人間的つながり」ということであった。礼状を出したり、招待したり、直接コンタクトをとるなど細やかな配慮が継続につながる。
会員数を増やすことも重要である。NABUやBUNDのように40万人を超える会員になれば数の力の大きさを痛感する。会員を増やす小さな積み重ねが大きな力となることをドイツの団体の会員の声から痛感した。
組織としてどう歩むべきか、共通して感じたことは、「社会を変える、仕組みを変えるような団体になりたい」ということであった。そのことで環境保護活動がさらに進めることにもなる。ドイツの支援する仕組みはぜひ日本でも実現すように、社会の仕組みを変えられるような団体になること・そのためには社会に信頼される計画性・説得力・専門性・行動力を持った団体になることである。活動が自分の暮らしと自然をよくすることにつながり、社会も暮らしやすいものになること。そのためには市民一人ひとりの自発的に取り組むことが大事であると思う。それぞれの団体のリーダーが大きな視点を持ってネットワークを広げながら、行動を起こしていくことー私の団体も地域の連携を今年の目標に活動しているが、日本の団体の連携を図るためまず地域から、私自身が行動を起こしていくつもりである、人材育成については、日本においては十分に機能するスタッフの数、処理能力を備えている団体は少ないように思う。影響力を高めるためにも専門性も必要である。ファンドレージングや広報活動など、1戦略的な人材育成が必要である。専門的研修ができる場、団体同士で互いに情報交換しあうような場を作っていきたい。
②環境教育の在り方
(1)基本的姿勢
ドイツでは「森のようちえん」や自然保護センターでの環境教育について研修したが、全体を通して感じたことは、人々の生活の中に自然愛護の心が根付いていることであった。市街地をちょっと離れると大きな森があり、ドイツをはじめヨーロッパでは、森と人々の暮らしが身近にある環境にある。現代では便利な生活を求め、人工的な暮らしも増えてきているようである。自然を守る活動はずっと自然のこととしてあったが、便利さを追い求めた暮らしが「父なる大地」ライン川を汚染し、いろいろこれではいけないという状態になるまできたそうである。この体験をドイツでは教訓として、「早い対処ほど有効ある」ということを身をもって体験している。NABUの州代表が「愛すれば守りたくなる」といわれたが、自然保護・環境保護の基盤は自然を愛する心・畏敬の念を持って自然と共生する姿勢が大切であると感じた。
自然に楽しみながら、活動している様子が伝わってきた。日本は狭い国土で自然とともに工夫しながら暮らしてきた。まだ日本人心の中、生活の中に残されていると思う。環境教育の原点は「自然を愛する心」-これを小さい時から学べる場所・仕組みが必要である。
(2)幼児教育—感性の教育
幼い時期に森と親しみ遊ぶことは、自然の仕組み、付き合い方を経験的に学ぶ。人が生活する上で必要な五感—感性の教育が必要である。その中でどう生きるべきかも学ぶ。環境教育は大きな意味での人間教育である。研修を通して特に感じたことは、支援する仕組みが整っていることである。「森のようちえん」は有志保護者が集まって作ったものであるが、資金面での優遇や管理面で行政の協力などがあり、日本の現状を考えるとうらやましいと感じた。これも市民が自分たちで活動しながら勝ち取ってきたものであると思う。日本でも各地でできているように聞いているが、ネットワークを図り、大きな制度ができていくように行動してみたいと思った。
(3)若者の環境教育「環境ボランテイア研修制度」
ドイツでのこの研修制度は国全体が人材育成・人間教育に力を入れていることが伝わってくる。日本でも環境に携わる若者が増えている。若い時期に自然に親しみ保護したり、その中で生活し、伝えることは大切なことである。ボランティアで働くことの意義も大きい。これを支える行政の仕組みや支 給されるお金、教育システムが整えられており自分の進路を決めるうえで意義のあるものとなった若 者も多いようである。州によって運営方法が違うが、環境NPOが加わっている州があり、受け入れ先として登録されている団体が多くある。日本ではすぐに大きな仕組みはつくれないかもしれないが、地域モデルとして試行的な形で検討できる余地はあると思う。いろいろな面から模索してみたい。さらに環境教育の大きな仕組み・システムを作っていくようにしたい。
(4)民間が運営する自然保護センター
自然保護センターは日本にも各地にあるが、市民団体が設立運営する保護センターの事例をいくつか訪問した。「生活と自然とのかかわり」をテーマに地形を活かしながら、採石場を昔の自然に戻し、コンパクトに人間と自然との共生について学べる場を作っているセンター、自然世界遺産を活かして環境教育プログラムを行っている民営のビジターセンター、地域にあるごく身近な自然保護を楽しく学べるセンター、ライン川の汚染の歴史的教訓から取り組んでいるものなど多種多様なセンターがある。環境という形で肩ひじ張らなくても自然な形で楽しめるセンターは日本でもできそうである。活動スタッフはボランティアでも本当に楽しそうで誇りを持って活動していることが印象的だあった。地域の特色を生かした民営のセンターも作りたいと考えている。
2.研修を通して、日本の環境ボランティアリーダーを支援するために、
どのような仕組みが考えられるか。
(1)全国規模での環境ボランティアのネットワークつくり
これはさまざまな分野ですでにあるかもしれないが、情報交換と連携という目的であることが多いように思う。今回の研修で訪問したNABUやBUNDでは、活動していくうえで自然保護や共生する社会をつくるために社会の仕組みを変える必要性を感じ、地域・州・連邦と政治の流れと同じ仕組みを作りあげて、自然保護の制度整備やや環境団体の活動を支える仕組みつくりを行ってきた。日本ではそこまでの力にはまだなりえていない。日本の環境問題や世界と解決しなければならない地球温暖化等の解決策を考えた場合、最終的には、現在の制度・社会のシステムを変える必要があるし、その転換期に来ていると思う。そのためにも社会的に影響力をもった環境団体が必要であるということを今回の研修で強く感じた。ネットワークをつくり、連携して社会的発言力を持って行動できるよう図ることが大切である。
(2)(1)の目的をもったネットワークが社会的信頼性を持つための
団体のレベルアップが必要である。
そのために組織運営、人材育成、資金調達、広報といったマネージメントを学べる場の創設を考えたい。
NABUやBUNDなど多くの団体はそれぞれの専門家を会員になってもらい、専門性も深めている。
研修制度も含めネットワークで協力しながら仕組みを作っていきたい。
3.全体を通しての感想
ドイツも基本的には日本と変わらないということがわかった。ライン川の汚染問題やチェルノブイリ原発事故などを通してドイツの環境活動が活発になった。その事実に早く気づき行動できるか。失敗を繰り返しながらも、対策をとりどういう社会を作ればよいかー市民が自発的に考え・行動する雰囲気・環境・仕組みつくりが大切であると感じている。自分の位置でできることから実行し日本の社会のシステムを変えていきたい。最後に
今回の研修では、セブン-イレブンみどりの基金創設の「大きな思い」を感じながら、細かいところまで考えられた研修を肌で感じ、活動を知り、自分たちは何をすべきかー移動中も討論しながら考えた10日間でした。愛すべき研修生の皆さんや担当の小野さん、通訳の鈴木さん、研修先のみなさんの温かいおもてなしーひとつひとつが大きな自然の中で、人の心を感じながら過ごせたことに感謝いたします。全国からみどりの基金に善意を寄せてくださった皆さん、セブン-イレブンみどりの基金のスタッフの皆さんに支えられて人生二度と味わえない研修を経験できましたことを心から感謝します。この研修を活かして、足もとから形にしていきたいと思います。 ダンケ シェーン