ラインランド・ファルツ州自然環境財団に訪問し、ヨハン・クレービュール氏(元NRW 州環境及び開発財団 環境担当官)から話を聞きました。
ここの予算は200万ユーロで独自事業として実施しています。財源はEUが50%、州が25%、自然環境財団が25%出資しています。また、市民団体には100万ユーロ提供し、事業を委託してます。このNGOへの事業委託は、景観保護の手入れだけのものから大規模のプロジェクトまで大小さまざまで、1000以上のプロジェクトに上ります。このNGOの選定はどうしているのかという点については
- NGOであることを証明できるかどうか
- 環境教育を知っているメンバーがそろっているかどうか
- 土地を買って持ち込んだトラスト活動団体
で規模に応じた組織が選ばれ、背景を吟味していくら出すかを検討し、期間は1年から3年にわたる長期までとしています。
二人の環境省担当官に質問をする研修生
例えば、州内にある森の中の標識がついたルートがありますが、この標識の維持管理に5年間委託して修理を任せている事業もあります。ただ、費用対効果は必ず考慮して、NGOの受け入れを考えています。また、大きなプロジェクトの選考については刷新的な事業かどうか、ほかの場所でも実施できる先駆的な案件かどうか、が大きな判断材料になるといいます。
基本財産の運用については、金利が5〜6%と高かった時代に運用した証券がもう直ぐ満期を迎えます。以前は15年とか、それ以上の長期運用をしていましたが、今は金利が0.8%まで落ち込む予想を立てており、金利が低い分、短期的な運用で様子を見るしかない状況です。
新規の事業も実施しています。何か新しい視点があるかどうかが検討材料になりますが、企業を巻き込んだ協働の事例も少なくありません。
例えば、暖房器具を開発した人が、石油を頼らないヒーターシステムの提案をしてきました。また、フォルクスワーゲン社がこの事業をサポートすることで、パイロットプロジェクトとして位置づけ始めました。最初は5000ユーロだったがこの事業は規模が大きくなりました。
依頼を受けて、できないことも多いのですが、新しい事業はできるだけ実施するようにしています。
従来より、自然保護のテーマについての事業展開をしてきましたが、時代とともに変わってきており、自然保護だけでは時代に後れていくという危機感を持っています。今後は再生可能エネルギーやエコロジー農業も入ってくるので、もっと幅広く展開していきたいそうです。
資金調達の難しさを語るヨハン・クレービュール氏
運営に関しての補助金は、2000年以前は国からだけでした。その後、ロビー活動により、勝ち取っていった経緯があります。州の宝くじの配分については、従来は福祉が中心だったのが、ロビー活動により、今は環境など5つの団体に平等に配分されています。環境分野の配分を確保していくためには、常に成果を示さなければなりません。
ここでのロビイストは米国のような登録制でもなく、実際の活動は、講演会や演説会が開催される時に一緒に顔を出して話をすることが多く、郡の会議にも顔を出します。また、政党からの代表を委員会に入れており、政治との結びつきを常に考えています。これも戦略のひとつと位置づけています。
今、牛を広める活動もしています。牛肉を売ることにより利益につなげています。また、馬を飼育し雑草を食べてもらったり、踏んでもらったりする事業も実施しています。これは特にマスコミ写りがいいのも特徴で、常に戦略を考えています。
自然の野原の活性化のための活動として、EUからも助成を受けて1億5千万ユーロの事業を行っています。EUの条件としては、50%は自主財源を確保することですが、NPOは財源がないからラインランド・ファルツ州自然保護財団が50%を引き受けている状況です。
学校の授業の一環で野外活動もしています。ドイツのナショナルジオグラフィックに掲載されている事業は、2週間の合宿で60人の参加者に対し、3人につき1人の付き添いをつけ、低所得者の子どもたちにも自然を見る目を開いたり、関心を持つきっかけづくりの一助として実施しています。
また、成人向けプログラムとしては、ブドウの段々畑のコンクリート垣を自然の石垣に変えることで、石の隙間に昆虫がすむようにするなど、生態系に大いによい影響を及ぼす自然再生事業を行っています。
(吉田 浩巳) |