セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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活動のご紹介

環境ボランティアリーダー海外研修

2011年(平成23年)第14回環境ボランティアリーダー海外研修レポート

海外研修レポート 感想 九重ふるさと自然学校
川野 智美 さん

1.  訪問団体の活動やマネジメントなど、どの部分を日本のボランティアリーダーとして生かせるか。

今回の研修では、ドイツの2大自然保護団体の事例を学び、様々な取組みを知ることが出来た。この2つの組織のうち、 NABU(ドイツ自然保護連盟) の具体的な活動事例を紹介し、その中で日本のボランティアリーダーが生かせる部分、持つべき視点を紹介したい。

■NABU(ドイツ自然保護連盟)の基本情報

1899年に設立されたドイツで最も古い自然保護団体。創始者は女性で、当時農薬や化学薬品によって自然環境が汚染された事に対して、より多くの人たちによる大きな団体が社会に影響を与えられると、反対運動のために団体を作ったのが始まりである。現在会員はドイツに45万人、連邦協会を本部として、16の州支部があり、その下に2000もの郡や地方自治体ごとの支部に分かれていて、その中には子どもの組織も含まれている。会の理事や支部長はその下位組織の代表たちによって選挙で決められている。会員の中には、色々な政治団体(緑の党など)の政治家が個人会員なっている。NABUは政治とは中立の立場で、経済的な援助は受けておらず、独立して活動している。 またドイツでは公共工事などのプロジェクトが決まると新聞公開するとともに、州が認定した環境保護団体に対して公聴会を開くことが法律で定められており、NABUも認定を受けていて、意見が認められない場合訴訟を起こす権利がある。
事業としては自然環境保全活動と、保護目的の為の土地買い上げ、政治家へのロビー活動、環境教育活動などがあり、会員のうちの10%は、積極的にボランティアとして活動しており、90%は会費や寄付によってNABU活動を支援している会員である。

■具体的な活動事例

コウモリの保護活動
ラインランドファルツ州にある、コウモリの大生息場所であった場所が採石場として開発される計画が上がり、NABUは絶滅の危機にあるコウモリの保護のため、その場所を買い取った。さらに州はコウモリ保護のためのキャンペーンを行って、
1, 人家に棲むコウモリについて以下の項目についてチラシによる情報収集をし、コウモリに配慮している家を表彰し、自然保護に貢献しているという趣旨のステッカーを各家庭の玄関先のあたりに設置した。
チラシの内容 ☆以下のどれかにチェック

  • コウモリの棲める場所にしたいか。
  • すでに棲んでいるのでアドバイスが欲しい
  • コウモリに配慮された家だと、認識している場所

【学ぶべきアイデア】

  • コウモリに関心なかった人にコウモリの現状や保護活動内容周知を行う。自宅で出来る保護活動を可視化(感謝状や玄関先のステッカー)することで社会貢献しているという自尊が芽生える。
    【キーワード】顧客満足、ファン作り、感謝
  • コウモリに関する情報収集をすることで、どれくらいの人がコウモリに関心をもっているのか、どんな情報を得たいと思っているのかなど、マーケティングを行なう。保護活動に関わる人の裾野を広げたり、会員勧誘につなげたりすることを目的としている。
    【キーワード】マーケティング、分析

2, 州のコウモリキャンペーンを受け、ラインナウアー自然保護センター(ビンゲン地域のNABUの活動拠点)では、コウモリのインフォメーションカフェを計画(年5回、毎回1週間程度開催。1日あたり30~100名が参加。参加者は会員・地域の方など・学校)。コウモリウィークとして、1週間はコウモリに関する展示を行う。さらに会員から募ったボランティアが、専門家からレクチャーを受け、インフォメーションカフェの際にコウモリの専門家として来場者に対応したり、ケーキやお茶のサービスをする。

【学ぶべきアイデア】

  • ボランティアに専門的なレクチャーを行ない、知的好奇心を満たすとともに活躍の場所を提供する。ボランティアに任せることにより、スタッフは別の業務をすることが出来る。
    【キーワード】協働、パートナーシップ、顧客満足

カエルの保護保全活動
ラオプフロッシュというカエルの保護活動のためにラインナウワー自然保護センターではビオトープを管理しているが、その管理について洗剤メーカーのフロッシュ(カエルマークの家庭用洗剤で有名)が支援を行っている。NABUでは、カエル保護に関するあらゆるパンフレットや、チラシ、ポスターにフロッシュのキャラクターを載せて、支援を受けていることをPRしている。またビオトープに、フロッシュの社長を招き、マスコミを使ってプロモーションを行った。

【学ぶべきアイデア】

  • 企業の社会貢献をアイデアを駆使してアピールし、感謝するとともに、企業の高感度アップにつなげる
    【キーワード】パートナーシップ、クリエイティブなアイデア、顧客満足、ファン作り
■広報について(NABUラインヘッセン州支部事務局広報担当官ミシャルスキー氏より)

  • ネットワークを広げ、広報の切り口を見出していく。
  • 新聞は広報に有効なので活用する。その際に新聞社が記事として取り上げやすいように、簡潔で重要な点を残さず盛り込んだ記事をこちら書いて渡したり、写真を一緒に送るなどの配慮をする。
  • 記事は上からモノをいうような口調ではなく、読者が見たことのあるような共感を呼びおこすような文章にする。
  • 例えば報告書冊子のスポンサーになってもらいたい場合、対象は誰で、1冊あたり何人が読み、何部刷ることで、何人が目を通すのかを示して、企業に分かりやすく効果を伝える。
  • ボランティアが写っている写真をピックアップするようにして、ボランティアに喜んでもらう。
  • 微笑ましい写真や美しい写真のほうが取り上げてもらいやすい。
【キーワード】感動、相手目線、コミュニケーション、クリエイティブなアイデア、顧客満足、マーケティング、数値化

2.  日本の環境ボランティアリーダーを支援するために、どんな仕組みが考えられるか

 環境保全や環境調査活動は一過性のイベントでなく、息の長い活動でなければならない。そのためボランティア団体が組織として継続していくために以下のことに留意し、周りとつながりあって、活動の幅を広げ、社会を変える存在にならなければいけない。

■計画性のある活動

中長期計画をしっかりと立てるうえで、自分たちのミッションや、顧客が誰なのかを明確にする必要がある。そのためには周りにどんなニーズがあって、そのニーズがどのような種類のものなのかをマーケティングする。その結果は数値化し、客観的なデータとして分析するとともに、関係者が納得できる説明材料として、わかりやすく可視化することが重要である。

■組織力の強化

組織力の強化とは自分たちの団体のことだけでなく、自分たちの活動に関わる全てのヒト、モノ、そして直接的ではないが潜在的につながっている相手も含めて、そのつながりを強化することである。つながりを強化することで自分たちの活動が広がり、より深い活動になる。そしてつながるために必要になってくるのは、手法やロジックではなく、思いやりを持ち、相手の立場を理解しあえる信頼関係を結ぶことである。

■資金調達

寄付を募る場合、何を目的とした寄付なのか、 今回の寄付者に対する対価(お金ではなく) を明確にする必要がある。また寄付者のデータバンクを作り、寄付の頻度や1回の金額、寄付の回数を軸にしてデータ分析すると寄付者のターゲットを絞り込むことが出来、よりコスト意識を持ち、効率的に効果的に寄付を集めることができる。またクリスマスなどに寄付を呼びかける効果的なタイミングや、誕生日や記念日の記念寄付などユニークな切り口ものがあるので、日本のNPOにもこのような手法、感覚をもって、団体を運営していくことが必要である。その普及のためには、先ほどの組織力につながるのだが、市場調査などネットワークを利用して一つの団体では出来ない部分を補ったり、お互いの成功事例などを共有しあえるつながりを持つことが必要だと感じる。

■環境と経済のバランス

この題目に対してまだ自分が提案できる答えを導くことが出来ない。地元の自然環境の保全と経済の活性について思考錯誤しながら今後取り組んでいきたい。里山・里地の環境維持活動が経済活動と調和し、環境に配慮した持続可能な農業酪農業が生業として成立する魅力的な地域の仕組みを生み出していきたい。

3.  全体を通じての感想

 ドイツでは、連邦政府が決定した政策を受け、各州が政策を決めていくというしくみの背景に、連邦の国会議員と州知事および州議員が対等な立場で合意形成が取られるという、地域を重視した政策があった。また自然保護団体の組織も連邦協会を本部として、州支部、郡や地方自治体ごとの支部に分かれていて、理事や支部長はその下位組織の代表たちによって選挙で決められている。政府も自然保護団体も地域の声が中央にしっかりと届く仕組みがあり、その根底にあるのが、民主主義なのだと感じることができた。さらに「森のようちえん」でも、自分たちのことは先生に頼らずに自分たちで投票して決めるルールがあり、小さな頃から民主主義の精神が養われていることが分かった。そしてほとんどの研修先で「自由意思」がキーワードとして出てきた。環境保全活動も政策も誰かに言われてするのではなく、信念をもって自分に責任をもって実行していく。これは別の見方をすれば自分を尊重することで自己肯定が出来、自分の周りの人や自然環境に対して愛情の醸成につながっているのではないだろうか。例えばドイツの教会には入場料はない。その代わりに教会の修繕などに必要な寄付を教会内の至るところで募っている。自らが自由意志のもと寄付をすることで、教会に対する愛情がうまれるのである。ドイツの人たちの根底にある「民主主義」と「自由意志」の精神が、今のドイツの社会、自然環境保護活動に映し出されているのだと感じた。
今回の研修ではハードなタイムスケジュールの中で、環境ボランティアリーダー研修に没頭し、素晴らしい仲間と議論を重ね、事務局の千本ノックを受けながら自分なりの答えと課題を持ち帰ることが出来たと感じています。この研修に関わって頂いた全ての方に感謝します。感動をありがとうございました。またドイツで学ぶことで、日本の自然環境や地域の魅力を再発見することができたと感じています。次は現場で実行するのみです。成果が出せるよう一つ一つステップを重ねながら、環境ボランティアリーダーとして、多くの人とつながりながら感動を共有していきたいです。




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