その下部には、今年4月にオープンした遊歩道「渦の道」があります。渦の道から海面までは45m、眼下に迫力ある渦潮を見ることができます。この日は平日でしたが、大きな渦ができる大潮の日とあって、たくさんの観光客が訪れていました。実際に渦の道を歩いてみると、なかなかスリルがあります。とくに床がガラスになっている部分にはみんな尻込み。強化ガラスでできていますから、2人や3人の人間の体重くらいでは、ビクともしないのですが、それでも上に立つ人はなかなかいません。こわごわ覗くと、そこには鳴門の大渦。まるで海上を飛んでいるかのように錯覚をしてしまいます。渦をよく観察すると、いくつもの渦があるのがわかります。大きなものから小さなものまで、潮の流れの音もすさまじく、形はまさに千変万化。生まれては消え、消えてはまた渦巻くといったぐあいです。はじめはこわごわ覗いていたものの、しばらくするとそのダイナミックさに見とれて時のたつのを忘れてしまったほどです。
すっかり渦潮に魅せられてしまい、その後、観潮船や水中観測船に乗り、さらに渦と大鳴門橋を一望できる「千畳敷展望台」や、東洋一のエスカレーター「エスカヒル鳴門」でいく「鳴門山展望台」などで鳴門の渦を堪能しました。
さて、上から下から渦のさまざまな姿を見ているうちに、やはり、「どうして渦ができるの?」という疑問がわいてきました。ちょっとこれを調べてみましょう。
渦はなぜおこる? 鳴門の渦はいつでも巻いているわけではありません。先ほど「大きな渦ができる大潮の日」と書きましたが、大きな渦ができる日とそうでもない日があります。また、時間帯によっても渦ができる時刻とできない時刻があるのです。これは約6時間おきにやってくるようです。こういった事実を手がかりにして、鳴門の渦ができる要因を解明していきましょう。
第一の要因として先述の大潮があります。大潮とは潮の満ち引きが最も大きくなる状態をいいます。地球を挟んで太陽と月が反対側にくる満月の時や、地球と太陽との間に月がくる新月の時がそうです。太陽と月と地球の配置が一直線になると、ふだんより強い重力によって海の水が大きく引き寄せられます。これが大潮の発生する仕組みです。これによって、干潮と満潮の差が大きくなり、渦潮を起こすエネルギーとなるわけです。
第二の要因は1.3kmという鳴門海峡の狭さにあります。鳴門海峡を挟んで、右の太平洋側と左の瀬戸内海側では、潮の満ち引きによって潮位の差ができます。当然、高い方から低い方へと水が流れだし、それが狭い鳴門海峡に殺到するわけです。流速は速いときで時速20kmほどだといいます。この流れが渦を生むパワーとなります。流れの速い水と遅い水とがぶつかり合いその流速の差から渦を巻くわけです。このように起こる渦は「カルマン渦」と呼ばれています。
また、渦潮を発生させるもう一つ要因に、長年の潮の流れによってできあがった複雑な海底面の地形があげられます。この地形によって、干満の差がさほどない時期でも、複雑な渦が生み出されるわけです。
さて、このような渦は、鳴門だけにできるのでしょうか?
フランスのランス川の河口のサンマロでは、干満の差が13.5mにも及んでおり、直径2mほどの渦が見られます。サンマロでは干満の差を利用して、潮汐発電も行われています。
ノルウェーのサルトストラウメンには、長さ3km、幅150mの海峡があり、最大時速36kmという世界最速の潮流により、直径10kmもの渦潮が発生しています。
このほかにもイタリア半島とシシリー島の間のメッシーナ海峡や北米西岸のバンクーバー島東側のセーモア海峡などで、渦潮が発生しますが、直径20mを超すものはなかなかありません。鳴門の渦潮は、世界でも最大級といっていいでしょう。
このように世界に誇る不思議でダイナミック、そして美しい鳴門の渦を、私たちはいつまでも大切にしていきたいものです。
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