海はつながっている
去る9月24日。秋風がすがすがしい宮島で、子どもたちがごみ拾い活動を通して瀬戸内海の環境について考える活動(宇宙船地球号の会主催)に参加しました。 午後からは、参加者約50名で包が浦(つつみがうら)海岸を清掃しました。プラスチック類を中心にありとあらゆるごみが集まりました。瀬戸内海地域では、他とはちょっと違ったごみがあります。発砲スチロールやプラスチックの長細い管です。これは、広島県特産のカキの養殖に使われるもので、何かの拍子にはずれたものが大量に打ち寄せられるのです。これらは、他のプラスチック類と同様、魚や鳥が飲み込んで窒息死する原因となります。宮島包々浦自然公園副所長の呼坂達夫先生のお話によると、沿岸に打ち寄せられたごみは、浮くものだけなので、沈んでしまうごみについて考えるともっとたくさんのごみがあるだろうということでした。例えば、アルミ缶などは、水が入ると沈み、海水にさらされて塩化アルミニウムという有害な物質に変化してしまうそうです。
うれしいことに、このボランティア団体の長年の活動が実り、清掃活動によって回収したパイプは地元の漁業組合が引き取って再利用することになりました。また、海に流されてしまわないような浮きに替えたり、清掃活動を行ったりする動きも新しく出てきているそうです。 海のごみは、誰かが処分しない限りなくなることはありません。最近、日本のごみは、潮の流れにのって遥か太平洋の真中にあるミッドウェー島にまで流れ着いていることが分かっています。私たち日本人のごみ問題は、国境を越えて問題となっているのです。
私たちが未来に伝えていくこと
「ボランティア活動でできることは限られていますが、小さなことから積み重ね、かかわった人たちの気持ちや意識が変わっていくことが一番大きいと思います」。今回活動に参加させていただいた、宇宙船地球号の会の代表竹本伸さんはこう語りました。 瀬戸内海の生き物は、約1万年前の太古の昔と、今とが確実につながっていることを教えてくれます。 一度破壊された自然は、なかなか簡単には戻りません。私たち人が一体どうすればいいのか考えたとき、地道に一歩一歩たゆまない努力していくことが一番の近道なのかもしれません。自らの存在をもって地球のダイナミックな歴史を語るスナメリやナメクジウオ。私たちは、これから未来の世代に対し、どんな人と自然の歴史を残していくのでしょうか。もう二度と会うことのできない剥製や写真の生き物たちを増やすのではなく、今、存在する生き物たちとの共生の歴史を残していきたいものですね。 自分のため、みんなのため、そして次世代の地球の未来のためにできることは何か、一緒に考えてみませんか。
閉鎖性海域 |
周囲に陸を囲まれた海のことを指します。こういった地域は自然が豊かで気候も温暖なことが多く、人が暮らしやすい場所となっています。また、構造上、海水の流れが緩いことからしばしば海洋汚染が問題となっています。日本では東京湾や大阪湾など88の内海・内湾が指定され、排水規制などが行われています。
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護岸工事 |
海岸において、波による地盤の侵食を防いだり、河川において、水の流れによる堤防の決壊を防ぐために石やコンクリートブロックによって水の勢いを押えること。
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スナメリクジラ |
イルカの一種。体長約1.5メートル。ペルシャ湾やインド洋、アジア地域に分布しています。
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ナメクジウオ |
広島県竹原市と愛知県蒲郡市大島において国の天然記念物に指定されている。体長4〜5センチ。体全体は薄いピンク色だが、表皮は無色透明で、内臓などが透けて見える。砂地にすみ、海水の中に含まれる植物性プランクトンなどをエサとしています。海外では、インド洋や西太平洋の暖水域、東シナ海沿岸などに分布している。
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宇宙船地球号の会のみなさん |
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倉敷市立自然史博物館 |
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広島県環境生活部環境局環境創造総室環境調整室 柳瀬幸成 |
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三原市教育委員会社会教育課学芸員 時元省二 |
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宮島水族館 |
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宮島包々浦自然公園副所長 呼坂達夫 |
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倉敷市立自然史博物館 |
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(財)国立公園協会 |
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三原市教育委員会 |
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宮島水族館 |
お勧めサイト 環瀬戸内海地域自然史系博物館ネットワーク推進協議会 瀬戸内海地域の自然史博物館のホームページがまとめられています。 生物の分布図などが分かる「環瀬戸内いきものマップ」など調査に便利なサイトもあります。
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