ドイツの環境NPOの活動地での研修
前回に引き続き、ドイツのNPOのファンドレイジングについてお伝えします。
ドイツでは1990年代に連邦や州政府の財政悪化などによって、NPO自身が財源を確保していく必要性が出てきました。現在ではドイツ国民の約40%が何らかの形で寄付をし、一人当たり年間100ユーロ(日本円にして13,000円ほど)を寄付しているそうです。また、遺産をNPOに寄付するという遺贈も増えてきているそうです。
今回はそんなドイツで出会ったおもしろい、日本ではちょっとないなと感じた事例を紹介します。
NPOの寄付開拓の組織体制
今回の私たちの研修では、ドイツの2大環境NPOといわれるNABUとBUNDに訪問しました。二つの団体に共通していたのは、驚いたことにファンドレイジングに関する専門部署があることやその業務を一部外注している、ということでした。団体内に寄付獲得のための専門部署があり、それだけではなく、専門の会社に会員獲得のマーケティングや戸別訪問を委託するという事例もありました。
専門部署の設置、外注の他には団体の学生会員にアルバイトで戸別訪問を実施しているところもありました。これは見知らぬ人に直接アタックしていく戸別訪問だからこそ、フレッシュな印象を与えることのできる大学生を雇用しているということでした。また夏休みなどの時期を利用して短期間で雇用できるというメリットがあるそうです。
ドイツの若者
しかし、大学生が戸別訪問をして寄付金を獲得するという仕事がすぐにはできないのでは?と思い、どうやって学生を研修しているのかを聞いてみました。すると、NABUやBUNDの会員である学生は、自分たちの団体をよく理解しているので、団体の説明はバッチリ。そしてコミュニケーション面の研修は、職員が一緒に訪問しながらOJTで習得していくということでした。
一般企業では、このように業務を外注することは当たり前だと思います。しかし、NPOで会員募集営業を外注している団体に、私は今まで出会ったことがありませんでした。このドイツの事例には非常に驚きました。
自分たち団体の目的を達成するために必要な資金調達の業務は、責任を持って遂行していくために専門部署を設けることや、むしろ効果が高ければ外注してしまうというのも一つの考え方だと思いました。
支援者管理の取組み
驚いたことのもう一つに、「データベースファンドレイジング」があります。これまで団体が寄付をいただいた方のデータベースを作成し、今後の広報戦略を立てるのに役立てることです。寄付者の記録をとり、データベース化し、分析し、それを基に計画を立てて行う資金調達の手法です。
データとは、寄付者の名前、連絡先、寄付額、寄付をいただいた日、寄付に向けてどんなアプローチをしたか、御礼の手紙をいつ送ったか・・・など。このような項目を寄付がある度に、寄付者を訪問したり、手紙を送ったりした毎に、コツコツと記録していきます。それをデータベース化し、分析することで次の広報戦略に使います。例えば、寄付のお願いに行くときには、ある一定期間寄付のなかった人はデータから消し、一番最近寄付してくれた人に行くこと。高額寄付者や小額でも寄付回数が多い人にお願いに行くことなど。これまでの寄付の様子からより効果的であり、効率的な営業をしていくのです。
ファンドレイジングについてこのような発見をし、私のドイツ研修は修了しました。自分の団体に帰ってきて、ファンドレイジングの専門部署を置くことや、データベースファンドレイジングの仕組みを作るまではまだできていません。しかし、その後実施したイベントでこれまでとは少し言い方を変えて寄付金のお願いをしてみました。「このイベントを実施するのに○○円ほど経費がかかっているので、次回の資金にしたいので寄付をお願いします。」というように、寄付をしてくださる方が、自分のお金がどう役立てられているかを実感できるようにしてみました。結果は、いつもの約2倍近くの寄付金をいただくことができました。自分たちがいただいたお金について、使途を明確にすること、寄付者にとって分かりやすいことはすごく大事なことであると実感をしました。
私たちが訪問したドイツの環境NPOでは、お金を集めるということに対してすごく真摯な態度でした。顧客、自分たちの活動を応援してくれる人のことを大切にしようと思う気持ちが基本であり、紹介した事例は、その気持ちをカタチにするために組織内で仕組み化されたものです。
私たちは日本の社会や活動するそれぞれの地域、それぞれの組織に合うカタチを考え、見い出し、実践していくことからはじめていく必要があります。ドイツで見たのは、支援者の思いに応える戦略的なファンドレイジングでした。
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