研修を通して一番の学びだった“広報”
今回の研修の中で私にとって一番の学びだったこと、それは“広報”のことであった。「えっ? それって当たり前のことなんじゃない?」と思われるかもしれない。しかし、私の団体をはじめ、その当たり前のことをなかなかできていない団体も多いのではないだろうか。「マンパワーが足りない」「広報よりも活動が大事」「そんなに書くことないし」「会員への会報のみ」・・・。そんな声が聞こえてきそうだ。しかしそれでは本当に「もったいないんだっ!!」ということを痛感させられた。
活動に共感し、参加や支援する人を増やすために広報する
そもそも、NPOにとっての広報の重要性とは何だろう。何のために、誰に、何を、いつ、どうやって広報するのか。それにはどんな狙いがあるのか。そこをしっかりと考えて広報計画を立てる必要がある。その点については日本のNPOもある程度は考えて実行しているのではないかと思う。たとえば、定期的に発行している会報などがそれにあたる。
会報には会員向けに発行しているものと、非会員向けに発行しているもの、また企業や行政などに向けて発行しているものなど、さまざまあるかもしれない。もちろん、対象に合わせて紙面構成を行い、内容や表現も異なるものとなる。その会報を読んだ人が団体の活動のことをよく知り、活動に共感し、活動に参加や支援してくれるようになることを願い発行している場合が多い。その狙いを達成するためには、ただ単に活動報告やお知らせ、イベント情報を掲載するだけでなく、どうやったら活動に参加できるのか、どんな支援を求めているのかなどを、記しておかなければならない。
マスメディアを存分に活用する
さて、そういったいわゆる自分たちが持っているメディアを活用した広報以外にも、私たちにできる広報活動がある。そのひとつが「マスメディアの活用」だ。マスメディアといっても形態はさまざまだ。テレビ、新聞、ラジオ、インターネットニュースなど、その地域ごとに複数のメディアがあるに違いない。会の活動やイベント情報などを取り上げてもらうことで、一度に多くの人たちに広報することが可能となる。
日本のNPOもマスメディアの活用はしているはずだ。しかし、ドイツのNPOはそれ以上にマスメディアを活用していた。研修の中で聞いた例を以下に掲げてみる。
- 理事長が記者会見を行う。
(主に活動内容を広報するが、議会で特に重要な話題があったときにその解説をしたり、時には問題提起を行うこともある。)
- 自然保護活動やその他イベントを行う際にメディアを招待する。
(活動やイベントを知らせる事前告知記事を掲載してもらうだけでなく、当日の様子を取材してもらい紙面に取り上げてもらえるように働きかけている。)
- 当日取材に来てもらえなければ、自分たちで記事原稿を書く。
(招待しても当日来てもらえないこともある。そのときは自分たちで記事用の原稿を書き、写真データを添えて新聞社へ送付する。現にそうやって記事になっているものもあった。)
- 新聞社に要請を受けて記事を書く場合もある。
(特定のテーマや話題について執筆する場合もある。これもマスメディアを活用した広報としては効果が大きい。)
とにかく何でも広報する
私の会も、イベントをする時などは新聞社にプレスリリース資料を送付し、事前告知記事として取り上げてもらったこともある。また、当日の様子を取材してもらい翌日以降の紙面に記事として取り上げられたことも何度かある。しかしそんな私でも、「自分たちで記事原稿を書く」という話には驚かされた。当日取材に来てもらえなかったときは、「残念だなあ」というくらいにしか思っていなかった。これについては私もまずは自分の会で真似ていこうと思う。
ドイツのNPOの広報の状況を聞いていて感じたことは、あちらでは「とにかく何でも広報している」ということだ。定期的な記者会見、ことあるごとに行うプレスリリース。そういった努力をしながら、自分たちの活動について周知していることがとてもよくわかった。
ちなみに私たちのように他国からの視察や研修受け入れなども、ホームページや会報などでは広報しているそうだ。それによって会員などの支援者が、自分たちの会費や寄付がどのように使われているのかを知る材料となるからだ。本当に、「とにかく何でも」というのがよくわかる。日々の出来事のすべてが広報すべきネタなのである。
マスメディアのさらなる活用に向けて
私はドイツ研修から帰国してすぐに、地元三条市を中心に発行されている世帯購読率の高い地元紙の記者に、「活動やイベント当日に取材に来ていただけなかったとき、こちらで原稿を書いて写真と一緒に送らせてもらっていいですか?」とたずねてみた。その記者は少し驚いた様子も見せたが「ああ、いいですよ」とおっしゃっていた。実際に記事になるかはわからないが、継続的にそうやってプレスリリースしていくことも、重要な広報活動のひとつのように思う。
これまではプレスリリースというと、活動やイベントの事前告知記事掲載のお願いがほとんどだった。しかし今後はそれだけではなく、活動やイベントの報告、当日の招待状の送付、会のパンフレットやリーフレットの送付などもきちんと行っていきたいと思う。メディアの記者の方たちとの親睦を深めていくことも重要であろう。
地域の環境ボランティアリーダーとして
早速自分の会の案内リーフレットの改訂に向けて動き始めた。団体概要はもちろんのこと、これまでの活動実績やこれから目指していくこと、会が考えている目標などを追加したほか、会員募集や寄付募集についての情報も新たに入れ込んだ形で制作している。こういったことを、地域の他の環境NPOにも提案をしていきたいと思う。自分たちで制作できない団体については、私が制作を代行しても構わない。
他にも、メディア各社へのプレスリリースを、私が他のNPOの情報もとりまとめた上でまとめて行うようにしていきたいと考えている。さまざまな団体の活動情報やイベント情報がまとまっていたほうが、メディア側も取り上げやすいのではないかと思うし、それを見た一般市民も情報が多いことはうれしいはずだ。
もうひとつ考えているのが、地域にいくつかある環境NPOの情報をまとめて発行する「環境NPOマガジン」だ。NPOの活動内容やイベント情報、イベントレポート、会員・寄付募集情報などを中心に構成し、広く市民向けに配布をしていきたい。
またドイツにならって、NPOに半期分くらいの活動・イベント計画を立ててもらい、それらを複数団体分まとめて編集し、私の地域の「環境活動スケジュール」として発行していきたいとも考えている。
こうして、地域で活動しているNPOの情報を取りまとめ効果的に発信していくことも、私たち環境ボランティアリーダーができることのひとつの形なのではないか。ドイツ滞在中からずっとそんなことを考えていた。
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