私たちは2010年10月に10日間の日程でドイツを訪れました。本を読んだり、映像を見たりして勉強することとは違って、現地に直接行くという研修の醍醐味は、現地で活動している人を自分の目や耳で、そして肌で感じられることだと思います。そこで今回のコラムは、私たちが出会ったドイツの環境NPOに関わる人々について紹介しようと思います。
ドイツの行政マン
ヘッセン州環境省にて
研修初日に訪れたのは、ヘッセン州環境省です。州の環境省と聞いてイメージしていたのは、日本でいう各都道府県庁の環境課。ヘッセン州環境省では2人の職員の方に、ドイツの環境政策というテーマで、二酸化炭素やエネルギー量の削減目標の設定、市民にその結果をどう伝えているかについてお話を聞きました。二酸化炭素をどれだけ削減したかということを伝える例として「○○湖の水何杯分を削減した」といったイメージしやすい例を提示してくれます。しかも、○○湖というのはその地域にあるみんなが知っている湖です。
私たちにも分かりやすいように熱心に伝えてもらったお話の中で、伝えようとする強い気持ちを感じました。お2人の職員の方がいかに情熱を持ち、真摯にその地域をよくするというミッションに向かってお仕事をしているかが伝わってきました。1人の方は、エネルギー分野の博士課程を取得されているそうです。いかにその地域に愛着を持っているか、そして自分の専門性を持ち、グローバルな視点で物事を考えながらも、しっかり自分の地域のことを見つめている姿が印象的でした。
地域のことを愛してやまないNPO活動家
訪問したNPOで活動する人は、日本人と同じく地域に対する強い気持ちと活動している分野についての情熱を感じました。それは世界共通なのだと思います。
NABUの地域支部で長年自然保護活動を行っているご年配の方々にお会いしました。その方々は、自分の住む地域の植生の調査や整備の活動をしています。驚くことにもう30年も継続的にその活動を行っているようです。その日のスタッフは年配の方が多く、若い人は参加していないようでした。「若い方は参加しないのですか?」と聞くと、「若い人は今、仕事や家庭を大事にしたらいいと思う。これは私たちの役割」との答えが返ってきました。若いときには仕事や家庭を大切にし、少し時間にゆとりが出てきた自分の役割をしっかり感じ、継続的に活動をしている姿がとても印象的でした。
また、森のようちえんの活動をするために、他の地域から移り住んで住人となり、森のようちえんの先生として活動する女性にもお会いしましたそこまで覚悟を決め、情熱を注いでいる姿が印象的でした。
自分の道を見つけようとする若者とそれを応援する大人
植物園の環境ボランティア研修生
ドイツには、環境ボランティア研修制度という16歳から26歳の若者が1年間、環境に関するNPOや行政機関、研究機関で研修を受けられる制度があります。私たちがお話を聞いた研修生は、高校を卒業し、これから大学に進学予定という女の子でした。彼女は研修先の植物園で、研究や来場者の案内をしています。私たちも彼女に案内してもらいましたが、植物の生態などについて大人顔負けの案内をしてくれました。私は自分と同世代の彼女が、自信満々に社会の中で活躍する姿に驚きました。
ドイツの環境ボランティア研修制度では、1年間の生活費は国から補助を受けることができます。生活費の心配をせずに安心して研修に参加できる環境が、国によって整えられていることも大切なことだと思いました。
研修担当の先生
そして、その研修生を支える大きな存在にも出会いました。研修受け入れ先の植物園の先生です。先生は、これまで何度も研修生の担当し、研修生との関係も良好な印象を受けました。先生に「若者の人材育成に必要なことはなんですか?」と尋ねると、「ポジティブシンキング」と「継続性」とはっきりと答えてくれました。何か研修中にトラブルがあった時もネガティブに考えるのではなく、前向きな気持ちで取り組むこと、そして諦めず継続的に気長な気持ちで研修生の可能性を信じ接することという意味だと思います。はっきりとそう言った先生の姿が印象的でした。
街のいたるところで感じるドイツ
それ以外にも、街ですれ違う人でも目が合うとニコッと微笑み返してくれることや、お店の店員さんの過度でない「僕の店にようこそ、こんにちは」くらいの接客姿勢に、日本とはまた違った味わいを感じました。
このように私たちの出会ったドイツの方は、みんなこだわりを持って生きているように感じました。それは、志といってもいいかもしれません。訪れるまでドイツ人は、「堅いパンを食べていて無表情な人」とどこかで想像していました。実際に訪れるとそんなことは全くなく、素敵な人が多い国でした。そんな人柄に出会い、日本に帰るころにはまた訪れたい国だなと強く思うようになり、もう少しいたかったという気持ちで帰国しました。
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