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ファンドレージング・アカ デミーのクローディアさん (写真提供:小野さん)
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5ヶ月に渡って書かせていただいた連載も、今回でいよいよ最終回である。最後に、今回の研修で私が一番学びたかったファンドレージング(資金調達)について書きたい。「NPO(非営利団体)は利益が目的ではないから、お金のことを考える機会は、あまりないのでは?」と思われる方もおられるかもしれないが、団体の目的を達成し質の高い安定した活動をしていくため、資金調達は欠かせないものである。私自身、有給スタッフが3〜4名の団体で働いていた時、朝から晩まで頭にあ ったのは「どうやって活動資金を集めるか」ということであった。
今回訪問したファンドレージング・アカデミーは、①キリスト教系のプレス、②ドイツファンドレージング協会、③ドイツ寄付委員会という3つの機関によって1999年に設立された非営利目的の企業である。2年間のコースと、1〜2日の短期コースがあるそうだが、2年間という長期間に渡って学べるのはドイツでもここだけだそうだ。2年間コースの場合、学校で学ぶのは28日間(7日間×4セッション)のみで、あとは通信制。参加資格はNPOで積極的に活動している人。参加者同士の活動分野が重ならないよう配慮もされている。他の分野でファンドレージングに関わる人であるので、お互いから学び合え、ネットワークも広がる。また、コースが終わったあとも、学んだことを自分の団体で発展させていくために、相談できる仕組みになっている。「学ぶことは時間がかかるし、組織改革も必要です。理論を学ぶということではなく、実際にどのように変えていくのか、実践していくのか。そういった力をつけることを目的としています」と、ファンドレージング・アカデミーのクローディアさん。2年間に渡って学びながら、自分の団体で実践していくという仕組みに、なるほどと納得する。
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熱心に講義を聴く研修生 (写真提供:小野さん)
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ドイツ地域における寄付額の違い (写真提供:阪本)
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寄付したいかどうかの調査結果 (写真提供:阪本)
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ファンドレージング・アカデミーで講義を受けたのは、ほんの数時間だったが、貴重な情報が盛りだくさんであった。データの多くは「ドイツ環境街道をゆく」で書かれている内容と重なっているが、中でも興味深かったのは、ファンドレージングに対する姿勢や考え方である。
4つの最も重要なファクター ①ファンドレージングは、戦略的に構想を練り上げて実践した時、はじめて効果がでる。 ②ファンドレージングは、小さな戦略ではなく、組織の中の戦略の要。 ③ファンドレージングは、組織の広報分野を強化させるもの。 ④ファンドレージングは、成長のためのセクションである。
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「ファンドレージングは、短期的な結果を求めると失敗します。長期的なビジョンが大切です。またファンドレイザーに対する期待は高いのですが、持っている予算は非常に限られているので、辛抱強く行うことが大切なのです。」とクローディアさん。募金キャンペーンや助成金申請など、ついつい単発の資金調達に走りがちだった私には耳が痛い話だった。ファンドレージングとは、単なる担当者の仕事でも、一部門でもなく、組織改革そのものなのである。 「ファンドレージングは、中心的な役割ではないけれど、絶対的な役割を担っていくことになる」という言葉に、全てが表されているように思う。では、具体的にファンドレージングとして何をするべきなのか。独創的なアイデアやプログラムを思い描きがちだが、ファンドレージングの具体的な仕事は『調べる、調べる、調べる』に尽きるという。資金調達は、本当に地道で辛抱強さが求められるものなのだと、改めて実感する。
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研修後も続くつながりに感謝 (写真提供:小野さん)
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ファンドレージング・アカデミーから紹介されたデータによるとドイツ人で寄付をしている人は全人口の40%だそうだ。つまりドイツ人の60%は寄付していないことがわかる。反対に62.8%の人は「寄付をしたい」と思っている。割合に多少のズレはあるとしても、今後寄付をする可能性のある層が確実に存在している。これだけの寄付が既に集まっているドイツでも、寄付市場の開拓の可能性はまだまだ広がっているのだ。欧米と比較すると、寄付が日本社会に根付いているとはまだまだ言いがたいが、日本でも「寄付をしたいと思っているが機会がなかった」という層は、同じように存在する。NPOからの呼びかけを待ってくれている人がいるのだ。市民から信頼して寄付を預かることができるような力量をつけていくこと、そして行政や企業と協力しながら、対等なパートナーとして社会のニーズに応えていける、そんなNPOを目指していきたいと心から思う。
-完-
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