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ファンドレージング・アカデミー事務局長 トーマス氏 (写真提供:佐藤 剛史)
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ファンドレージングとは、NPOの資金調達を意味する。ちなみに企業の資金調達はスポンサリングというのだそうだ。ファンドレージング・アカデミーとは、NPOの資金調達を学術的に研究する専門の機関であり、そのノウハウをNPO関係者に提供する専門の私的な教育機関である。そんな研究教育機関が存在すること自体驚きだ。 「NPOの活動も盛んになれば、そうした事業が成立するんだぁ」と単純に感心していたら、その存在の意義や理念は、もう少し高いところにあった。 これはドイツでも日本でも同様の理解であるが、経済社会の主体は、公的セクター(行政)、私的セクター(企業)に分類され、これまではその2つのセクターが大きなウェイトを占めていた。しかし、それではバランスが悪いし、なにより「市場の失敗」「政府の失敗」が起きる。環境問題は「市場の失敗」「政府の失敗」の典型である。そこで非営利セクター(NPO)が必要なのであり、現実として、重要な役割を果たすようになりつつあるのだ。 ファンドレージング・アカデミーが目指すのは、公的セクター、私的セクター、非営利セクターのバランスのとれた民主主義社会の構築である。非営利セクターは、公的セクター・私的セクターと同等の立場に立たなければならない。今以上に、非営利セクターの活動を活性化する必要がある。だからこそ、活動資金の確保が必要なのである。 なるほど。日本では、NPOがせっせと資金調達に勤しむことに何か後ろめたさを感じるが、いまからはこう言うことにしよう。よりより民主主義を構築するためです、行政に権力が集中しないように、企業にお金が集中しないように、頑張っているんです、と。 ドイツのNPOのファンドレージングの特徴は、個人からの寄付が多いことである。これは、BUNDの予算について紹介した第4回連載を参照して頂きたい。ドイツのNPOは、企業の論理を受け入れることにアレルギー反応を見せる団体が多く、それゆえ企業からの献金や寄付を好まないと言うことだ。
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フランクフルトにあるファンドレージング・アカデミーでの研修の様
子 (写真提供:佐藤 剛史)
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ということは、活動資金の提供者である市民とのより良い関係を構築していくことが重要になる。もっと言えば、市民がNPOに対して何を求めているかというニーズを把握し、それをどのようにして提供、サービスしていくかというマーケティング戦略が重要となるのである。 しかしながら、これまではそうした認識に欠け、「市民に対するサービス」を積極的に行ってこなかった。ファンドレージングは、事務局長や渉外担当などが片手間に行ってきたし、電話の対応は不親切で、まるで役所のようなNPOばかりであったという。 現在では、ファンドレージング専門の担当者が設置され、また役員の中でもファンドレージング担当者が重要な役割を占めるようになっている。現在では専用の電話センターを設けるNGOも存在するそうだ。 第3回の連載で、BUNDのラインラント・ファルツ州支部は、寄付だけで年に4,500万円の活動資金を得ていることを紹介した。日本のNPOからすれば信じられない寄付の額である。ふと「寄付に関する考え方や文化が違うから」、と片づけてしまいそうになる。確かに、寄付に関する考え方や文化の違いはあるが、ドイツのNPOはファンドレージングの努力、つまり寄付獲得のためのマーケティングを積極的に行っているのだ。 この意識、エネルギーの注ぎ方の差は大きい。
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