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ドイツの町並み ─リューネン─
(写真提供:佐藤 剛史)
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環境ボランティア研修制度とは、16歳から26歳までを対象とし、1年間、環境ボランティア活動に関する実践研修を受け、その間、研修参加者には研修費が支払われるという制度である。 この環境ボランティア研修制度の参加者も、BUNDやNABUと同じような階層構造を構築している。参加者は、20名で1グループをつくり、これがセミナーなどを行う際の基本的な単位となる。その20名の中から、グループの代表者を選挙で選ぶ。グループの代表者の中から、州の代表者が選ばれ、州の代表者の中から、連邦の代表者が選ばれる。 こうした組織体制を構築することで、統一的な活動が可能となる。また、意見の集約化も行いやすくなるので、事務局とのコミュニケーションも行いやすくなるということだ。 この環境ボランティア研修制度は、研修参加者にとって、3つの教育的効果があるという。一つめは、環境保全や社会貢献対する意識・体験を獲得するという効果である。二つめは、職業訓練、技能習得の効果である。中には、研修中に習得した技能を活かしてマイスターとなる研修参加者もおり、効果をあげている。三つめは、自立の効果である。この研修で、はじめて一人暮らしをする研修参加者も多く、自立のきっかけとなっている。 ラインラント・ファルツ州では、環境ボランティアの年間の定員は100名であるが、そこに約600名の参加希望がある。その内容は、高校卒業者、中学卒業者、大学を休学中の学生などである。研修受け入れ先は、必ず、ラインラント・ファルツ州内であるが、参加希望者は、ファルツ州在住かどうかを問わない。これまでには、日本人の応募もあった。 研修受け入れ先は、環境保全型農業を実践する農家や環境NPO等であるが、研修受け入れ先と認められるには、研修内容が適切か、教育的な指導ができるか等、いくつかの条件がある。 条件をクリアーすれば研修受け入れ先と認められ、事務局に登録される。研修参加希望者から応募用紙が届くと、研修参加希望者の興味・関心、技術と、研修受け入れ先が求める人材とのマッチングを事務局が行い、研修参加希望者と研修受け入れ先との面接をコーディネートする。研修参加希望者と研修受け入れ先との面接を経て、研修受け入れが決定する。 研修受け入れ先となる農家にとっては、この制度によって労働力が確保される。研修受け入れ先となる環境NPOにとっては、青年への環境教育自体を組織の目的としているNPOも多いので、この制度を通じて、組織の目的が達成されるのである。このような理由から、研修の受け入れを希望する農家や環境NPOは多く、研修参加希望者の数を上回っている。 このように、環境ボランティア研修制度は、青年への環境教育、職業訓練、農業や環境NPOの支援という側面を持っており、政策としての有効性も高いのである。
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ドイツの町並み ─リューネン─
(写真提供:佐藤 剛史)
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とはいえ、研修がすべてうまくいっているわけではない。約10%が研修中に何らかの問題を抱えてしまうということだ。その内容は、予想以上に研修内容がハードであったとか、ホームシック、一人暮らしのための生活能力の不足、研修受け入れ先での人間関係のトラブル等である。このようなケースは、当然、おこるものである。だから、事務局は、この数字を下げる努力も怠らない。研修中、事務局は、研修受け入れ先を訪問し、教育コンセプトを伝えたり、双方の相談にのったりしているのである。 こんなケースがあるからと言って、この制度の意義が色あせることはない。
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