BUND(ドイツ環境保護連盟)NRW(ノルトライン・ヴェストファーレン州)支部事務所
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事務局長:ゲオルグ・デューク・ヤンゼン氏に当日対応していただいた。 BUNDは、前日訪問したNABUと並ぶドイツの二大環境NPOであり、地域組織−州組織−連邦組織という三層構造や、会員数の約40万人、財政規模の約30億円等もほぼ同等である。連邦組織が取り組むテーマについても、共に環境に関する様々なテーマ(自然保護、貿易、エネルギー、交通、農業等)を扱っており、あまり差はない。 この2団体の違いに目を向けると、NABUが百年以上前から自然保護活動を主体に発展してきた団体であるのに対して、BUNDは30年ほど前に反原発運動をテーマに生まれた政治性の強い団体である。そのため、NABUの地域組織の多くが自然保護団体であるのに対し、BUNDの地域組織は、エネルギー・交通・都市計画・農業・自然保護等今日的課題に沿って多様性に富んでいる。 ドイツの自然保護法では、これら2団体を中心とする有力なNPOに対し、大規模開発計画について計画段階で意見を述べる権利が認められており、さらに、意見が無視された場合には、環境保全の立場から計画差し止めの訴訟を提起できる権利が認められている。 NRW州においては、さらに水質保全に関わる開発計画についても、これらの団体が意見を述べることが出来、BUND−NRWが1年間に扱う案件は1,200件にも上る。そのため、この権利が認められている3団体(BUND、NABU他)が、合同で専門家やスタッフを雇い、合同の意見書を出す仕組みを作って対応しており、この仕組みはこの州独自の取り組みであるとのことである。
午後からは移動して、ヤンゼン氏が20年来関わってきたという炭鉱を見に行った。この地方は欧州有数の炭田地域であり、3ヶ所において広大な露天掘りが行われている。私たちが見に行ったのは、その中でも最大のもので、対岸が少々かすんで見えるほど巨大なくぼ地となっている。この炭鉱は、土地利用、大気汚染、地下水脈、二酸化炭素の排出等の面で環境破壊を引き起こしている上、拡大計画により、さらに多くの農地やコミュニティが失われようとしている。 この開発計画を止めるために、BUND−NRWは差止め訴訟を行ったが最高裁で敗訴した。しかし、BUNDが移転対象地域の家屋を取得し、財産権の保全の立場から行った訴訟では勝訴しており、他にも反対運動をしている住民への支援を行ったり、この炭鉱を閉鎖した場合のエネルギー需給計画について政府へ提言したりしているという。 その後、立ち退きが決まってゴーストタウンとなった村々を訪れながら彼が語りました。「『ドイツは環境先進国である』と政治家は言います。しかし、皆さんの目の前の光景が現実です。ドイツが環境先進国であるならば、BUNDもNABUもグリーンピースも必要無いはずです。私の気力がある限り、戦い続けます」と。 一見、法律を駆使する洗練された活動をしているかに見えたBUNDという組織の原点を、垣間見た瞬間でした。(樋口さん)
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