※こちらはアーカイブ記事です。
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【7】
10月22日午前 訪問先:環境ボランティアリーダー研修制度 Staatlichen Vogelschutzwarte füj Hessen, Rheinland-Pfalz und Saarland.(ヘッセン州野鳥保護センター)
見事な説明を行う研修生のマルセル君。19歳とは思えない堂々たる説明
研修生のお土産「トントンずもう」で愉しむ事務局のウルリケさん
環境ボランティア研修制度(FÖJ)に関わる方々より若者を育成する一手段として、説明を受けた。この制度は、16歳から24歳の若者を対象として1年間の研修を受けられ、期間中受講生は、研修費無料のほか住居・食事・社会福祉制度(保険の加入)といくらかのお小遣いももらえるようである。以前は徴兵制度から免れたい人が制度を利用するケースがあったが、制度が廃止された現在、将来何をしたいか分からない、自然環境に関わる活動をしたいといった人たちが活用していた。
保護活動のひとつ、野鳥の巣箱について説明をする、FÖJ受け入れ先のリチャードさんと研修生のマルセル君
この制度を使って若者たちはドイツ国内の環境施設や農場などで直接OJTを受け、自らのスキルを伸ばすようになっていた。今回2名の研修生から実際の活動と説明を直接伺うことができ、お二方とも自らの仕事に誇りを持って前向きに取り組み、生き生きと業務を全うしている姿が印象的だった。この制度が国外の方々が利用した事例もあることを知り、人材育成に対するドイツの懐の深さを強く感じた。
(角屋 暢洋)
【8】
10月22日午後 訪問先:環境ボランティア研修制度(FÖJ)
研修生ザーラさん(左)と事務局ウルリケさん(右)
「この葉っぱはどの木の幹のものか な?」様々な工夫で森の生態を紹介してくれるザーラさん
午後は、フランクフルト市にある環境情報センターに向かいました。FÖJ事務局のウルリケさんと共に、研修生ザーラさんのガイドツアーを体験し、彼女の研修の様子を見せてもらいます。センター内外のハンズオン展示を見ながら、キノコの観察、蜂の巣の観察、保護動物の様子、森の様子など、ザーラさんがクイズなどをしながら環境センターをぐるりとガイドしてくれました。
ザーラさんのお話の中で印象に残るのは、どの研修生も必ず課題としてあたえられるというプロジェクトを立案、企画についてのお話です。ザーラさんの企画は「幼稚園児と1日森で過ごすキャンプをする」だそうです。彼女が日々の研修の中で様々なものを感じ取り、自分なりの問題意識を持ち、その解決法を考え実行していくプロセスに、人材育成の核があるように感じました。研修生の「やってみたい」という想いを育て、励まし、実行の舞台を与えるということを、国の制度として確立しているというのは素晴らしいこと。きっとこの制度を経て育った人材がドイツの自然環境を守る担い手になると感じました。
(本間 莉恵)
【9】
10月23日午前 訪問先:NABU(ドイツ自然保護連盟)自然保護センター
ビンゲン郊外にあり、ライン川支流に近い保護センターは、周辺のビオトープ(生物の生息域)の保護管理やコウノトリなどの野鳥のモニタリング調査、子供や一般向けの環境教育プログラムを実施している。保護活動には、日本でもカエルマークの洗剤でお馴染みのフロッシュという企業などから支援を受けているが、パンフレットやポスターなどありとあらゆる媒体にフロッシュのマークがついていたり、企業トップを現場での式典に招待し、その様子をマスメディアで取り上げてもらうなど、社会貢献が支援団体のイメージアップに繋がる仕掛けがあった。またコウモリの保護プロジェクトでは自分の家をコウモリの棲家として配慮する家庭に表彰状や、玄関先に貼るステッカーを贈るなど、自然保護活動の支援に対する恩返しとして、企業団体や個人にメリットが生じ、満足度が向上する様々な手段が取り入れられていた。
講義の様子 フクロウの巣箱についての説明
玄関に貼る「ようこそコウモリ!」のステッカー(パンフレットより)
保護地区やNABUの買い上げた場所を見学。倒木を置くことで、小動物の隠れ家やエサとなる
建物の外にも生き物が棲みやすい工夫がたくさん
(川野 智美)
【10】
10月23日午後 訪問先:NABU(ドイツ自然保護連盟)ラインヘッセン地域
案内をしてくれた、マティー・アブーゼルさん
野鳥観察小屋で記念撮影
午後は、NABUの地域の活動について学ぼうと、ボルムス地域の保護地域へと向かいました。案内をしてくれたのは、マティー・アブーゼルさん。娘のマルガレーテちゃんそして10名ほどのアクティブ会員のみなさんでした。
「この地域はライン川からほど近く、もともとは農地だったものを、自然再生のためにNABUが買い上げ、管理をしている場所。特に手を加えず、少し川の流れを変えただけなのです」とマティーさん。広い草原と、農家と協働し、牛を放牧している風景が目の前いっぱいに広がり、昔ながらの自然と人間の関係を思い起こさせます。歩き進めると、野鳥観測小屋があり、中にはこの場所でみられる野鳥の紹介パネルなどが設置され、私たちのために双眼鏡や図鑑を用意してくださっていました。ここでは州でみられる鳥の1/3に当たる122種類の野鳥が観察することができるそうです。会員のみなさんからは、会報を見せて頂きながら、それぞれ得意分野を生かして文章や写真を投稿しているお話や、広報の工夫のお話もきかせていただきました。20年、30年と豊富な活動経験を経た方々の言葉の一つ一つは私たちの心にしっくりと染みていくようでした。
(本間 莉恵)
【11】
10月24日午前 訪問先:「ボリムリンゲ」森の幼稚園 講師:Ms.Monica Much
森のようちえんルール。子どもたちはしっかり守ってます
保護者らが森で子どもを育てる素晴らしさを体感し、森の幼稚園を設立した。保護者が理事のNPOで運営しているため、保護者が協力、運営することが前提の幼稚園。一般の森の幼稚園は、親から300〜600ユーロ月謝としてもらって運営している。ボリムリンゲ幼稚園では、州から月謝は補助を受けているため、親からはNPOの会費100ユーロのみをもらっている。3〜6歳の20名を森の幼稚園の研修を受けた先生2名、研修生1名、FOJ1名で保育している。森林管理事務所との関係がよく、森のガイド役が子どもたちに専門的なことを教えてくれることもある。ドイツ連邦の教育庁の方針に基づいて森を通じて教育を行っている。子ども達は森の規則をもとに民主主義投票で一日の遊びを決めたり、自由意志で遊んでいる。お天気が悪いときもテントで調整したりして出来るだけ外に出ることで自然のありのままを体験する。ドイツ国内の公立の無償の幼稚園と比べ、自然の仕組みや想像力、適応力、判断力などを自然と身につけることができるため、人気上昇中。
森の中で輪になって集合。今からみんなでモーニングブレイク
子どもたちと一緒に遊びました。遊び方は世界共通です
子どもは世界共通であり、小さくてもたくさんのことを自ら考え実施できる力を持っています。それを確認できて安心しました。自然を愛し思いやりの心をもった人がたくさん育ちますように!
(梅田 幸代)
【12】
10月24日午後 訪問先:ラインランド・ファルツ州自然環境財団 講師:ヨハン・クレビュール氏
ラインランド・ファルツ州自然環境財団にて取組などの説明を受ける
この財団は30年前に発足、州の環境大臣を始め、政治家が数名、大手民間企業や銀行、放送局、大学教授、ソーラーパワー、自然環境の専門家が理事に名を連ねている。スタッフは9名程度とのことであった。
スポーツ宝くじやEUからの補助金を財源とし、州内の大小のNPO等の環境プロジェクトにに助成金を出しており、事業費だけでなく人件費なども援助している。その際、費用対効果や財団の理念に即しているかどうかがポイントのようであった。
ヨハン・クレビュール氏
中立の立場で公平に情報発信することを心がけている反面、BUNDなどと協力してプロジェクトを実施している。
またiPhoneのアプリを活用したプロジェクトなど、一般市民が参加しやすいキャンペーンなどを展開し、プロジェクトのファンを集めるという考え方を学ぶ事ができた。
(田村 裕美)
【13】
10月25日午前 訪問先;キューコップ自然保護センター
ライン川の氾濫原として湿地が広がるこの地域は、昔から野鳥の貴重な生息場所として地元の人達から親しみ愛されてきた。しかし、ライン川を運河として整備するため、90年代川の本流とこの湿地との間に堤防を作る河川改修計画が生じた。これに対し、地元住民による反対運動が生じ、湿地が守られたのをきっかけに、1952年この地域がヘッセン州最大の自然保護地域に指定された。この保護地域の拠点であるセンターでは、保護地域の管理とともに、来訪者への情報提供や、スタッフによる自然観察会などを実施している。施設内にあるジオラマは実際に水が流れ、ライン川が増水した際に湿地や周辺地域にどのように流れ込むかをリアルに見ることが出来る。このセンターの維持管理費は自然保護地区であることから州が100%担っており、NABUのメンバーと森林管理所員(この人も実はNABU会員)が観察会や保護活動などのソフト面を担っている。行政と市民団体の共同によって、地域の自然が維持されている。
ライン川のジオラマ。実際に水が流れて、どの地域が増水時に影響を受けるのかがわかる。
NABUヘッセン州支部代表で自然保護センター所長のゲルハルト・エプラー氏
自然保護地域を流れるライン川の支流
(川野 智美)
【14】
10月25日午後 訪問先:ファンドレージング研究所 講師:Ms.Helga Schneider
心理学を学ばれた先生であり、人間の心理をつき、説得力のある講義だった。寄付をいかに集めるか、より多くの寄付を集めるために必要なツールを紹介いただいた。メール、電話勧誘、イベント勧誘など、現在使用されているさまざまなツールの中で、今後一番期待できるのは、遺産寄付、招待会である。また、ファンドレージングアカデミーでは、年4回1週間の講座を開催しており、講座の中にはパーソナルトレーニングも入っている。
顧客分析の有効的な方法として、データベースファンドレージングがあり、顧客リストより参加人数、宣伝、寄付回数、寄付金額、経費等の項目にあてはまるデータを打ち込むことにより、どの階層にどうアプローチするとよりよい効果を得るかが見えてくる。それにより、無駄な労力を減らし、経費削減にもつながる。情報はただ発信するだけでは意味がなく、より効果的に発信することで主催者の意図が伝わるのだと実感させられた。また、NPOも企業と同様に顧客分析を行い、より有効な広報を検証することの大切さを痛感した。
ヘルガさんが一生懸命わかりやすく教えてくださいました
影島さんのプロのもてなしを囲んで真剣に講座を聞いている様子
データーベースファンドレ—ジングの極意を教えていただき。満足の笑顔で研修終了!
(梅田 幸代)
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