セブン-イレブン みどりの基金 一般財団法人セブン-イレブン記念財団

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環境ボランティアリーダー海外研修

2013年(平成25年)第16回環境ボランティアリーダー海外研修レポート

海外研修レポート 感想その2


日程表 感想 その1 その2
【8】
10月19日(土)午前 訪問先:BUND(ドイツ環境保護連盟)NRW州支部 担当者: Ciesla女史
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BUNDノルトラインヴェストファーレン州事務局で講義を受ける
 州副代表のキルスティン・シースラーさんより、取り組んでいる3つのプロジェクトについて講義を受けた。初めは州のBUNDの組織や会員について。会員数は23,500人。炭鉱や工業が盛んな都市が抱える様々な問題に対して、反対活動や訴訟活動を行っている。州レベルとして、地域活動のプレス活動やロビー活動を行い、地域の活動を支援している。2つ目は原発と工業について。工業都市であり多くの発電所があるため、二酸化炭素の排出量も国内1位。ドイツ全体の80%ということに驚きました。発電所に対しては建設途中から訴訟をおこして稼働させなかったり、長年に渡って訴訟を起こしていることも。3つ目は農業の工業化について。自然の中で自然の恵みを得て行ってきた活動から、人間の嗜好に合わせた品種改良や安価で大量に生産する方向に変化し、大きな問題となっている。このように、工業や農業で起きている諸問題に対して積極的な活動を行っていた。環境先進国ドイツというイメージを覆す現状に驚くとともに、環境市民団体の地域と連携した州レベルでの取り組みの重要性について学ぶことができた。
(林 健児郎)
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【9】
10月19日(土)午後 訪問先:ガルツヴァイラー炭鉱と周辺の見学
 BUNDの事務局より車で40分移動。郊外に広がるガルツヴァイラー炭鉱を見学しました。解説は州のワーキンググループでこの炭鉱を担当しているシューベルトさん。この炭鉱は200年前に褐炭が発見されてから現在まで掘り続けており、露天掘りの炭鉱の広さは1万1000ha。炭鉱の周辺には数か所の見学ポイントがあり、そこから広がる果てしない光景に、私たちはみんな驚きました。褐炭は50%の水分を含みエネルギー効率が大変悪い石炭ですが、これを掘り出してベルトコンベアーで、数キロ先の火力発電所へ運び、発電しています。褐色炭を掘る過程で巻き上がる粉じんを防止するスプリンクラーが炭鉱の周りを囲み、空気に触れると変化して水中に沈殿する硫化鉄のモニターも設置されています。発電所では原発を超える電力を発電し、EU諸国にも販売しており、そのために周辺の町と住民が強制撤去されるなど、大きな問題となっています。 過去のエネルギー政策により、法律で炭鉱が最優先され、2044年まで採掘が決定しています。町の移住は基本的人権の侵害であるとして、BUNDと住民が訴訟を起こしていました。原発廃止と代替エネルギー政策が進む中、今後の炭鉱に注目が集まります。移住が決まり、人がいなくなったイマラートの町を見学した際は、悲しさがこみ上げてきました。ドイツの環境問題の現状を肌で感じました。
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遥か彼方まで広がるガルツヴァイラー炭鉱
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採掘された褐炭がベルトコンベアーで運び込まれる火力発電所
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炭鉱拡大のため強制移転させられたゴーストタウンを見学

(林 健児郎)
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【10】
10月20日(日)午前 訪問先: NABU(ドイツ自然保護連盟)自然保護センター 担当者:ロベルト・エーゲリング氏、ミヒャエル・マコフスキー氏
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トレーナー育成のための教材を手にするエーゲリング氏
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自然保護センター周辺の配置図
 この自然保護センターは、ラインランド・ファルツ州の中で最も大きい自然保護センターである。2名のスタッフが、自然保護管理、環境教育、トレーナーの育成などに携わっている。自然保護センターには、多い時には年間32,000人の人が訪れる。毎年350件程の環境教育を行っているが、その時に重要な役割を果たすのが、ネイチャートレーナー。彼らは、1年半に渡るトレーニングを経て、学校などを訪問して環境教育を行っている。仕事をリタイアしたした方がトレーナーに多いのは、高齢者対策の一環として州が補助金を出しているため。このような取組みをしているのは、この州だけだそうだ。現在、この地域が課題として抱えているのは、人口や観光客の増加に伴う自然破壊、農業の工業化である。これらに対し、彼らは「私たちは、警察ではない。破壊につながる行為に対し、『理解と協力』を求めるのだ」と話してくれたのが印象的だった。
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センター近くを流れるライン川
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食品会社の寄附を活用して作成した原発反対のバック
 最後に、訪問の帰り際の出来事を一つ。3・11をキッカケに、彼らはオーガニック食品会社の寄付を活用して、原発反対のメッセージをデザインしたバックを作成し、賛同してくれる人にバックを渡している。その渡している様子を写真におさめ、食品会社が発行する冊子に掲載している。発行部数は80万部。研修後の昼食時間を利用して、「賛同してくれるのであれば、あなたたちにバックを渡す写真を撮らせてほしい」と、エーゲリング氏は言った。それも、さらりと優しく誠実に。NABU及び食品会社の「広報」に対する意欲とスマートさを感じた。
(桑野 恭子)
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【11】
10月20日(日)午後 訪問先: NABU(ドイツ自然保護連盟) ALBIG支部責任者 州支部広報官 担当者:ライナー・ミヒャエルスキー氏
 ユーゲンハイムという町で、NABUヘッセン州支部広報官のミヒャエルスキー氏にも同行いただき、ラインヘッセン地域での実際の地域活動を行っている現場を紹介していただいた。主な活動は①種の保全(フクロウ・カエル・両生類・コウモリ)②ビオトープの管理(手間がかかるがそこに住む動植物の生態系を守る)ラインヘッセン州は元々森が少なく、果樹栽培が盛んな地域。「ビオトープの飛び石」と呼ばれるNABUが自然保護の目的で購入した土地では、ブドウなど果樹の木ばかりにならないようにブナやナラを植え、農業の工業化で希少となった野生のサクランボ・リンゴ・バラの原種を保護している。地域で活躍している4名のNABU会員方々と一緒に、おとぎ話に出てきそうなメルヘンな街並みを趣のあるほろ付き荷車で移動し、「ツバメのホテル」「フクロウのホテル」などを見学。その後ブドウ畑の中にセッティングされたテーブルで、会員の皆さんから心温まるおもてなしを受けた。
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NABUのアクティブメンバーと“ほろ車で移動”という粋な演出
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ナショナル・トラストによる動植物の種の保全も行なわれている
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ブドウ畑の心地よい風を感じながらワインとプレッツェルのおもてなし

(大室 由佳)
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【12】
10月21日(月)午前 訪問先:ヘッセン州環境ボランティア研修制度事務局 担当者:ウルリケ・シュタインベック女史
 環境ボランティア制度(FÖJ)とは,若者が一定期間生活を保障された上で環境保護に関する活動ができる制度である。ヘッセン州同制度事務局のウルリケ・シュタインベックさんに伺った同州の概要は次のようなもの。
  • 環境保全団体、環境教育施設,農場などが受け入れ先になっている
  • 義務教育終了後26 歳までの若者が自由意思で申し込み,1年間(6-18 ヶ月間)利用できる
  • 経費は連邦家庭省、州環境保護省、受け入れ先が分担して負担する
  • 全独で昨年度2500 人弱、1987 年からのべ2 万5000 人の若者がこの制度を活用した
 FÖJ-ler(同制度利用者)の半数以上が,高校を卒業したものの何をしたいか分からないという若者だが、終了後は9割以上が将来の方向性を見いだしているそうだ。人生の方向を決定する時期にしっかり環境保全活動に携わることは全体の意識向上に効果的であるし、受け入れ先にとっても若者の柔軟な発想や元気さが刺激となる有効な制度であると感じた。
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ヘッセン州のFÖJ生が研修している環境学習センター建物も温室があったり木材を多く用いたりとあたたかみのある造りです
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内部は研修室の他、子どもから大人まで利用できるよう工夫された体験コーナーや図書室など充実している
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FÖJ研修生の二人。施設のプログラムに沿ってワークショップを実施するばかりでなく、自分のしたいことを提案できる自由さがある
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環境分野ばかりでなく,農場や福祉関連でも大勢の若者が活躍している

(藤浦 清香)
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【13】
10月21日(月)午後 訪問先: GRKW / 環境学習センター 担当者: Martina Teipel女史
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採石場跡の自然保護区
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先進的な展示を取り入れた環境学習センター。日本の科学館を彷彿とさせる。
 GRKW は、採石場の跡地一帯を運営する組織で、非常に先進的な体制をとっている。
 3つの行政(市・郡・地域)が合同で会社を作り、運営しているのだ。採石場は現在も稼働しており、採石・捨石の2事業を行う企業に土地を貸し出すことで収益を得ている。敷地は大きく3つのパートに分けられている。レジャー区域、採石・農場区域、自然保護区域である。採石・農場で運営費を捻出しつつ、レジャー区域を訪れる人に環境学習と関連したアクティビティを提供したり環境学習センターまで足を運んでもらったりすることで、自然環境に関する啓発を行っている。
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敷地一帯を見渡せる見晴台。シンボルタワーともなっており、採石場跡のスケールの大きさや森の少なさが視覚的に実感できる
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人気のある体験コース「裸足の道」は、岩や木材、コルクなど異なる素材でできた道を目隠しして裸足で歩き、感覚を磨く
 またFÖJ の受け入れ施設でもあり、若者が環境について学んだ後に子どもたちにそれを伝えるゲームを行う場や、自ら企画を立てて実践する場にもなっている。これは地域の自然再生の成功例といえよう。このように,従来の形にとらわれずに柔軟な取り組みを行い、楽しみながら環境について学べる仕組みは日本でも取り入れていきたいものだ。
(藤浦 清香)
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【14】
10月22日(火)午前 訪問先:ラインランド・ファルツ州 環境省情報センター 担当者:ローランド・ホーン氏
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環境省エントランスには、環境系の情報誌が多数掲示されている
 ラインランド・ファルツ州 環境省情報センターを訪れ、環境大臣直属のセンター所長であるローランド・ホーン氏にドイツの歴史、民主主義で社会性を持った「連邦政府」であるという背景、環境市民団体の活動についてのお話を伺った。NPOが行政と連携するポイントは「とにかく話し合うこと」と「他のNPOと連携して協働で行政と交渉すること」。
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講師のローランド=ホーン氏。始めに研修生の話に耳を傾けてくださいました
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ドイツの環境活動の歴史やこれからの展望について語ってくださいました
 これからは持続的再生可能な生き方の指針を持ち、「いかに自然を友にするか」という意識が大切。原発問題やライン川の汚染問題の歴史、大気汚染の問題にも触れ、「何かしなきゃと言いながら何もしないできた結果」「人間の持つ習慣の恐ろしさ」が問題であり、人間は慣れてしまった環境で、持っているものをなくすことやスタンダードを下げることを不安に思うものである。自分たちの生活に再度目を向け、持続可能なエネルギーの消費システムに社会全体が変革していく必要性を語っていただきました。
(大室 由佳)
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【15】
10月22日(火)午後 訪問先:ファンドレージング研究所 担当者: Helga Schneider 女史
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 今回の研修の最重要テーマのひとつが「ファンドレイジング=資金調達」。本研修最後となるこの日の講義はファンドレイジングであった。私が学んだことは主に二つある。ひとつは、資金調達や寄付の方法は無数にあるということ。例えば、お金の寄付だけでなく、ボランティアは労働力の寄付と考えられるし、不要になったものをいただくことも寄付、団体の理念に賛同し、事務所の家賃を割り引いてもらうことも寄付だ。こう考えるとできることは無数にある。ふたつめは、寄付や資金調達というものは「信頼関係」を基本にして成り立っていること。恋愛や友情関係と同じであると講師は説く。そのため資金を得たいと思ったら、まず信頼関係を築くことからはじめなければならない。出会っていきなり恋に落ちることがあまりないのと同じように、よく団体のことを知りもしないのに、「寄付をしよう」と思う人はいない。
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 今まで私は、関係性の薄い人には寄付を依頼しやすいが、しっかりと関係性ができている人に寄付を頼むのは難しいと考えていた。親しい人にお金の話しをするのはタブ―のような気がしていたのだ。しかし、実はこの考えは全く逆で、本当に資金が必要ならば親しい人にお願いしなければならない。あるいはそういった関係性を築くところからはじめなければならない。これは目からウロコの考え方だった。そしてその際最も重要となるのが「正直、透明性、オープン」である。これならできそうだ。この講座を通じ、日本に帰ったら、コアな顧客を対象に、できることから寄付金集めをしてみようと決意を新たにしたのであった。
(菊間 彰)
日程表 感想 その1 その2



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