足摺宇和海国立公園の最も大きな特徴は、黒潮の影響を受けた暖流系の海中景観にあります。宇和海地域では6ヵ所、足摺地域で13ヵ所が海中公園に指定され、海中景観等が保護されています。
海岸部では、足摺岬を中心とした隆起海岸の豪壮な断崖が連なる男性的な風景と、宇和海を中心としたリアス式海岸の繊細な入り江と島嶼がつくりあげる女性的な風景、そして亜熱帯植物が生育する植物相に特徴があります。 南国をイメージする公園ですが、内陸部にも質の高い自然が残り、様々な表情のある公園です。
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指定日 |
:1972年 (昭和47年) 11月10日 |
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面積 |
:11,345ha (2014年3月31日現在) |
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年間利用者数 |
:159万人(2012年度) |
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関係都道府県 |
:愛媛、高知 |
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掲載記事は2002年 (平成14年) 8月取材当時のものです |
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景観に様々な表情をもつ国立公園 足摺宇和海国立公園は、四国西南部、高知県土佐清水市から愛媛県東宇和郡宇和町にかけての海岸部と沖合いの島嶼、内陸部の愛媛県篠山(ささやま)・滑床(なめとこ)・法華津峠(ほけつとうげ)地区などを含む面積11,166ヘクタール(長崎県壹岐より一回り小さい大きさ)の公園です。1972年(昭和47年)に国立公園に指定され、今年30周年を迎えます。 海中景観と変化に富む海岸線のすばらしさはいうまでもありませんが、海岸部では岩質の硬柔差による特異な海食地形や珍しい堆積構造もみられます。竜串(たつくし)や千尋(ちひろ)岬の海岸は、古第三世紀層の砂岩が風や波に侵食されてできた蜂の巣構造、地層が一方に傾っている単斜構造、砂浜にできた波形の化石である化石漣痕など、多くの奇岩が見られ、不思議な景観をみせています。とくに全国をくまなく行脚した弘法大師がここを見残したことからこの名がついたといわれる見残し(みのこし)周辺は、千尋(ちひろ)岬の化石漣痕として国の天然記念物に指定されています。
篠山(1,065m)は、かつて伊予・土佐の両国から霊山として信仰を集めた山で、植物群落に特徴があります。法華津峠は法華津湾を望む絶好の展望場所で、宇和海を一望することができます。 滑床は滑床渓谷と成川渓谷からなり、四万十川の源流といわれ、渓谷景観がすばらしいところです。滑床渓谷は、花崗岩の一枚岩の滑らかな河床が特徴で、12キロにわたり次々と滝や岩が姿を変えては現れる変化に富んだ渓流で、四季折々の美しさをみせています。下流は照葉樹林ですが、高度が上がるにつれ、モミ・ツガ林となり、最高部ではブナの原生林が出現します。冬には雪が多い滑床は、四国でのブナ林のほぼ南限となっています。
豊富な陸地の野生動植物
公園内には、四国に生息する哺乳類7目47種のうちカモシカやキツネなどを除くほとんどが生息し、中でもニホンザルが大堂・鹿島・滑床に、ニホンシカが鹿島に数多く生息しています。 鳥類も豊富です。浦葵島(ビロウ島)は、オオミズナギドリの集団繁殖地として有名です。また、高知県の県の鳥・県の天然記念物でもあるヤイロチョウは、赤・黄・緑・コバルトブルーなど名前のとおり体が八色の色をした美しい鳥ですが、国内希少野生動植物種に指定されています。
海岸に近い地域の植生としては、暖温帯の多雨気候の影響で照葉樹林を主とした南方系の植物が特徴です。スジダイ・タブノキをはじめ、カシ類・タイミンタチバナ・ヤブツバキ・ウバメガシ・トベラ・ハマヒサカキ・マルバシヤリンバなどが生育しています。足摺岬や浦葵島(ビロウ島)・沖ノ島・姫島・鹿島などには、アコウ・ビロウなどの亜熱帯植物が黒潮の影響を受けて生育しています。 篠山は、アケボノツツジの群落やトサノミツバツツジの群落、コウヤマキ・スギ・ヒノキ・ハリモミの巨木があり、地表をミヤマコザサが覆っています。
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