溶岩洞窟とそこに潜むコウモリ
富士山には、100余りの穴がいたるところに開口しています。富士山の噴火により流れ出た溶岩流の噴気孔(タテ穴)や樹木が溶岩に包まれて燃焼したあとの空洞(溶岩樹型)であり、これらは荒れ狂った富士山の昔を物語る生き証人といえます。 |
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中でも総延長350メートル以上という富士山麓の溶岩洞穴中最大規模を誇る溶岩洞窟である西湖蝙蝠穴の中では、溶岩の雫が小さい乳首のように垂れ下がっている「溶岩鍾乳石」や縄を何本も並べたような縞模様を有する「縄状溶岩」、溶岩洞穴の側壁が剥がれ落ちて棚のような形をした「溶岩棚」など自然の造形美に目を奪われます。 |
また、洞穴内は年中温度差が少なく、冬眠の場所として、昭和初期には多くのコウモリが群生していました。生息する種類としては、ウサギコウモリ、キクガシラコウモリ、コキクガシラコウモリの3種のコウモリが記録されています。
しかし、残念ながら今はその姿を見ることは殆ど出来ません。洞窟の魅力に誘われた人々が、コウモリのすみか深くに入り込み荒らしてしまったことにより、その数が激減してしまったのです。現在は、保護のためコウモリのすみか辺りへは人が行けないように鉄柵が作られています。鉄柵を作らなければ、そのような人々の侵入を防げないという現実は、とても悲しいことです。
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樹海を歩きながら、樹海の保護を考える 野鳥の森公園から西湖蝙蝠穴へと続く自然遊歩道を歩くと、足元の変化に気付きます。入り口の砂利道は、しばらくすると溶岩石が剥き出しになり、いつの間にか木材チップの道へと続いています。ふわふわと弾力性に富んだ木材チップの道は、歩き慣れない山道を歩いてきた足を、心地よく支えてくれます。そうしてたどり着いた西湖蝙蝠穴の洞窟の前には、木道デッキが整備されています。これらは、人間が入り込むことで、どうしても負荷がかかってしまう青木ヶ原樹海を守るための試みの一端です。 |
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本来、このように人間の手を加えることなく、本来の樹海の自然の姿のまま保全できることが最も望まれることではあるのですが、心無い人が樹海の中へオフロード車で乗り入れている光景を目にすることが絶えることはない現状において、苦肉の策といえます。樹海誕生の歴史や、森の生態系を知る人ならば、絶対に出来ない行為だとは思うのですが…。
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