森に棲む仲間たち
それでは、阿寒国立公園を形成する森やそこに棲む動植物について調べてみましょう。阿寒国立公園の植生としては、エゾマツやトドマツといった針葉樹やカツラ、シナノキなどの広葉樹が広がっており、原生的な混交林を展開しています。広大な森林地域は、野生生物にとって格好の生息地になっており、阿寒地域は比較的地質の生成が新しいため、植物の固有種は少ないのですが、多様な環境から植物の種類は比較的豊富となっています。屈斜路湖では、冬でも湖岸部分が湧出する温泉の影響で凍らないため、オオハクチョウが越冬にやってきます。
阿寒湖畔では、トドマツにあいたキツツキの食痕を見つけました。アカゲラ、オオアカゲラ、コアカゲラなどが棲んでいるようです。その他湖畔を歩いているとエゾリスや時にはエゾシカ、キタキツネに出会うこともあります。 また、川湯の硫黄山(標高512メートル)周辺には、通常1,000メートル付近でしか見ることのできない高山植物であるハイマツやイソツツジの群落が展開しています。6月下旬頃から7月上旬にかけ100ヘクタールにわたり白い花が一面を覆い尽くします。 こうして多用な環境の中、様々な動植物が私たちと同じ景観の中に生きているのです。
カムイの庭を守る人々
「てしかが自然史研究会」は、特別保護地域である摩周湖において、唯一の民間のボランティア団体として水質調査活動などを行なっています。会のメンバーは、摩周湖へ降りるとき決して同じ道は通りません。同じ場所を通ることで、そこから道ができ水が流入、流出することで摩周湖を汚してしまうことになりかねず、道なき道を通ることは、摩周湖に負担をかけないようにしている気持ちの表われなのです。経費はほぼ参加者の負担で、危険も多く、大変な作業にもかかわらず、メンバーの熱意によってこの活動は長年続けられてきました。「手の届かない神秘の摩周湖」は、ボランティア活動をする人々の手でこうして守られ続けているのです。
「弟子屈リバー&カヌークラブ」は、屈斜路湖周辺で清掃活動を行なっています。活動を始めたきっかけは、自然界にあるはずのないゴミがいつも自分たちの目に見える場所に散乱していたことがきっかけだったそうです。会のメンバーは、カヌーの人口が増えることを歓迎する一方、ゴミが増えることに懸念を示しています。
阿寒湖周辺では「阿寒湖パークボランティアの会」が、自然観察のネイチャーガイドや各調査の補助活動を行なっています。阿寒湖は、観光地という一面も持ち合わせているため、散策やトレッキングなどの行事が非常に多く、阿寒町だけでなく、釧路市などからも多くのボランティアの人々が活動に参加しています。団体が行なう調査活動の一環として、「阿寒マリモ自然研究会」とともに阿寒湖に棲む外来種のウチダザリガニの生態系調査を行なっています。その内容は、捕獲した一定のザリガニを標識放流し、その移動距離や、生態を調査していくものです。阿寒湖に棲むマリモの生長に、ウチダザリガニがどのように関わっているのかは今のところ不明ですが、壊れたマリモの間にウチダザリガニが巣を作っていたという例もあり、今後更に調査が進められていくとのことです。
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