※こちらはアーカイブ記事です。 |
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都心から近くに、まとまった豊富な自然環境があったことが国立公園指定の決め手となりました。それでは日本国内の27ある国立公園とは、一味違う美しさを持つ秩父多摩甲斐国立公園を探索してみましょう。
苔生した倒木の間の一滴
昔は山の姿がにぎりこぶしに似ていたため、「拳岳」と呼ばれていたようですが、甲斐(山梨)・武蔵(埼玉)・信濃(長野)の3国の国境を分けていたことから、その名のとおり甲武信岳という名前になりました。実はこの山、3つの地域に流れ出る荒川、千曲川、笛吹川の源流の地として位置付けられているのです。
明治時代の抒情詩人、島崎藤村が愛した千曲川の源流は、長野県川上村にある毛木平(モウキダイラ)から千曲川源流遊歩道を使い約3時間ほどのところにあります。植林されたカラマツやシラカバの林の中、千曲川のせせらぎを聞きながら歩くことができるのは、この道だけです。3つの川の源流のなかでは、比較的短い時間でたどり着くことができます。千曲川(全長367km)の場合、源流点が起点にもなっているため、日本一の大河川はここから始まります。甲武信岳を源流とする3つの水系のうち、日本海へと流れていくのは千曲川だけです。千曲川の源流点付近は、荒川の源流点と同じくシラビソの針葉樹で覆われ、日中でも薄暗い場所です。
駿河湾に注ぐ富士川の支流である笛吹川の源流は、甲武信岳の南に位置しています。特に目印になるようなものはなく、甲武信小屋から西へ水場の案内板に従い約10分ほど下ったところにあります。笛吹川の源流点付近は、風化して割れた多くの岩でおおわれた急斜面にあるため、注意して歩かないと滑り落ちてしまいそうな、身の危険を感じる場所ですが、荒川の源流や千曲川の源流風景とは、全く違った源流の風景を見ることができます。 秩父多摩甲斐国立公園の中には、他にも様々な水源の森があります。町全域が国立公園の指定を受けている東京都奥多摩町では、多摩川の上流、奥多摩湖へと流れる大水源林において、ボランティア団体「巨樹の会」と「巨人ミュージアム日原森林館」が共同で水源の森の調査活動を行なっています。4年間にわたって行なわれているこの調査では、現在までに幹周り3m以上の巨樹約900本が存在していることが判明し、国内で最も巨樹の多い地域となっています。「巨樹の会」のメンバーの方は、「今後、水源の森の番人として地道な調査活動や植林活動を行なうことで、生命にとって森がいかに大切なものかをアピールしていきたい」とおっしゃられています。 |