エコツアーで富士山を楽しむ そんなボランティア団体のひとつに「富士山クラブ」があります。美しい富士山を子供達に残していくために…をスローガンに、環境保護、保全を行っている特定非営利活動法人で、98年(平成10年)の発足時は200人ほどだった有志も今では個人・団体併せて1800人に上り、精力的に活動を続けています。
最近、静かなブームを巻き起こしている「エコツアー」も彼らの試みのひとつ。たくさんの人々に自然への理解と共生の意義を知ってもらうことを目的としています。カリキュラムは、自然散策をしながらゴミ拾いをする企画ツアーをはじめ、富士山の成り立ちや動植物などの面白い解説を受けながら自然の尊さを学ぶツアーなど。4月〜5月にかけては1万5千人もの修学旅行生が参加したほどの人気ぶり。そこで!どんな話が聞けるのか、早速参加して参りました。
6月16日(金)晴天 日頃の行いが良かったのか、はたまたイヤガラセか…見事なまでの梅雨の晴れ間!
名古屋市立あずま中学校の修学旅行に同行させて頂き、富士山麓最大の溶岩洞窟「西湖蝙蝠穴」〜「青木ヶ原樹海」散策へ出発。
「西湖蝙蝠穴」は総延長350メートル、ウサギコウモリ、キクガシラコウモリ、コキクガシラコウモリの3種の生息が確認されています。蝙蝠は一度怖い目にあったら忘れないと言われる哺乳動物(鳥だと思ってた人はいないでしょうね?)。かつては多数生息していたものの、心ない人間の行動により、残念ながら近年はかなり減少しているそうです。暗く天井が低い洞窟だったため、ヘルメットが必須アイテムのひとつだったのが印象的でした。
次は方位磁石が乱れ一度入ったら出られなくなると言われる青木ヶ原樹海へ。実はこの噂は本当の話。864年の噴火で形成された青木ヶ原樹海は溶岩に覆われており磁気を含んだ溶岩も沢山あるため、方位磁石が狂ってしまうそうです。また、地面の隆起は溶岩に含まれていたガスが吹き出したため生じたものです。
そういえば森と林の違いってご存知ですか?辞書によると樹木が密集しているのが森で、森より木がまばらなのが林といった風に区分されています。突き詰めて考えると、森は自然が作り出した形そのままで木々が密集しているから日光の取り合いをし、結果 、木の高さや幹の太さが不揃いになる。という観点からすれば、木の高さや幹の太さもほぼ揃っている林は、いわば人口の森、伐採の後などに人の手によって植えられたものと考えられます。木の高さや幹の太さを見れば、森と林を区別できそうですね。
これらの話はガイドして下さった小野さんの受け売り。小野さんは子供の頃から動植物に関心があり成長とともに自然への親しみを深めていきました。進学のため上京していた小野さんが地元へ戻ってみると富士山の自然はかなり破壊されており、その変貌に愕然としたそうです。
歴史、動植物、自然など富士山について造詣の深い小野さんの話は分かりやすく愉快で、ツアーに参加した生徒さん達も夢中になって聞き入るほど。あっという間に時が経っていきました。
富士山の魅力
古くから人々を魅了してやまない美しい自然の集大成「富士山」。その魅力は神々しい景観とともに、壮大な自然にあるといっても過言ではないでしょう。
富士山には特別天然記念物のニホンカモシカをはじめ、クマやテン、リスにキツネなど数多くの動物が生息しており、野鳥については日本全国で確認されている450種のうち185種の生息が確認されています。他にも、家庭で飼われていた鳥が野生化して住み着いていたりと、ひと味違うバードウォッチングが楽しめそうです。そういえば日本最初の野鳥観察会が行われたのも富士山だったとか。
また、九州から北海道までの植物を一堂に会して見られるのが富士山の魅力のひとつ。山頂に近付くにつれ気温が下がっていくので、低地域には九州など温かい所に生息する植物、標高が高くなるに従って生態系も北上していきます。富士山は氷河期以降にも噴火を繰り返していたため、高山のわりに植物の種類が少ないと言われています。それでも被子植物が約1200種、シダ類が約100種類もあり、ブナ、ミズナラやカエデなどの樹木に恵まれています。標高1600m付近までの低山帯によく見られる木々の多くは、実は植林の成果なんですよ。
また、4月下旬から5月上旬に見頃となる吉田口登山道の約3万3千平方mに渡るレンゲツツジとフジザクラの群落は天然記念物に指定されています。その他にも天然記念物は数多く、吉田胎内樹型や白糸の滝に音止めの滝、精進の大杉、富岳風穴など、時間と自然が創りだした芸術品が揃っています。
果てしない時間をかけて私達の先祖が残してくれた富士山の美しさと歴史をそのままに、私達も次の世代へと引き継いでいきたいものです。今回、小野さんをはじめ富士山クラブの方々にお話を伺い、富士山を、自然をよく知ることが環境保護につながっていくのだと強く実感しました。確かに、私達は家など、よく知り、大切にしている場所では美化に気を配っていますよね。
日本人に郷愁や気高さ、そして安らぎを与えてくれるかけがえのない富士山は、世界に誇れる日本の象徴でもあるのです。
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