芦安ファンクラブの保護活動
北岳があり南アルプスの玄関口ともいえる山梨県芦安村(2003年(平成15年)4月より南アルプス市)で、山好きな有志が集まって1999年(平成11年)2月に発足したNPO法人芦安ファンクラブは、芦安村の活性化と中長期展望を含めた南アルプス北部の自然環境の保護と活用、村の伝統、山岳文化等の継承等を活動指針としたボランティア団体です。
北岳は高山植物の宝庫といわれ、芦安ファンクラブは特に高山植物の保護に力を入れています。高山植物は踏み込みによる圧迫要因で、大きなダメージを受けます。大方の登山者は「踏み込みはたいしたことはない」と思っています。けれども山は、踏み込みで傾斜面が侵食され、植物は生育できなくなります。
かつての登山者は山岳会に所属し、先輩から後輩に自然保護・安全登山・山男、山女の心意気の指導が徹底されていました。しかし、最近の登山者は知識がなくロープで囲わなければ踏み込んではならない場所さえわかりません。環境保護の面からも、知っていれば回避できることがたくさんあります。
芦安ファンクラブでは登山基地「芦安」としての立場から安全登山、 自然保護の啓蒙活動の一環として、初心者・中級者を対象にした「芦安登山教室」を年に2回開催しています。また事務局の清水さんは地元の中学校行事としての登山にも関わり自然保護や安全登山の知識を将来の南アルプスを託す子供たちにレクチャーしています。
また、定例会での会員の意見を集約した要項を芦安村に提言したり、村内観光関係者を中心とした各所旧道復旧整備作業や歴史、山岳文化の発掘にも参加し、登山者に便利な1/25000の村独自の地形図の起案もしました。
知ることは守ることの第一歩
芦安村には、もうひとつ南アルプス倶楽部という13年の歴史を持つ、自然保護のボランティア団体があります。
山の中から文化を発信しようとコンサートの開催と山のトイレ問題に取り組んでいましたが、トイレについては一応の成果が出たことで、今後は発展的に会を解散し、環境問題については芦安ファンクラブの活動に一本化する方向だそうです。
同会の塩沢さんは、「知ることが守ることの第一歩」だと語ってくれました。そのために、環境教育に力を入れたいとも。教育といっても教える側と教わる側というものではありません。 自然の中ではみな平等です。大人と子供が交流をもって、気づくこと知らせていくこと、自然環境を考えることが大切なのです。しかし、少なくとも一回も自然に触れていない人に比べ、何回も自然に触れている人は詳しいはずです。インタープリターを養成していくこと、また、村の人が食べていけることも自然保護につながるともおっしゃっていました。
芦安村には2003年(平成15年)4月に、南アルプスの山岳の歴史や動植物の資料を展示し、自然環境保護活動を中心とした教育普及の場として、またリアルタイムで山の様子が大型スリーンクに映し出す設備を備えた「芦安山岳文化館」がオープンします。
人の心に呼びかける
国立公園の抱える問題は、ゴミ、トイレ、踏み込みによる土砂の流出、盗掘などどこも同じです。その解決策は、とどのつまりは人の良心に訴えるしかありません。
保護する前に自然を知り、どうやって守るのかを考え、実践することが必要です。ゴミの持ち帰りは、かなり根付いてきたものの、根気よくやらなければなりません。一人ひとりの心がけが環境保護につながることを理解して、行動していきましょう。
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「南アルプス 歩きながら覚える北岳の高山植物」(2002 山梨日日新聞社出版部)
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「南アルプス 歩きながら覚える夜叉神峠 鳳凰三山の高山植物」(2002 山梨日日新聞社出版部)
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「日本百名山 登山ガイド下」(2002 山と渓谷社)
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