三陸復興国立公園は、東日本大震災からの復興に貢献するために、陸中海岸国立公園の区域に、青森県八戸市の蕪島(かぶしま)・種差(たねさし)海岸と階上(はしかみ)町の階上岳・階上海岸の区域を合わせ、2013年(平成25年)5月に創設された国立公園です。
「三陸復興国立公園」については、環境省のホームページをご覧ください。
【以下の記事は、2002年当時の陸中海岸国立公園についての記事です。】
陸中海岸国立公園は、わが国を代表するリアス式海岸がその特徴で、岩手県久慈市から宮城県気仙沼市まで南北180km、面積12,212ha(長崎県壹岐より一回り小さい)の太平洋に面した海岸公園です。1955年(昭和30年)に国立公園に指定されました。 屈曲した海岸線がみられるスペイン北西部のガリシア地方で湾を「リア」と呼ぶことから、その形状が似ている海岸を総称してリアス式海岸といいます。 沿岸一帯はわが国有数の漁場であり、久慈(くじ)・宮古(みやこ)・釜石(かまいし)・大船渡(おおふなと)をはじめ、多数の漁港が公園内にあります。
公園のほぼ真中に位置する宮古湾付近を境に、南部は沈水海岸、北部は隆起海岸と南北の海岸線は全く違う様相をしていますが、どちらも激しく外洋に浸食されたために、高さ50m〜200mにも達する海食崖と複雑に連なる岩礁、無数の海食洞、海鳥類が営巣する海食棚など、『海のアルプス』と呼ばれるにふさわしい豪壮な景観をみせています。
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指定日 |
:1955年(昭和30年)5月2日 |
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面積 |
:14,635ha (2014年3月31日現在) |
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年間利用者数 |
:143万人(2012年度) |
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関係都道府県 |
:青森、岩手、宮城 |
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掲載記事は2002年(平成14年)12月取材当時のものです |
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ふたつの豪壮な海岸景観
北部の典型的な隆起海岸は、比較的出入りの少ない単純な海岸線に、高さ200mもの断崖が豪壮に続きます。一方、断崖の上はというと、断崖の険しさからは想像できないような平らな段丘面となっており、山間の広々とした牧歌的な情景を醸しだしています。 北の代表的景観は、田野畑村(たのはたむら)の北山崎(きたやまざき)や鵜ノ巣断崖(うのすだんがい)などで、その景観は迫力があります。
北山崎は、200mの断崖が約8kmにもわたって屏風のように続く豪壮な景観が特徴です。岬先端の展望台から波打際まで753段の遊歩道が続き、下から断崖を見上げることもできます。鵜ノ巣断崖の中腹にはウミウ(海鵜)の巣があります。一帯の美しいアカマツ林は、30年近く前に観光客のタバコが原因と思われる火事にあったそうですが、現在は復元しています。南部は、わが国における代表的な沈水海岸で、鋸(のこぎり)の歯のように半島と湾入部が連続する複雑な地形が、自然の穏やかな景観を形作っています。南は、大船渡(おおふなと)の碁石海岸(ごいしかいがん)や唐桑町(からくわちょう)の巨釜半造(おおがまはんぞう)などが代表的な景勝地です。 碁石海岸は、末崎半島(まっさきはんとう)の東南の約4kmの海岸線で、断崖、洞門、水道などの変化に富む景勝地です。南端の碁石浜は、名前の由来である碁石のような黒色頁岩(こくしょくけつがん)という堆積岩が混じった砂利浜です。
前田浜の湾入部を境に北を巨釜、南を半造と呼ぶ巨釜半造は、中生代の石灰岩が海に侵食されてできた海食地形で、特徴ある奇岩怪石の景観を見せています。
シンボリックな宮古の景観
陸中海岸の中間に位置する宮古の景勝地、浄土ヶ浜(じょうどがはま)は、鋭く尖った白い石英粗面岩(せきえいそめんがん)という火成岩でできた半島が恐竜の歯のように林立し、青い海をバックに岩肌の白と赤松の緑がみごとに調和した陸中海岸のシンボリックな美しい景観を見せています。白く見える浜は、砂ではなくお餅のような厚みがある白い石英粗面岩でできています。
浄土ヶ浜の名は、今から約300年前に霊鏡和尚がこの地を見て「さながら極楽浄土のごとし」と感嘆したことからついたといわれています。「日本の水浴場88選」に選定された水のきれいな浜は、夏には岩手県内有数の海水浴場として賑わいます。 海が大荒れとなった時、大きく隆起した波が音をたてて岩に打ち付けると、海水が20〜30mもの高さで吹き上げる姉ヶ崎近くの潮吹を浜からも見ることができます。
国の天然記念物の潮吹穴は、長さ2.5m、幅30cmの岩の隙間から海水に通じる穴で、波で押し出された海水を噴水のように吹き上げます。目の当たりにする潮吹きは圧巻で、一度の大波で3度、4度と形を変え音をたてて豪快に吹き上げる樣は、正に生きものといった感じがして見飽きることがありません。
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