近代アルピニズムの幕開け 日本アルプスの名を世界に広めたのはイギリス人宣教師のウォルター・ウェストンでした。近代登山の父と呼ばれており、まだ登山が普及していない時代に、狩猟や信仰登山、研究などの目的ではなく、山に登ることを楽しむスポーツ登山「近代アルピニズム」を日本に開いた先駆者の一人です。日本の自然風土を愛したウェストンは彼の案内人を務めた上条嘉門次と親交を深め、杣人(そまびと=キコリ)で猟師であった嘉門次は登山案内人として名が知られることになりました。
北アルプスの名が世に知られると同時に訪れる人も徐々に増え始め、より高く困難な登山を目指しそこに喜びを感じる山男たちが集まる場所となりました。なかでも槍ヶ岳は、ウェストンが「日本のマッターホルン」と称賛したほどで数々の登山者が憧れ登ってきました。
こうしてかつては情熱を持った山男たちが多く挑んだ自然環境の厳しい北アルプスの登山も、施設が整い比較的身近なものと考えられるようになりました。登山者の熟年度や年齢の幅も広がり、近年の入山者の事故は以前に比べると、滑落などの大きいものは減り捻挫などの小さいものは増える傾向にあるようです。多くの人が訪れ自然の美しさに触れるのは良いことですが、山へ入る際には天候や自らの健康状態を把握し、体力にあったコース選びをしましょう。自然の世界は美しいだけでなく厳しさもあわせもっており、時には私たちの命を奪いかねません。自然のなかに足を踏み入れるからにはそのルールを守り、楽しい旅となるよう心がけたいものです。 |