神様の山—大山から蒜山
大山(1,709m)は、日本百名山にも数えられる独立峰で、西側から見ると富士山に似た優美な姿をしているために伯耆富士(ほうきふじ)と呼ばれます。しかし、日本海から吹き付ける季節風の影響を受け、標高は高くないものの東側は山頂部に続く北壁、南壁の急崖地が荒々しい山岳景観を呈しています。
山頂からの眺めはすばらしく、晴れた日には弓ヶ浜から島根半島、隠岐島、中国山地を一望に収めることができます。また、大山は古くより神様が宿る山として崇められ、信仰の歴史ある山としても有名です。
裾野には西日本最大のブナ林が、8合目付近には国の特別天然記念物ダイセンキャラボクの群落が広がっています。また、ダイセンクワガタ、ダイセンスゲなどダイセンを冠した植物も多く見られます。
蒜山は、上・中・下蒜山のいわゆる蒜山三座とその裾野の蒜山高原を含む一帯で、牛が草をはむのどかな風景が広がります。稜線の縦走路にそってイワカガミ、シコクフウロなどの高山植物が生育し、高原では、ススキ、マツムシソウ、リンドウ、ワレモコウなどの秋の草花がみられます。
大山の一木一石運動
大山は登山者が多く、昭和40年代から50年代には、山頂の高山植物群落が踏み荒らされ、ほとんどなくなってしまいました。崩壊しやすい地質は、裸地のいたる所に深い侵食溝を作り、表面の土砂を急速に流出させました。表土が薄くなれば、植物は育ちません。
この大山の危機を救おうと地元の有志が集まって、1985年(昭和60年)「大山の頂上を保護する会」が結成され、「一木一石(いちぼくいっせき)運動」が始まりました。これは、登山者一人一人が侵食溝を埋め戻すための石を山頂まで運ぶというもので、自然保全のボランティア活動の草分けとなりました。
植栽は試行錯誤の結果、ダイセンキャラボクやヤマヤナギを、霜柱で根が切れないように薦(こも)の上に穴をあけ、そこから植え付ける方法が編み出されました。根付くまでには1〜2年かかります。こうした地道な努力により、植生はかなり回復しましたが、完全回復を目指し、今も活動が続けられています。
しかし、新たに一日4,000人が数珠繋ぎで登ってくる過剰利用の問題や登山客のマナーの低下から起こる様々な問題に直面しています。
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