豊かな降水量に恵まれた植物の宝庫 直径30キロメートルに満たない屋久島には、南北2,000キロメートルにも及ぶ日本列島の自然がぎっしりと詰め込まれています。また、洋上に長い間孤立した島であったため、屋久島特有の植物を分化させてきました。屋久島には、47の固有種、31の固有亜種を含む1,500種を超える植物種が自生しています。
屋久島の植生の特徴は、ヤクシマシャクナゲやヤクシマオナガカエデ等、屋久島固有の植物の多さとともに、亜熱帯から亜寒帯までの顕著な垂直分布が観察できることにあります。島の沿岸部では、ガジュマルやクワズイモ、メヒルギのマングローブ原生林など亜熱帯的な植物が群生し、山地にかかると全国的にも非常に貴重とされる原生的な照葉樹林が広がります。そして、標高600〜700メートル以上では、ヤクスギと呼ばれる樹齢1000年以上のスギの巨樹や、モミやツガ、また「絞め殺し屋」との異名を持つヤマグルマなどが巨木林を形成し、山頂部ではヤクシマダケの低草原が山肌を覆っています。
このような自然風景の美しさや景観の多様性ゆえに、屋久島地域は、ミヤマキリシマの大群落で有名な霧島地域、また現在も活発に爆発と降灰を繰り返す桜島を含む錦江湾地域とともに、1964年(昭和39年)に 霧島屋久国立公園に指定され2012年(平成24年)に分割されて屋久島国立公園となりました。また、標高による連続植生や植生遷移、そしてヤクスギなどの高齢樹を含む優れた生態系が成立していること等、その学術的価値が国際的に評価され、1993年(平成5年)12月日本で初めての「世界遺産条約」の登録地となりました。
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