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自然といえばみどりと生きもの。より多くのみどりに、より多くの生きものが集う風景を、私たちは「豊かな自然」と呼ぶ。
「しかしそれは、見かけの豊かさでしかありません」——NPO法人生態工房の佐藤方博さんは、数や規模も大切だが、もっと大切なのは自然の中身だという。
「残念ながら、身近にあるみどりの多くは、ただ草木が繁っていて、緑色に見えるだけの場所にすぎないのです。本来あるべき自然の姿とはいえません。生きものも、ただいればいいというわけじゃないんです」
佐藤さんたちが1998年から管理運営を手がけている東京・練馬の光が丘公園バードサンクチュアリも、かつてはそんな“緑色に見えるだけの場所”だった。
広さ2.4ha。公園の造成に伴い25年前に整備されたこの保護区は、上空から見ると、まるで高層ビルの海に浮かぶ緑の島のよう。植栽されたみどりとはいえ、都心では身近に自然とふれあえる貴重な環境といっていい。
しかし同法人が活動を始めた頃は、森も、水辺も外来生物であふれていたという。夏から秋になると、草地は一面、セイタカアワダチソウの黄色だらけ。池には、不法放流されたオオクチバスやブルーギルなどが完全に定着し、在来種を脅かしていた。在来魚が減るとサギなどの水鳥も減る。バスやギルは代わりの餌にならないのだ。
さらには捨てペットまで。多いときには、ニワトリが20羽ぐらいいた。夏の縁日などでヒヨコを買った人が、飼いきれなくなって捨てるため、増えるのはきまって秋口だった。ミシシッピアカミミガメも、ざっと見渡せる範囲だけで最大40匹以上はいたという。
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水生植物を刈り取って水辺の景観を保つ
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こうした外来生物の駆除が、佐藤さんたちの活動の大きな柱のひとつである。
「私たちは、地域に固有の生物相や景観こそが豊かな自然、本来あるべき自然だと考えています。このサンクチュアリが目指すのは、1960年代の武蔵野台地の生物相。それを復元するためには、まず外来種にすべて退場してもらわなくてはいけません」
網を池の十数か所にしかけて一つずつ引き上げたり、外来植物を手で一本ずつ抜き取ったり、駆除活動は地道な作業の繰り返しだ。
当初は数の多さに手を焼いたが、セブン‐イレブンみどりの基金からの助成も得られ、この10年間で成果は着実に上がったという。01年には地域の住民と協力して、池の「かいぼり」(排水して魚などを捕ること)を実施。バスやソウギョなど、“大物”の完全駆除に成功した。他の外来魚や外来ガメも10年以内には根絶できる、と佐藤さんは見ている。
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