|
|
「越冬中のマガンは日中、田んぼで落ちモミや草を食べたり、湿地で休憩したりします。夜は湿地にねぐらをとります。冬のあいだ水を張った田んぼがあれば、鳥たちはそこを湿地のかわりに使うことができるわけです」
蕪栗沼でのふゆみずたんぼの取り組みは、2003年には20ha以上に拡大され、一帯には沼と乾田とふゆみずたんぼがモザイク状に広がっていった。05年、蕪栗沼・周辺水田は、ラムサール条約の登録湿地となる。水田という名前のついた登録は初めてだった。
|
冬のふゆみずたんぼで採餌するハクチョウ。夏は稲のあいだでサギなどが採餌する
|
|
「ヨーロッパでは、農業は生物多様性を阻害するものとされています。連作障害で畑の土が痩せると、別な場所に移る、という歴史を繰り返してきました。いっぽう、アジアの田んぼは生物の宝庫です。連作障害がなく、同じ場所で何千年でも稲を作りつづけることができます。水があることで微生物が活性し、土を豊かにするからです。地球がひとつの生命体だとすれば、田んぼはその細胞だといえるかもしれません」
|
|
02年に、岩渕さんは学芸員から高校の理科教師に転じていた。しかし、「教師には代わりがいるが、ふゆみずたんぼを広める仕事ができる人は少ない」と覚悟を決め、学校を辞めた。「NPO法人田んぼ」を立ち上げたのは05年、49歳のときだった。
「団体の名称を『田んぼ』にしたのは、やまとことばには文化が込められていると思ったからです。『ふゆみずたんぼ』とひらがなを使ったのも、『冬期湛水』という専門用語を使いたくなかったからでした」
|
|
|