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ニッポンバラタナゴは、ドブガイという二枚貝に卵を産みつける。卵はドブガイのエラの中で成長し、体長7mmぐらいになったときに出水管から泳ぎ出てくる。いっぽう、ドブガイの幼生はヨシノボリなどの魚のヒレに寄生する。つまり、ニッポンバラタナゴは、ドブガイとヨシノボリがいる環境でなければ繁殖できないのだ。この地方では、農閑期にため池の底樋を抜いてヘドロを流す、いわゆる池干しを「ドビ(土樋)流し」と呼ぶ。明治時代につくられた樋が土管でできていたからだ。ため池の水を浄化すると同時に、ヘドロのほうは肥料として田畑に入れる、合理的な仕組みだ。しかし、ドビ流しが定期的におこなわれていたのは、戦後10年ぐらいまでのことで、米農家が減るにつれ、ため池は放置されてヘドロがたまり、水質は悪化の一途をたどった。
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眼下に大阪の町を望む高安地区。花卉(かき)と造園が地場産業だ
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「自然に任せないで、ニッポンバラタナゴを保護する池が必要だ、ということになり、研究会を立ち上げた翌99年に、地主さんの協力を得て最初の保護池をつくりました。大雨のときに土砂で埋もれたままになっていたため池を復元したのです。太陽光発電による水の浄化装置を取り付けましたが、2年目にはアオコが発生して、ドブガイが繁殖しなくなった。そこで、改修工事をして樋をつくることにした。その際、干してあったヘドロを入れたところ、貝が爆発的に繁殖したのです。結局、ドビ流しの効果は水質の浄化だけではなく、ヘドロを天日干しすることによって、稚貝の食べる珪藻類が発生しやすくなる、ということがわかったのです。山土を入れるのも同じ効果があります」
2004年、研究会はNPO法人の認証を受ける。長年の試行錯誤によって、ため池におけるタナゴ類の繁殖方法はほぼ確立することができた。これまでのノウハウを生かして、学校ビオトープづくりにも積極的にかかわっている。2006年からは、ため池の水位を安定させるべく、保護池に流れ込む小川の上流にある森林で、下草を刈ったり、土留めをつくったりする作業にも乗り出した。 |
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