古川さんのもともとの専門は土木工学だ。子供のころは船長になりたかったと言う。
「父が船のコーディネートを仕事にしていたので、家によく船長が訪ねてきてくれたんです。かっこよくて憧れました。それで将来は大型客船に乗って働きたいと思ったのですが、いまは日本人が船長になるケースは少なく、進路を変えることにしました。船じゃなくてもできるだけ大きなものを手がける仕事をしたいと思ったときに行き着いたのが土木関係だったんです」
そこで大学では土木工学を、大学院では建設工学を修め、港を管理する運輸省(当時)に就職。運輸省が港や空港を新設する際に環境保全に取り組むようになっていた時期だったため、干潟や藻場を整備することで海洋環境を保全する研究を進めることになった。
「キャリアの途中でオーストラリアの研究所に留学することになったんです。1994年のことでした。当時、私は海藻やヨシ原を使って海水を浄化する研究を進めていましたが、オーストラリアでは生態系全体を俯瞰して環境保全を考えていました」
ここで古川さんは転機を迎えることになる。それまでは物理的なアプローチで環境保全を考えていたが、研究所で多くの生物学者に囲まれる中で生物学に目が向くようになっていったのだ。 「オーストラリアの研究所ではグレートバリアリーフの環境を守るために、サンゴ礁やマングローブをどのように守っていくのかといった研究に取り組む人たちが大勢いました。これまでの私のアプローチにはあまりなかった発想です」
|