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太陽が山の端にかかりつつある夕暮れどき、海岸を楽しげに散歩する人々の姿が見えた。ここは鹿児島県姶(あい)良(ら)市の重富海岸。ある人は犬を連れ、ある人は夫婦連れ立って、桜島をバックに心地よさげに歩いている。
「今ではこうして海岸を散歩する人も増えましたが、私たちが干潟のクリーンアップを始めた8年前は、人が寄りつかない場所でした。拾っても拾ってもごみがあって、毎日45リットルのごみ袋2つが一杯になるほど。海水浴に遊びに来ても、誰も水着にならずに帰ってしまうような有様だったんです」
そう語るのは、くすの木自然館の代表を務める立山芳輝さん。いつも穏やかな笑顔を絶やさない人である。
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笑顔と首にかけた鶏笛が立山さんのトレードマーク
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「干潟の小さな博物館」(上)には、カニの目になって干潟をのぞけるジオラマ(下)もある
干潟のクリーンアップは、小学生からお年寄り、障害者の方も参加して、毎日行われる。小学生は、立山さんが環境学習などのプログラムで訪れた小学校の子どもたち。立山さんを慕って、毎日のように参加してくれる。ごみを拾った後は、ごみの種類の分析や干潟の生態系の調査も欠かさない。
「ごみの傾向から対策を立てるんです。弁当の空容器が多ければ、昼食どきに清掃する姿を遠巻きにアピールします。そうしたら、面と向かって注意しなくても、ごみを持ち帰ってくれるようになりました」
ごみが減った海岸には人が集まるようになり、昨年は初めて海水浴で水着姿の人を見ることもできた。現在は、捨てられるごみの量は当初の5分の1以下だ。
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