また、山で増えすぎた鹿が木の皮を食べてしまうのを防ぐため、鹿追い犬の育成による生態系バランスの健全化にも挑戦している。訓練した犬に追わせることで鹿にプレッシャーをかけ、過剰な繁殖を防ごうというのだ。美杉町第1号の鹿追い犬「キュー太」は、街中でみかける犬とは明らかに異なるシルエットを持ち、猛スピードで山を駆ける。鹿の食害に悩む地方は多いが、鹿追い犬はまだ珍しい取り組みだ。
林業は、数年で報われる事業ではない。ときには世代を超えた仕事となる。もりずむは「いまさえよければよい」という考えの対極にある事業に向き合っている。藤﨑さんは木材は工業製品ではないと話す。
「林業は、『木』という生き物を扱う産業です。だから木一本一本の価値をきちんと見極めて販売したい。そうすれば山林所有者の多くが山で稼ぐことができ、管理・健全化に力を入れられる。それはやがて森林の健全化につながっていきます」
長い森の歴史のなかで、もりずむの活動は始まったばかりだ。 |