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2013年6月に築地場外市場に開店した「Re-Fish食堂」。 日本全国の魚と調理法を伝える情報発信の場だ
境港時代、イベントでベニズワイガニの魅力を伝える上田さんと仲間たち。現在の活動の原点がここにある
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がんばって辛抱してくれる現場の心が折れないように何をすべきか。考えた末、上田さんは毎月、大量のカニを買い込んでは大鍋に湯を沸かし、自宅の庭先でゆで始めた。ベニズワイガニはとかく高級品のズワイガニと比較され、鮮度落ちが早く、大半が加工品になってしまううえ、新鮮なものでもゆでるか味噌汁ぐらいしか使い途がないと、二級品扱いされてきた。だが、もっと食材としての可能性が広がれば、多少高くても売れるし、それが漁業者の励みにもつながると考えたからだ。
その結果、深海に住むベニズワイガニはミソ部分に脂分が多いため、ゆでても固まりにくく、ミソが固まるまでゆでると、身がパサパサになることがわかった。そこで、ミソと胴体、脚は別々にゆで、かつ解体してゆでることで旨みが逃げぬよう、最適な塩分濃度とゆで時間を追究。加えて、素材の味を損なわないレシピも20種類ほど開発した。
型破りな官僚の並々ならぬ孤軍奮闘ぶりを知り、まず2人のカニカゴ漁の船主が実験に協力してくれるようになった。年を追うごとに協力者の輪は広がり、鮮魚店、仲買、加工業者、飲食店、漁協など、皆が力を合わせ、試食会やイベントの開催も実現した。それを地元のケーブルテレビが取り上げ、しだいに全国ネットでも紹介されるに至ったのだ。
「資源管理とは漁師だけではなく地域全体の問題で、末端の消費者までつながっているんです。僕がいま全国展開している活動は、境港でやったことの拡大版のようなものです」 |
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