「この辺は江戸時代は三枚洲と呼ばれ、豊かな漁場でした。いま水鳥の宝庫になっているのは、砂地にゴカイや二枚貝、エビやカニがいっぱいいるから。江戸前の漁場に近づきつつあるんです。こんな都心で多種多様な野鳥が見られ、干潟が身近に感じられる場所は世界的にも珍しい」
西なぎさで漂着ごみのクリーンアップ活動に携わって今年で10年目になる任意団体「DEXTE-K(ディクテック)」の橋爪慶介さんは、そう言って顔をほころばせる。
しかし、次に西なぎさの隅に設けた漂着ごみの集積場に案内されると、干潟のもう一つの現実に直面する。眼前には大小さまざまなごみの山が広がっている。また、砂浜をよく見ると、色とりどりの微細なプラスチック片も目に付く。最近プラスチックのストローを廃止する企業が相次いだことでにわかに注目されているマイクロプラスチックだ。
「ここは首都圏に住む人たちが主に生活の中で出したごみが、川から海に流れて海岸に戻ってくる場所なんです」
3月から11月まで毎月の活動日には、参加者にまずこの公園の相反する二面性を伝えると橋爪さんは言う。
公園にほど近い区内に居を構える橋爪さんが活動を始めたきっかけは、ランニングの途中、公園主催のイベントの一環としておこなわれていた地引き網体験に遭遇したことだ。
「びっくりしたのは、網に鮎の稚魚がいっぱいかかっていたんです。こんな足元で命が生まれていたのかと感動し、何かしなきゃと思って一人で海岸のごみ拾いを始めました」
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