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シマフクロウの分布地域はロシア沿海地方、サハリン南部、国後島、北海道に限られる。体長は70〜80cmで、翼を広げると2mにも達する日本最大のフクロウだ。かつては北海道全域に棲息していたが、森の伐採などで棲息環境が悪化したため、現在では道東を中心に130羽程度にまで激減してしまった。93年には国内希少野生動植物種に指定されている。平均寿命が20〜30年といわれるシマフクロウは、その容貌から「森の哲学者」とも呼ばれ、アイヌ民族からはコタンコルカムイ(村の守り神)として崇められてきた。
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左:シマフクロウ・エイドの入会案内申込書、会員カードとシマフクロウの羽 下:シマフクロウの巣箱を手入れする菅野さんと直子夫人
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浜中町で任意団体「シマフクロウを増やす会」を発足させた菅野さんは、93年にシマフクロウ監視員の資格を取得し、96年には日露初のシマフクロウ共同調査のために、沿海州を訪れた。08年には、念願だったNPO「シマフクロウ・エイド」を設立した。エイドが主催する「シマフクロウ保護調査員養成セミナー」は、シマフクロウを守る「同志」を増やすのが目的だ。同志は地元から募るのが理想だと、菅野さんは考えている。
「浜中町に拠点を置くエイドが、地域ぐるみでシマフクロウを守っていくモデルケースになり、これが道内に広がっていくことを願っています。フィールドワークを中心としたこのセミナーは後継者づくりのための種まきなのです。この組織がシマフクロウという国の天然記念物が観察できる会だと思われても困りますし、生態調査の方法だけ盗まれて撮影などに悪用されるのも困ります。釧路管内のシマフクロウについては私が把握していますが、ほかの地域には、継続的に観察する人間がいない場所もあります。そういう土地に腰を落ち着けて、シマフクロウを守ってくれる人が欲しいのです」
絶滅の危機に瀕する「森の哲学者」にとって、菅野さんは何よりも心強い擁護者だ。
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