「大阪湾で活動を始めたのはおよそ15年前。大阪府が行政をあげて大阪湾の再生に乗り出した頃です。ヘドロだらけだった最悪の時期は脱していましたが、魚はまだ多くなかった」
行政がどんなに法を整備しても、地域住民の協力が得られなければ海の再生はありえない。岩井さんたちは市民団体に繰り返し再生活動の内容やその理由などを説明したが、当時は反応がいまひとつだった。
「環境について何の知識も持たない人に、いきなり専門的な話をしても伝わらないんですよね。これは伝え方を改めるべきだと思いました」
岩井さんは、大阪湾には栄養分が多すぎること、しかし海藻や魚を通して人間が摂取すれば再び海が生き返ることを伝えるべく、堺市浜寺の子供たちと昆布の養殖に挑戦した。堺市はおぼろ昆布を切り出すための刃物の生産で栄えた街で、古くから昆布と縁がある。
「一応昆布は育ったものの、海が温かいから異常に生育が早くペラッペラ。高級なものにはなりませんでした。しかし子供たちは海への関心を持ってくれたし、対話の手応えもありました」
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